002 家づくり
お読みくださり誠にありがとうございます。
「取り敢えず、飯でも食うか」
テントに戻ると、爺さんのアイスボックスが置かれていた。
「爺さん、アイスボックを置いていってくれたんだ」
そう言ってアイスボックスを開けると、ニジマスが6匹の他に豚肉や牛肉、鳥もも肉も1キロずつ、それに缶ビールが4本にブランデーの大瓶が未開封で1本入っていた。
串を打ってあるまだ焼いていないねぎ間串が6本もあった。
「爺さん、ありがとうな」
俺は爺さんに届かないであろう感謝の言葉を述べると、それらを「収納」して「複製」した。
ニジマス × 60匹
ねぎ間串 × 60本
牛肉 × 10キロ
豚肉 × 10キロ
鶏肉 × 10キロ
缶ビール × 40本
ブランデー大瓶 ×10本
ついでだからテントや今履いている靴なども含めて持ってきた荷物を全て収納して複製を行なっておく。
これで着替えや食事、それに照明などの心配はなくなった。
「腹減ったから、鳥飯でも作るか」
飯盒に持ってきた無洗米とねぎま串を4本ほどバラして入れて、調味用の日本酒、醤油を加えて炊飯。
ついでにニジマスを2匹も塩焼きにする。
旨そうな香りを立てながら俺は焼き上がるのを待っていたら、空き地の周囲に何やらでかい動物が数頭、こちらを見ていた。
いや、こっちの近づこうとしているんだけど、テントを中心にして半径10メートルに近寄れないと言った感じだ。
「これは……結界か?爺さんが張っていてくれたんだな。感謝感謝」
そう言いながら、弓と矢を収納から取り出して威力に「付与」を矢に行う。
そして1番でかい動物に射ると矢はその動物を貫通してしまう。
「これはすごいな。矢が貫通ってどんだけの威力だよ……」
だが、残りの動物は逃げるどころかかえって興奮してしまい、結界内に入り込もうと鼻息を荒くしながら土を掘っている。
俺は次々に矢を射り、1頭を残して全滅させた。
実は、その1頭はまだ赤ちゃんのようで20キロ程度の小さな熊だった。
俺は収納からニジマスを取り出して与えると旨そうに食べている。
結局、ニジマスを5匹食べ終わった頃にようやく満足したようでこちらに腹を見せながら寝ていた。
『「従属化」もしくは「眷属化」できます。 眷属化/従属化』
餌付けするとモンスターは何やら眷属や従属できるようで、俺は眷属化を選択し「熊五郎」と名付けた。
1頭しかいないけど、五郎。
そこはネーミングの悪さを指摘するような人はどうせいないから気にする事なく、熊五郎に決定だ。
すると熊五郎との間にパスが開通して熊五郎の額に何やら印が浮かび上がっていた。
「これで俺に眷属化したのか……眷属というよりペットだな」
俺はそう思うと熊たちを次々に「収納」して解体した。
・グレートベア肉 3200キロ
・グレートベア毛皮 × 8
・グレートベアの牙 × 16
・グレートベアの爪 × 80
・魔石中 × 8
・討伐部位 : グレートベアの鼻 × 8
肉が1頭で400キロ?
ということは体重は700キロ近くあったという事か……
ヒグマでさえ400キロ超えたら化け物って感じなのに、これは気を付けないと危ないな。
俺はそう思っていたら、飯盒もいい感じなので火から下ろした。
ニジマスも焚き火から離し、手を「洗浄」で洗い少し遅くなった朝食にした。
軽く手を合わせて「いただきます」をしてから、早速、鶏肉の脂が上手く染み込んだ鳥飯とニジマスをそれぞれ口の中に。
戦闘?後に食べるご飯、これうめぇーっ!
俺は思わず叫んでしまうほど美味しいご飯だ。
ニジマスもうまい具合に内臓まで火が通っており、これもまた旨い。
そういえば、2日前までサラリーマンだったのだが、こんなに旨い飯はサラリーマン時代はあまり食べた事がなかったな。
明日は出社日、同僚の奴ら、俺がいなくてもやっていけるのだろうか?
そう思いながら、俺は鳥飯とニジマスを胃に収めていった。
朝食を食べ終わると、俺は周囲の森を伐採する事にした。
1000メートル四方を魔法で伐採し、その木々を「収納」すると建材にする事ができた。
柱となる12センチ角の建材や壁や床になる厚さ2センチほどの板。
「収納」の中で適度に乾燥させる。
土魔法で地ならしをしてから柱状改良を行い、1枚岩を魔法で削って作って高さ1メートルの土台を用意する。
これでシロアリ対策や冬という季節があるなら床下からにの冷え対策になる。
一応建坪40坪程度の平家の家。
折角建てるんなら少し広めの家にしたいんだよね。
排水やその排水を処理する浄化槽も設置する。
そこに創造で得た金属を使い鍛治や錬金術で様々な金具などを作り、「重力操作」で建材を軽くし「建築」で一気に柱を建て金具を取り付けていく。
もちろん、暖炉を設置できるようにその部分は防火処理を忘れずに行う。
取り敢えず柱と屋根を組んだのでモンスターや虫除けの結界を伐採した1000メートル四方に広げて張り直し、今日の作業はお終いにする。
「熊五郎、おいで!」
「がうっ!」
熊五郎は俺が家を建てていた間、遊び道具として作った直径40センチほどの木の玉で遊んでいた。
ボール遊びはした事がなかったのだろう、ずーっと熱中して遊んでいた。
それでも俺が呼んだら、熊五郎は俺のところに素っ飛んできて、「ボク、えらいでしょ?」と言った感じでフンスと鼻息を荒くする。
「これから周囲の探索だ!」
俺は矢筒の中に矢を20本入れて弓と一緒に背負い森の中へと進んだ。
その後ろを熊五郎が歩いて着いてくる。
体高は50センチほどしかないので、俺の歩速にようやく着いてくる感じだ。
森の中は様々な食べ物が自生しており、食べられる草や芋のようなものを採取し「収納」する。
これらを栽培してもう少し食生活を豊かにしようと考えたのだ。
「鑑定」が使えるので、薬草も採取。
怪我や病気になった時用に、「錬金術」でポーション類を作っておこうと思う。
特に熊五郎は芋類を見つけるのが上手で、ここ掘れワンワンよろしく、ガウガウ言いながら場所を教えてくれる。
結構な収穫があったのでテントに戻る事にした。
夕方前だが、ろくな照明もないので少し早めに晩ご飯の準備を始める。
飯盒でご飯を炊き、鍋を幾つか「鍛治」で作って、それで芋っぽいものと豚肉で煮物を作る。
芋は……里芋のようにねっとりした感じのもので豚肉とに相性が抜群!
そして、もう一つの鍋でほうれん草に似た食べられる草を使って味噌汁。
いやあ、調味料一式を普段からリュックに入れておいて本当によかった!
この日の夕食はご飯に味噌汁、そして芋と豚肉の煮物。
「旨い。なんでだろう。家で食べている米や調味料なのにここで食べるとすっごく美味しく感じるんだけど」
熊五郎は俺に横で火を通した豚肉の塊をガブついている。
食べる時も「がうがう」言っているが、嬉しくて興奮しているときは「がうがう」と唸ってしまうんだろうな。
今回も米一粒残す事なく、綺麗に食べ終わった。
俺はそのまま「収納」するのだが、「洗浄」が自動的に行われるので、後片付けはとっても楽だ。
薪を追加してくべ、熊五郎を夜番代わりに近くで寝てもらい、俺は自身に「洗浄」を使い寝袋に入り翌朝を迎えるのだった。
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