028 ヤルヴェンパー迷宮5 高級食材
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「エルミ、取り敢えず結界を張ってくれ」
「分かったわ、2人の事は任せて!」
「すまん、ジュンイチ、エルミ」
「すみません……」
部屋に入るとエルミは結界を張ってオーク襲撃に備える。
その結界に俺は結界を重ね掛けしてから、初っ端から「雷雨を放つ。
バリバリバリバリ……
大気を揺るがし、耳を劈く雷鳴が階層主の間に鳴り響き、大量の雷がオークたちの上に降り注ぐ。
プレートアーマーなぞ身に付けていれば、それは雷属性に弱いと言っているようなものだ。
そこには真っ黒焦げになったハイオークが地面に伏していた。
だが、キングとジェネラルは剣を地面に突き刺し、それを避雷針がわりに使っていたのだ。
若干、体毛が焦げているようだが、ほぼノーダメージのジェネラルは咆哮をあげて俺に向かってきた。
「速度、威力付与!」
俺はそう叫ぶと短弓から続け様に矢を放つ。
だが、矢は奴らの持つ剣に打ち払われる。
「雷槍っ!」
俺は彼らに再度、魔法を放つ。
それと同時に剣を持ち、彼らを討って出る事にした。
俺の頭上には雷槍を数十待機させながら、隙を突いて雷槍を撃ち込みながら剣撃を見舞う。
ジェネラルはその槍を打ち払い、剣を受け、俺の攻撃をいなしていく。
2体1だからこそ可能なのだが流石に雷を受け続けていく事で彼らの剣やアーマーは脆くなっていき、
「やあっ!」
俺の剣を受けた際にジェネラルの剣は折れ、プレートごと俺に袈裟斬りにされてしまう。
「プギャァッ!」
ジェネラルの1体は断末魔の叫びを上げ、そのまま地面に崩れていく。
もう1体には雷槍を連射し力押しだ。
しかし、このジェネラルの装備も限界がきており、最後は複数の雷槍に串刺しになり絶命する。
最後はキング1体。
キングは雄叫びを上げる事なく、剣を構えた。
俺も同様に剣を構える。
キングの持つ剣はパーサーカーが手にするような大剣。
長いだけでなく、剣自体が厚みがあり、かなりの重量を持った剣だ。
俺が持つブロードソードとは質量が全く違い、素材としては俺の剣はミスリル製ではあるが、あの大剣をまともに受けたら例えミスリルでも無事では済まないだろう。
次の瞬間、キングは俺との間合いを一気に詰めて剣を振り下ろした。
「縮地」を使ったのだろう、大剣の間合いの3倍はあった距離が一瞬でキングの間合いとなる。
「うぉっ、疾っ!」
俺はその剣を皮1枚でどうにか躱し、振り下ろした瞬間にできる隙を突いてキングの懐に……
だが、剣の返しが疾く、それを躱すので精一杯だった。
俺は一度距離を取ろうとするがキングは続け様に剣を俺に向けていく。
「結界っ!」
少しの足止めさえできれば良いと思い、キングに結界を張り動きを一瞬、止める事に成功する。
次の瞬間、結界を重ね掛けを行い、その結果以内に上級魔法を発動させる。
「火焔爆裂っ!」
結界内は数千度と言う火炎地獄となりキングの身体を焼き尽くす。
そして、焔が消えた時にはキングのドロップ品がそこにあるだけだった。
今回のオークキングからのドロップ品は、
・オーク肉(特上) 2キロ
・魔石中(特上) × 1
・オークキングの牙
オークジェネラルからは、
・オーク肉(上) 2キロ × 2
・魔石中(上) × 2
ハイオークからは
・オーク肉 1キロ × 5
・魔石中 × 5
きっとオークロードがいたらオーク肉(特級)とかになるのだろう。
そう思いながら俺はドロップ品を回収し、複製も行なう。
「エルミ、オーク肉の特上が手に入ったよ」
「オーク肉の……特上?」
「ああ、特上」
ぎゅるるるるるる……
「特上」と聞いた瞬間、エルミの腸が盛大に鳴った。
お腹を押さえたエルミは顔を真っ赤にして、
「だって、そろそろお腹が減る時間だよね?」
「まだ、晩ご飯には早い時間だよ。あと3階層踏破したら食事にしようか?」
ピルッカとエレオノーラも流石にこの時間になると体力も回復してきて、13階層まではどうにかいけそうだった。
11階層はオーガが出てくる階層だ。
「この迷宮、階層が20程度しかないのに随分と強力なモンスターが出てくるよね」
エルミの言葉に他の2人も頷く。
5階層の階層主の間にいたゴールデンオーブスパイダーでさえ上級冒険者でも危ういだろう。
そして迷宮としては中層階とも言える11階層でオーガだ。
と言う事は13階層の階層主の間はオーガキングがいる可能性が高い。
オーガですら通常の冒険者では厳しくなる。
だからこそこの迷宮は12階層の踏破までしかなされていないのだろう。
俺はそう思いながら剣から短弓に装備し直す。
「さあ、注意して先に進もうか」
俺は矢に「速度×2」「威力」「雷撃」を付与した矢を入れてある矢筒を背負い全マップ探査を行う。
これは森の中にいたオーガと対峙した際に付与した内容だ。
「すごいな。この階層、オーガの巣窟だ……」
マップ上にはオーガの存在を示す赤点で埋め尽くされ、200近いオーガが徘徊しているのだ。
正直、12階層まで進んだ冒険者はどんなパーティーだったのか知りたくなる。
今回は安全を考えて全マップ探査を常時展開して、即時に短弓でオーガを倒していくのを12階層への階段まで最短距離で行う。
ドロップ品は
・魔石中 × 1
・オーガ肉 100グラム
これがオーガ1頭あたりのドロップ量だ。
12階層はハイオーガ。
オーガ肉(上)をドロップし、これも同様に進み、13階層。
ここは予想に反してジェネラルしか出てこなかった。
14階層はジェネラルだけの階層。ジェネラルはオーガ肉(特上)をドロップし魔石もまた魔石中(特上)となっていた。
「どうする?15階層を踏破してから休憩するか?」
「私はただ歩いているだけだから、大丈夫よ」
「ああ。俺も問題ない」
「私もよ。魔法一つも放っていないのだから大丈夫」
そんなやり取りをして15階層へ向かう。
ここは階層主の間までオーガジェネラルとマッドエアレーがいた。
「マッドエアレー?狂った牛型モンスター?」
マッドエアレーは自宅で飼っている花太郎と花子より3回りは大きな体躯をしており、太郎たちが1500キロと言うのにマッドエアレーは2500キロもある。
念のため矢に「速度×2」「威力×2」「雷撃」を付与しマッドエアレーにに向けて放つと、難なくこれも斃せた。
ドロップ品は
・マッドエアレーの角 × 1
・マッドエアレー肉 1キロ
・魔石中(特上) × 1
・マッドエアレーの皮 × 1
と破格な量が得られた。
聞くとマッドエアレー肉はエアレー肉の上位版で最高級食肉とされていた。
全マップ探査を行い、階層主の間まで向かう途中のマッドエアレーをどんどん倒していき、そして階層主の間だ。
「さあ、ここも結界を張って様子見でお願い」
俺がそう言うと、
「後方から魔法くらいはダメ?」
エルミが尋ねてきた。
「それくらいは大丈夫だよ。ピルッカにはこの短弓を貸しておくよ。エレオノーラも魔法で後方支援してくれるかい?」
「応! 何せ今日は完全に寄生状態だから少しでも役に立たないと!」
「本当にそうですわ」
「それじゃあ2人も宜しくな」
そう言うと高さ4メートルはあろう大きな両開き扉を開き中に入る。
即時に多重結界を展開し警戒する。
部屋は天井までの高さが30メートル、広さはゆうに野球場くらいの大きさはあろうか。
そして、その部屋の奥に大きな椅子があり、そこに座っているモンスターとその両隣に1体ずつモンスターが立っていた。
鑑定すると、オーガカイザーとオーガキング2体だった。
オーガキングは6メートルはあろうか。カイザーはその座っている大きさから10メートル近いだろう。
「え?オーガカイザー?」
あの様子から見るとキングより更に強力な個体なのだろう。
俺は未知のキングとカイザー対策として矢に「速度×3」「威力×3」「雷撃×2」を付与し、それを150本ほど天井の中央に浮かせる。
速度2でさえソニックブームが発生するほどだ。
速度3はどれ程の速度になるのか。
未知の敵に未知の付与。
俺はその矢にブーストを掛けて3体のオーガに放つ。
すると、3本の矢は消えてそのままオーガに……
音速を超え見えない矢をカイザーとキングたちは打ち払ったのだ。
「くそ、厄介な戦いになりそうだ」
そう呟くと自身に「身体強化」を重ね掛けして、アダマンタイトの剣を持ってオーガに向かうのだった。
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