027 ヤルヴェンパー迷宮4 プラスタチウム
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夜、俺は手に入れたアスタチウムとプラセニウムを合成してみよう!と思い至っていた。
ピルッカとエレオノーラは結局、お風呂の中だけでなく寝室でも愛を深めており、その声の大きさで遮音結界を広げる事になった。
そうなるとエルミも、ね?となるのでソファーに並んで座り、寄り添って寝る事になったのだ。
ただ、42歳までセカンドチェリーの俺がそんなに賢者でいられる筈もなく、欲求に溺れないために合成について考えていたのだ。
「先ずは「複製」でアスタチウムとプラセニウムを増やしていこうかな」
意外と「複製」に魔力が必要で、100キロずつ複製して、取り敢えず50キロずつを使って俺の持つ「錬金術」スキルで合金にする事にした。
魔力を込め、たっぷりの魔力を注いで「錬金術」を使い続ける。
体感では半分ほどの魔力を消費してようやく合金が完成したのだが、合金の重量は何故だか1.5倍にまで増えて150キロもあった。
「鑑定してみようか……」
鑑定してみると、
名称 : プラスタチウム
超希少金属のアスタチウムと同じくらい希少金属であるプラセニウムで作られた合金。
うん。その通り。
そう思うしかない鑑定結果だが、名前が分かっただけでも良しとしよう。
早速、このプラスタチウムを使ってフルアーマーとブロードソードでも作る事にしたのだが、「錬金術」並みに「鍛治」に魔力を必要とする。
「うっ……一気に魔力を消費していくぞ……」
ステータス上の魔力値はそれでも9999を示したままであり、体感だけは魔力を一気に消費している。
残魔力の1割……2割……3割……
身体の中から魔力が抜けていく。
4割……5割……8割……
残魔力の9割に届かないくらいの魔力の消費があったくらいで漸く魔力消費が止まる。
俺はそれを確認し、そのまま意識を保てなくなり気を失ってしまった。
翌朝、俺はいつもの時間に目を覚ましたが、昨日作り上げた鎧と剣の事はすっかり忘れて自宅へ転移してコケとコッコたちに餌をあげていたらいつの間にか卵から雛が孵っていた。
「おおっ!このままいけばコカトリス養殖ができるか?」
そう言いながら太郎と花子の牧草地の状態を確認する。
花子コカトリスも雛が生まれたから、と花子を鑑定してみると花子は妊娠しているようだ。
「エアレーも繁殖出来そうかな?」
そう思いながら彼らの世話をして今度は王城へ向かい熊五郎、にゃん太、ぽっぽのご飯だ。
「明々後日には帰ってくるからな。良い子にしていてな」
「がぅ……」
「にゃん……」
「くるる……」
とても寂しそうに俺の身体を擦りつけて甘えている。
俺も彼らのもふもふをたっぷり堪能して、エルミたちの朝ごはんだ。
朝は久しぶりにご飯。
ニジマスと豚汁もつくり、野菜サラダと梨を用意。
エルミはリビングで寝ていた事もあり、俺が朝食の準備を始めたら目を覚まして手伝ってくれる。
「おはよう、ジュンイチ」
「おはよう。悪いけど、ピルッカとエレオノーラを起こしてきて貰ってもいいかい?」
「そうね。彼らも昨日は猿だったからまだ眠たいのかもね」
エルミはそう言うと彼らの部屋に向かい、ドアをノックしても中から反応がない。
ドアを開けて、
「朝ごはんよ……」
そう声を掛けると、エルミは悲鳴を上げる。
「エルミ、どうした……?」
部屋の中ではベッドの上で猿っていた2人がいたのだった……
「もう!実習中なんだから自重してよね!」
「ごめんなさい、エルミ……だって久しぶりに2人の夜だったから……」
「いや、ホントゴメン!」
「3人とも、そろそろご飯食べてくれない?冷めちゃうんだけど」
俺がそう言うと漸くエルミもご飯を食べ始めた。
話を聞くと2人は仮眠とる事なく朝までハッスルしていたらしく、今日の迷宮実習は大丈夫か?と心配になる。
取り敢えず朝食を終え、装備を身に付けて6階層から始める。
ただ、朝食も食べて血糖値も上がったからか、いや、それ以前に寝不足だからなのだが完全にピルッカとエレオノーラの動きが悪い。
仕方がないので、ゴブリンたちは俺が対応していく事に。
「いくぞっ、氷矢っ!」
いくつもの氷矢を形成し、それをゴブリンの頭に向けて射出していく。
ギャ
ギャ
ギャ……
全マップ探査をしてももうこのフロアにはモンスターは見出せない事から、そのまま7階層へと向かう。
ここのモンスターは犬の頭に人の身体をしているモンスターで、身長はゴブリンとあまり変わらないが敏捷性はゴブリンより数段上で、手には槍を持ち、簡単な皮鎧を身に付けて隊列も組んでいた。
「コボルトか……知能も高そうだが……」
20体ほどのコボルトがこちらに向かって歩いてくる。
もちろん、彼らは俺たちを狩るために来ており、視線はしっかりと俺たちに向けられていた。
100メートルほど近づいたら、彼らは少し小走りになり包囲しようと展開していく。
俺は氷矢を形成し、展開し切る前に纏めて斃しておこうとそれを射出する。
「わうわぅわぅっ!」
リーダーらしき個体が鳴くと彼らは背負っていた木製のバックラーを前腕に取り防御体制をとりながら、氷矢を弾き返していく。
「ほう、なかなかだな……氷槍!」
流石にこれを木で作られたバックラーで受け続けられる筈もなく、コボルトは俺たちに槍を振るう前に全滅した。
「ジュンイチ、コボルトってかなり知能が高いんだね!」
「モンスターと言ってもオーガなんかは人の言葉を話すからね。彼らは知的に高い個体も多いと思うよ」
そう言いながら7階層を踏破していく。
コボルトは小さな魔石と時折、コボルトの毛皮がドロップする。
このコボルトの毛皮は庶民の防寒具として人気が高く、買取額はそれ程高くはないけど常時買い取りをしてくれる素材だ。
モンスター討伐には参加できない分、魔石やドロップされた毛皮を回収するのがピルッカとエレオノーラ。
魔石も200を超え、毛皮も30近くドロップしたので拾うのも結構重労働だ。
彼らの体力を考えて8階層は駆け足で踏破する事にし、彼らに結界を張り8階層、9階層を走り抜けた。
モンスターは上位ゴブリンや上位コボルトなのでドロップ品は然程変わらなく、コボルトの毛皮だけは高品質のものがドロップした程度だ。
「さあ、階層主の間がある10階層だ。ここをクリアしたら、11階層で休もう!」
「うっしっ!ここで少しは戦力になるよう、頑張るよ!」
「私も頑張らせて頂きます!」
そう言う2人を俺とエルミは顔を見合わせてクスリと笑う。
「あー、ジュンイチ!その笑いはなんだ?いや、確かに今日は役立たずだったけど……」
「今日は怪我しないように気をつけてな。今日は2人はお風呂は別々だし寝室も外から鍵かけるよ」
「えー……はい。そうします……」
ピルッカは俺とエルミの視線に負けて、それを受け入れた。
そんな事を話していたら、身長2メートルほどで体重250キロほどの豚顔のモンスターが棍棒を持って歩いてきた。
オークだ。
コボルトのように集団で襲ってはこなさそうだが、強靭な肉体を持った彼らは1体でも脅威的な存在。
実際にこのモンスターは10体も確認したら軍が出てくる案件となる。
そんなオークが3体、俺たちに近づいてきたのだ。
俺は短弓を構えて「速度」「威力」を付与し射出。
オークの頭を吹き飛ばし1体が片付く。
残り2体も同じように矢を射るとそのまま上半身と腹部が吹き飛ばされ、彼らはその場に倒れ込み魔石とドロップ品を残して消えていった。
「んー?迷宮のオークは弱いのか?」
俺が呟くとピルッカとエレオノーラは首を横にぶんぶん振り、
「それは違うから!」
そんな事をぶつぶつ言いながらドロップ品を回収する。
ドロップ品は
・魔石(上) 小 × 3
・オーク肉 300グラム
見た感じはやはり豚肉だ。
「そういえばオーク肉って旨いのか?」
肉を受け取りながらピルッカに尋ねると、彼は驚いた表情を見せながら、
「オーク肉は高級食材ですよ!大体100グラム銀貨20〜25枚が相場ですね」
「そんなにするの?」
「エアレー肉なら100グラム金貨1枚は固いですよ!」
「そんなにするの?」
「国が違うからカルチャーショックを受けるかもね」
2回目の驚きは俺のボキャブラリーの無さを表している。
そんな俺の事をエルミは上手いタイミングでフォローを入れてくれる。
「常識がないからね」と言われたらそれこそショックを受けてしまうよ。
そう考えながら自宅で飼っているエアレーを計算してみたら収穫の際には1頭あたり200キロを超える食肉が手に入る。
それだと金貨2000枚になるだろう。
そういえば、俺、アイテムボックスの中に死蔵しているものをまだ売っていないよなぁ。
そのあたりは実習終わってから引き取ってもらう事にして、階層主の間へと向かう事にした。
階層主の間に到着するまでにオークを150頭ほど屠り、合計15キロのオーク肉を手に入れた。
今日の晩飯はオークカツにしよう、と思いながら、
「さあ、これから階層主の間だ」
この頃になると、ピルッカとエレオノーラはヘロヘロになっており、完全に戦える状態ではなかった。
仕方がないので、2人のことはエルミに任せて1人で階層主に向かう事にした。
「さあ、開けるぞ……うわぁっ!」
思わず俺は声を上げてしまった。
それと言うのも、中にはオークキング1体とオークジェネラル2体、ハイオークが5体、俺たちを待ち構えていたのだ。
オークたちは棍棒を手にしていたが、彼らは剣を持ち、オークジェネラルはハーフプレートアーマー、キングはフルプレートアーマーを纏っていた。
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