030 ヤルヴェンパー迷宮7 迷宮踏破
いつもお読みくださり誠にありがとうございます。
16階層で拠点を作り、カイザー肉のステーキをニンニク風味で。
それと土鍋ご飯。
野菜サラダとデザートは苺だ。
苺を見たピルッカとエレオノーラは驚く。
1粒が金貨1枚もする高級果物が籠に山盛りで出てきたのだ。
「苺、だよな?」
「苺が山盛り?山盛りーっ!」
ピルッカとエレオノーラは驚きながら苺に手を出そうとする。
「苺は食後だよ。由香を見ろ、両手は膝の上だ……ろ?」
見ると由香は涎をテーブルの上に垂れ流しながらステーキを見つめていた。
話によると由香は階層主の間にいる間、食事らしい食事にはありつけなかったのだそうで、ニンニクの暴力的な香りが彼女の空腹感を刺激したのだ。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
カイザー肉の美味しさだけでなく、ニンニク風味がベストマッチで誰も話す事なく、食事の時間を終えた。
苺も美味しかったのだが、カイザー肉のステーキの美味しさに夢見心地が続き、そのままお風呂に入り、床についたのだった。
迷宮実習3日目。
いつもの如く、朝は自宅や王城の眷属や従属モンスターの食事を用意して、それからヤルヴェンパー迷宮16階層の拠点に戻り朝食の準備を行う。
今朝は16階層でゲットした伊勢海老の腹肉をバターと醤油、そして黒胡椒で味付けをしてこれをロールパンにレタスと挟んだ伊勢海老サンドにりんごジュースだ。
「……なんだか階層踏破よりもグルメ実習って感じだなぁ」
「ジュンイチ様、さんのお陰で食事に恵まれた実習ですよね」
ピルッカとエレオノーラは美味しそうに伊勢海老サンドを頬張っていた。
エルミももちろん、リスのように頬を膨らませながら美味しそうに食事を食べる。
「やっぱりジュンイチの作る食事は最高だよーっ」
伊勢海老も美味しいのだが、昨晩のカイザー肉に比べて3人とも饒舌になっていた。
由香は相変わらず無口で一心不乱に伊勢海老サンドを飲み込んでいた。
食後、16階層を踏破し、巨大蟹がメインに出てくる17階層、陸生鮫などが出てくる18階層、そして地龍がメインの19階層を踏破してこの迷宮の最深部の階層主の間を守るエルダードラゴンを斃しに向かう。
「なんだかあっという間に最後の階層主の間についたね」
エルミもこの迷宮実習の間、戦闘に慣れてきていた。
特に17階層からはエルミも積極的に戦闘に参加していた事もあり魔法の発動がより短時間で行えるようになった。
特に、神力鎧、神力剣を俺から渡された事も自信に繋がったようだ。
「よし。それでは階層主の間に入るとするか。エルミ、ピルッカ、エレオノーラそして由香は後方で俺の支援を。今回はドラゴンだから気を引き締めていくぞ!」
「「「「おーっ!」」」」
由香がこのパーティーに加入してから、少し返事に締まりがなくなったような気がするけど、今は目の前のエルダードラゴンに集中しなければ!
今までの3つの階層主の間の扉に比べて一際大きく、そして華美とも言えるほど壮麗な扉を開けるとそこは野球場が4つは作れるほどの広さのある空間が広がっていた。
天井は50メートルはあろうかという巨大な空間だ。
その部屋の中央に、エルダードラゴンが1体佇んでいた。
殺気も発せず、その巨大な体躯を小さく丸め、顔だけこちらに向けて面倒臭そうに向ける。
そして大きな口を開けて欠伸をして、
『小さき者よ。我は退屈だ。暇つぶしに付き合ってくれたら生きて返してあげるぞ?もしくはそのまま扉を閉めて立ち去れ』
100メートルは離れているというのに、はっきりとした口調で話しかけてきた。
由香は、自分自身の経験もあり、
「お兄ちゃん。ドラさんは多分、私と同じで迷宮によって閉じ込められているんですよ」
「そうか。それならドラさんも助けてあげた方が良いかな?」
「うん。助けてあげて!」
俺はエルダードラゴンの近くまでゆっくりと歩いていく。
そして、ドラゴンの側まで近づき話しかけてみる。
「もしかして、この部屋から出られないのか?」
『ん?お主は我の状況が分かるというのか?』
「ああ。そこにいるのは15階の階層主だったオーガカイザーだ。彼女も階層主の間に囚われていたんだ」
『お主は我をここから連れ出してくれるのか?』
「ちょっとだけ痛いが……大丈夫か?ちょっとだけ右手首を斬り落としたらすぐに再生するから」
『右手首を、か。もしそれが嘘ならブレスで消し飛ばすぞ?』
「ああ。それは信じてくれ」
俺はそういうとき神力剣でエルダードラゴンの右手首を切り落とし、すぐに治癒魔法をかけてドラゴンの右手首を再生する。
この瞬間、エルダードラゴンは階層主の間の拘束から解き放たれ、空腹を覚えた。
『お、お主は、何か食い物はないか?』
「あるぞ。口を開けてくれ」
俺はエルダードラゴンの大きな口の中に今朝作った伊勢海老サンドを100個ほど投げ入れた。
ドラゴンは「うまいうまい」と言いながら飲み込んでいったが、それでも足りないようなので、エアレー肉のステーキを100キロ、りんご100個の順で口の中に入れていくと、ようやく満足したようで、
『「従属化」もしくは「眷属化」できます。 眷属化/従属化』
と出てきたので、当然、「従属化」を選択した。
その上で、「これからお前の名前は「麻衣」とする」と命名を行った。
麻衣は従属化した際に、神力鎧を着て俺自身が強化されていたからなのか、種族がエルダードラゴンからエンシェントドラゴンに進化していた。
「……エンシェントドラゴン……」
俺も予想外の種族進化に驚きはしたが、それよりも人化した麻衣に驚く。
身長は170センチのJカップ、シルクブロンドヘアが腰まで伸び、スカンディナビア美人の風貌をしていた。
Jカップバストは曲線が上向きでその先には薄桃色の可愛い突起が付いている。
俺の目は全裸の麻衣に目が釘付けになったのだが、エルミたちが来る前に急いで服を準備して着せておかないと!
と言う事でチェックのワンピースに長い髪を纏めるためにカチューシャを渡す。
もちろん、下着も忘れずに、だよ。
「ご主人様……ニンゲンはこのようなものを身に付けるのか。ちょい面倒だわね」
そう呟くが、服を着てくれないと俺が鼻血を吹き出しそうなので着てもらう。
「麻衣は俺の事をお兄様、と呼んでくれ。敬語はいらない。気兼ねなく話せる家族のように話してくれ、いいな?」
「お兄様、分かったわ。こんな感じでいいのかしら?」
「ああ。これから宜しくな」
「お兄様のお陰で本当に久しぶりに階層主の間から出られるわ」
そう話していると入り口付近から4人が駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん、上手くいったようだね!」
「ん、お主がオーガカイザーか?」
「そうだよ。エルダードラゴンの……えっ、もしかしてエンシェントドラゴン?」
「そうよ。エンシェントドラゴンの麻衣よ。宜しくね」
麻衣の持つ独特の雰囲気に飲まれていた3人は自己紹介をするだけに留めて、俺はドロップ品を回収した。
やはりというか、由香の時と同じで、麻衣が斃されていなくてもきちんとドロップ品が用意されていた。
・魔石特大(上) × 1
・エルダードラゴンの鱗 × 50
・エルダードラゴンの逆鱗 × 1
・エルダードラゴンの牙 × 2
・エルダードラゴン肉 20キロ
・エルダードラゴンの肝 × 5キロ
「また肉をゲットだよ」
ドロップ品を回収し終えた頃に漸くエルミ、ピルッカそしてエレオノーラの3人は持ち直しており、麻衣と話していた。
「マイは男の姿にはなれないんですか?」
「私はメスだからね。人化したらもちろん女子の姿になるのよ」
「そうなんだね……」
背が高く、美人で、しかも凶悪なバストの持ち主である麻衣にエルミは危機感を持ったのだ。
そんなエルミの心情を慮り、
「お兄様の精を私も受け取りたいけど……私は眷属だからね。由香も同じく眷属だから、家族というより従者って感じなのよ」
由香は豊かな双丘でエルミを抱きしめる。
その谷間でエルミは暴れ、
「プハー……苦しいよマイ。ごめんね気を使わせて……」
「いいのよ、エルミ。これからは家族みたいなものなんだから」
2人はまたエルミが窒息するまで(?)抱き合う。
そして、最も重要な事が待っている。
それは迷宮核をどうするかだ。
俺と由香は4人を置いて迷宮核が置かれている部屋へと向かった。
そこには俺の身長の倍以上はある薄紫の光りを放っている巨大な迷宮核があった。
「この核を取ったら迷宮は消失するんだったっけ?」
「お兄様のお考えの通りよ。迷宮核は私が斃されているので、もう既にお兄様の支配下にあるけど、お兄様の選択肢は迷宮核を取り込んでその力を自分のものにするか、この迷宮の迷宮主になるかのどちらかよ」
「そうか……それなら迷宮主になろう。迷宮核を破壊したことにして5階層以降は封鎖。迷宮核への部屋は多重結界を張り、この部屋は俺の拠点にしてしまおうかな」
「どうせでしたら20階層全てをお兄様の拠点にされてみては如何ですか?」
「そうだな、そうしようか……今はこの迷宮は生徒だけで、6階層から先は人はいないから6階層への階段は完全封鎖。20階層への階段も完全封鎖し、この部屋は多重結界で覆う……と」
一応、迷宮核の欠片を拳大で採取する。
「お兄様、後は迷宮核を破壊したら6階層から先は埋まってしまった、と報告すれば良いでしょう」
「ありがとう、由香」
由香の頭を軽く撫でると、顔を真っ赤にして俯き、
「お、お兄様のお役に立てたならそれが一番です……」
可愛い由香の事を思わず抱きしめたくなったけど、それは我慢して4人の所へと戻り、それから5階層へと転移するのだった。
ハーレム?要員になりそうなのが2人追加になりましたが……
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