020 国立ユヴァスキャラ学院1 入学試験 ※
いつもお読みくださり誠にありがとうございます。
今日から新章です。
この世界から転移して16日目。
俺はエルミと共に国立ユヴァスキャラ学院の前に立っていた。
王国の教育機関として最高峰の学院という事もあり、それに見合った威風堂々とした建物だ。
俺が通っていた某大学よりも荘厳さを感じさせるのは、異世界だからそう見せるのか、それとも見慣れぬ建築様式からなのか、それは分からないが。
「すごいな……」
「そうね。ここは成人までの初等部とその次の上級部もある学院だからね」
この国には10歳になる年齢から14歳になるまでの年齢の子が通う初等部と、それ以降も学ぶのを祈望する場合は19歳になるまでの年齢が通う上級部があった。
エルミは初等部の最上級生であり、俺は本当は上級部に行くべきべきなのだが、そこはお義父さんの権力で俺も初等部の最上級生として編入する事になる。
エルミは俺を入学手続きをしてくれる学生支援部まで連れて来てくれてた。
「じゃあ、私はクラスに向かうね」
「ああ。それじゃあ、また、後でな」
「うん。待ってるね」
エルミはそう言うと、何度も俺の方に振り返りながらクラスへと向かった。
そんなエルミを見送り、俺は学生支援部の受付に向かい渡されている入学許可証と推薦書を眼鏡を掛けた初老のエルフに手渡し挨拶をした。
「今日から編入するイトウ・ジュンイチです。宜しくお願いします」
「ん、どれどれ……この時期に編入とな。それも人族……珍しいね。ほう、シュルヴェステルの坊やの推薦かね。私ゃティニヤって言うよ。何かあったら直ぐに相談するんだよ」
「ティニヤさん、一生懸命頑張ります!」
「良い返事だね。元気な子は好きだよ。それじゃあ、お約束ごとだけど、簡単な試験を受けて貰おうかね。セラフィーナ、悪いがこの子の試験をやって貰えるかね」
ティニヤが呼ぶとそこにはエルフにありがちなペタではなく、ブルンとしたものが目立つ20代前半と思しき女性が返事をしてやってきた。
歩くたびに豊かな双丘がブルンブルンと上下左右に暴れ、下着を身につけていない事が良く分かる揺れ方をしている。
「ジュンイチ、そこまでガチ見をしたら女の子に嫌われるよ」
「あ、つい……すみませんでした」
「直ぐに謝れるのもポイントが高いね。セラフィーナ、今日から編入のイトウ・ジュンイチくんだ。初等部5年だからペーパー試験と実技試験を。剣術と体術、そして魔法だね」
「分かりました。それではジュンイチくんでいいかな?教官のセラフィーナです。宜しくね」
「はい。よろしくお願いします!」
俺はセラフィーナに連れられて小さな部屋に向かった。
そこには幾つかの学生用の机と椅子が置かれていた。
その内の1つに俺は座るとセラフィーナは簡単に試験の説明を始める。
「それでは筆記試験内容は算術に歴史、モンスター学の3つよ。頑張ってね。一応、既に入学許可は出ているから形式的なものだけど、場合によってはクラスダウンになるから頑張ってね」
そう言うと3枚の試験問題を机の上に置いてくれた。
いや、算術は何とかなるけど、歴史なんて知る筈もないし、モンスターも狩ったものしか知らない。
「ユヴァスキャラ王国の歴史の中で3大賢王と言えば誰か」
「王国暦371年に起きた事件についてその概要を述べよ」
そんなん知らんがなっ!
モンスター学については
「フォレストウルフ討伐について注意すべき点を3つ述べよ」
「ミツキマウスとミニマウスの口癖を述べよ」
なじゃこりゃ!
答えられる筈がないだろう!そんな事を考えていると、
『スキル「歴史」「モンスター学」を獲得しました。』
と表示された。
すると、さっきまでチンプンカンプンだった問題がすらすらと解ける。
算術は小学3年生程度だからこれも問題なく解けた。
「セラフィーナ先生、できました!」
俺は実年齢42歳とは思えない初々しさを醸し出しながら試験問題を提出した。
名前ももちろん忘れずに書いてある。
セラフィーナは「直ぐに採点するわね」と言いながら採点を進めていくと、その採点する手が止まっていた。
「すごい……あなた、何者?」
「え……?編入するイトウ・ジュンイチですが……」
「全問正解よ!算数なんて3割できれば良い方なのに、何で100点なのよ!これなら上級部5年でも行けるわ!」
「いえ、是非、初等部5年でお願いします」
「……と、取り敢えず後は実技試験ね」
そう言うと格闘技場と言う場所に向かった。
下は柔らかな土が敷かれ、壁には耐物理攻撃、耐魔法攻撃が付与されており、また、治癒魔法(小)も常時行なわれている格闘技場だった。
これなら学生は怪我もしにくにだろうし、なかなか学生に優しい施設だ。
「ジュンイチくん、ここでは3人の先生と模擬戦を行います。最初は体術からよ。体術はマルック先生、剣術はオラヴィ先生、そして魔法は私、セラフィーナよ」
「マルックだ。ジュンイチ、それでは拳で語り合うぞ!」
マルックはエルフとは思えない筋骨隆々な身体付きで、何よりエルフ特有のリーチの長さが特長的な体型をしている。
「はい。宜しくお願いしますマルック先生!」
マルックは駿動で一気に距離を詰めてきた。
それを俺は正面から迎え撃つ。
マルックの右のジャブが俺を襲う。
それを皮一枚で避けつつ、懐に入り込みジャブを返す。
それをマルックは服1枚で躱しつつジャブの応酬だ。
「ふんっ!」
速度を上げ左右のジャブをまるで回転させるかのように打ち込んできた。
「うりゃりゃりゃりゃりゃぁあっ!」
打ち込む速度が早すぎて残像が生じる。
それにより拳が複数に増殖し、俺に襲いかかる。
だが、それを全て掌で受け止める。
「お前っ、本当に初等部かぁっ!」
マルックはここで勝負に出る。
無酸素状態で、連打速度を極限まで上げる。
それにより拳は全て1つになったかのように巨大な槌になり俺に撃ち込まれた。
どっごーん!!
地響きが鳴り渡るような衝撃が格闘技場に響き渡る。
そして、そこに立っていたのは1人の男だけだった。
土煙が薄くなり、そこに立っている者が識別できたのだが、そこに立っているのは当然ながら俺だった。
「マルック先生、大丈夫ですか?」
「……あぁ。まさかあの拳を避けるのではなく打ち破りにくるとは思っても見なかったぜ」
「たまたま上手くいっただけですよ」
「憎たらしいガキめが。たまたまなんて起きねぇんだよ!まあ、俺の負けは負けだ、体術は合格だ!」
これで俺は1つ、合格を頂くことができた。
次は剣術だ。
木刀を渡され、格闘技場の中央にやってきた
「次は拙者の番だな。オラヴィと申す。それでは剣を構えろ」
「イトウ・ジュンイチです。オラヴィ先生、宜しくお願いいたします」
俺はそう言うと剣を正眼に構える。
オラヴィもまた正眼に構え、その気合はワイルドベアを一刀両断に出来そうな程だった。
互いにジリジリと間合いを詰めていく。
間合いに入るか入らないかといったその瞬間、オラヴィは神速という足捌きを使い、彼は俺の横を通り過ぎた。
ガキン
オラヴィは俺の右後ろにいた。
「ほう、この速度に反応して俺の剣を捌いたか」
木刀同士が打つかる際に、その威力が大きすぎるために金属同士がぶつかったかのような音になっていた。
それは木刀にとっては次の剣撃が強度上、最後となり砕け散ってしまうだろう。
八双の構えをとるオラヴィに対して俺は再び正眼に。
オラヴィは木刀を立てて、左足を一歩前に踏み出しし木刀を右側に少しずらして構え、袈裟懸けを撃ち込み俺を一刀両断にしようという構えだ。
本来、八双の構えは相手の動きに合わせるのが苦手と言われているが、オラヴィほどの技量を持っていれば、それくらいの難点を補ってしまうだろう。
オラヴィは自身の左側に敢えて隙を作り俺を誘う。
俺はその誘いを受け取り、吸い込まれるように彼の左腹部に一撃を入れた。
ざしゅっ
「ふっ、ジュンイチ、見事だ……」
オラヴィは膝を突き敗北を認めた。
「お主、剣術の試験は合格だ!」
こうして俺は体術に次いで剣術の試験も合格を手にしたのだった。
※ スキルの変化
称号 : オーヴァージェンの使徒
スキル : 剣術、棒術、槍術、体術、弓術、魔法(全属性)、付与、転移、眷属化、従属化、収納、鑑定、隠密、結界、鍛治、錬成、錬金術、重力操作、創造、治癒、回復、裁縫、調理、農業、狩猟、建築、自動地図、索敵、全マップ探査、身体強化、漁業、洗浄、浄化、話術、交渉、スキル獲得、健康体、複製、木工、紡績、生地作成、縫製、美味しそうに見える、歴史(NEW)、モンスター学(NEW)
加護 : オーヴァージェン主神の加護
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