019 ユヴァスキャラ王国王城4 学院
いつもお読みくださり誠にありがとうございます。
この世界に来てから14日目。
2週間も経った。
その間に家を建て、熊五郎、にゃん太、ぽっぽを仲間にして、何よりエルミと知り合った。
そして、隣りには、エルミ。
そう、昨日も一緒に触れ合いたい!と言う事で熊五郎たちと一緒に、もふもふをしながらエルミと寝たのだ。
同衾の条件、と言うのがあり、同じベッドで一緒に寝ると同衾らしく、ソファーの上に並んで座って寝るのはセーフらしい。
エルフのエミルは睫毛が長く、その睫毛が瞬きするたびに揺らめく。
彼女が顔を真っ赤に上気させている時の潤んだ瞳と組み合わせると、殺人的な可愛さになるんだよね。
それを肩を寄り添わせて座っているのだから、正直、座っているだけで拷問に近い。
そうは思うけど、この時間がずっと続けば良いな、とも思うんだよな。
「おはよう、エルミ」
俺はそっと呟いてエルミの額に唇を寄せた。
そして家の外に出てコケとコッコに餌を与え、太郎と花子の牧草状態を確認する。
畑に行って、この間爺さんがアイテムボックスに入れてくれた種や苗木があったので、食べたい野菜の植えたり、収穫を行う。
それと今日したかったのは花壇づくり。
家の前に花壇をいくつか作り、欲しかったさくらんぼの苗木を植える。
俺は白くて可憐な花を咲かせる「佐藤錦」を8本植えて「高砂」「紅秀峰」を1本ずつ植える。
こうすると実がなりやすいのだ。
家に戻り自分に「洗浄」と「浄化」を掛けて、それから料理を始める。
今朝はエルミの家族分も作るので、食べやすいものを作ろうと思う。
そこで、ロールパン、ソーセージ入りのポトフ、ベーコンエッグにトマトサラダとりんごジュース。
以前作ってあったパン生地にバターを少し混ぜてから形成し2次発酵させ、卵黄を表面に軽く塗ってから焼き上げる。
ソーセージは皮なしソーセージを作ることに。
豚肉を「解体」で挽肉にし、それに塩、胡椒、唐辛子、オリーブオイルを混ぜて形成し軽く蒸す。
それを表面に焦げ目ができる程度に炒めれば出来上がりだ。
ベーコンは豚肉の塊に塩と胡椒、ローズマリーを擦り込んでそれを燻製する。
最後にジャムづくりだ。
いちごに砂糖を加えてじっくりと煮込み、最後にレモン果汁を少々加えると出来上がりだ。
後は野菜を煮込んでソーセージを加えてからコンソメと塩、胡椒で味を整えたらポトフの完成だ。
エルミはもう少し寝ているだろうから、熊五郎たちには早めに食事を用意する。
「熊五郎、にゃん太、ぽっぽ、ご飯だよ!」
「がうっ!」「にゃー」「クルッポォ!」「はぁ〜い!」
何故だかエルミからも返事があった。
「エルミ、おはよう。起こしちゃった?」
「おはよう、ジュンイチ。美味しそうな匂いがしてるからね!」
確かに、熊五郎たちの前には豚肉のローストに少しポトフを掛けたものが置いてある。
「今日はエルミの家族と一緒にご飯だから、エルミは少しだけ我慢ね」
「えー、そんなぁ……それは拷問だぁぁぁ」
ガックリと肩を落とし、再び毛布を頭から被ってしまう。
そんな可愛いエルミに、
「そろそろ王城に戻るから、着替えてね」
「はあ〜ぃ」
エルミは眠そうな返事をすると自分の部屋に向かう。
熊五郎たちも食べ終わったので後片付けをし、エルミの着替え終わるのを待つことにした。
だが、一向にエルミは部屋から出てくる気配がしない。
どうしたものかドアをノックしたのだが返事がなかった。
「エルミ、入るぞ……」
ドアを開けて部屋に入ると、一応、着替え終わっているエルミがベッドに座って俯いていた。
俺はエルミの横に腰掛けて、
「エルミ、そろそろ王城に行こうか」
と声を掛けるとエルミは俺に縋るように抱きついて、か細い声で、
「学院に行きたくない」
そう言うのだった。
いわゆる不登校なのかも知れないが、彼女の場合は学校の行事の最中に護衛の騎士団長に謀られ森に強制転移させられたのだ。
明確な殺意を彼女は学校生活の中で向けられたのだ。
王城に戻ると言う事は学校生活に戻ると言うことでもある。
そんな彼女が学校生活に恐怖を感じるのは不思議な事でも何でもない。
「そうか。俺はエルミの通っていた学院に通ってみたいけどな」
俺がそう言うと、エルミは顔を上げて、
「本当?ジュンイチも学院に来てくれる?」
「ああ。朝食を終えたらお義父さんにお願いしてみよう」
「うん!ジュンイチ大好き!」
今度は先程とは違って力強く俺を抱きしめてくれた。
王城の王家専用食堂に国王シュルヴェステル、王妃エヴェリーナ、第1王子のエドヴァルド、第2王子であるエルネスティに第3王子のラーファエル、そして俺とエルミだ。
テーブルの上には焼き立てロールパンとお手製ソーセージ入りのポトフ、それにお手製厚切りベーコンのベーコンエッグ、フレッシュトマトサラダにりんごジュースだ。
バターロールのためにエアレーミルクから作ったバターといちごジャムを添えてある。
シュルヴェステルは昨晩の食事と「回復」により本調子とまでは言えないだろうけど、もうベッドから出て食事ができるまで復調しているようだ。
そのシュルヴェステルは、テーブルにある食事を見て、
「こんな美味しそうな朝食、生まれて初めてかも知れぬ……」
そう呟いていた。
エドヴァルドとエルネスティは昨晩の食事とは違い、口元に涎のぞいていた。
「主神オーヴァージェンに感謝して」
エヴェリーナがそう唱えると、「感謝して」と皆が応え、次の瞬間、ロールパンに一斉に手が伸びた。
この家族、本当に王族なのだろうか?
と言う感じに、ロールパンを頬張る。
「パン、まだありますので、スープなども……」
シュルヴェステルはコクコクと頷きながらロールパンを頬張る。
そのパンを飲み込むとポトフだ。
スープを1口胃に流し込むと、
「ふわぁぁぁ」
と言う声とため息に近い、呼気と声が1つになったような声を上げる。
そんな声が次々と上がっていく。
すると次の瞬間、一斉にポトフが胃袋に流し込まれていく。
俺とエルミはそれを見て嬉しく思いながら眺めていた。
「エルミ、そのいちごジャム、今朝作ったばかりだよ!」
「あー。これ食べたかったのよ!」
ロールパンを縦に割り、そこにバターとたっぷりのいちごジャム。
それを大きくない口を思いっきり大きく開けて頬張る。
ぱくっ
そんな音が聞こえるような感じにパクつく。
「美味し〜〜〜いっ!」
エルミの声に家族たちはハッとして、エルミと同じようにバターといちごジャムをたっぷり塗ったロールパンを食べ始めた。
「「うおぉぉぉっ!」」
シュルヴェステルとエドヴァルドが雄叫びを上げると、エヴェリーナや2人の弟たちも同じく雄叫びをあげる。
「エルミ、ベーコンエッグをロールパンに挟んでも美味しいよ」
「そうなの?じゃあ試してみようかな」
ロールパンをまた縦に割り、ベーコン、白身部分、そして半熟の黄身を挟んで食べる。
この世界にはベーコンと言う食べ物は存在しないのだから、脂身の甘さと旨さを同時に味わえる厚切りベーコンは至高の料理だ。
それに目玉焼きが加わるのだから、このロールサンドが旨い以外の何物でもない。
「ジュ…ジュンイチ!これ、これ……凄く美味しいよっ!」
俺はその言葉を聞けてそれだけで満足だ。
当然、彼女の家族も同じ食べ方を始め、再び雄叫びが部屋に響き渡った。
結局、1人あたりの平均はロールパン10個、ポトフを3回お代わり、ベーコンエッグも3回お代わりに、トマトサラダは1回お代わり、りんごジュースは4回お代わりと、大食い王真っ青の量を王妃エヴェリーナですら平らげ、まるで臨月のようなお腹をさすりながら椅子の上でトドになっていた。
この間、彼らはまだ一言も話していない程だ。
俺はというと食器類は片付け、紅茶を淹れエルミの家族とまったりしていた。
ようやく話しができるくらいに「フードショック」から戻ってきたが、料理に関しては極めてボキャブラリーは貧弱で、
「あれを食べたら明日からは……」
しか言えないみたいだ。
結局、食後1時間ほどまともな会話ができなかったが、落ち着いた頃に、学院の話を切り出した。
「エルミの通っている学院に俺も通いたいのですが、手続きをお願いできますか?」
「そんな他人行儀にする必要はないよ。エルミが通っている国立ユヴァスキャラ学院は10歳以上の子が5年間通う学院でエルミはそこの5年生だ。エルミも色々あったから明後日から復学させたいと思っていたが、ジュンイチも明後日から同じクラスで通えるよう手配しておこう」
「ありがとうございます」
「ん?何だか随分、他人行儀な……」
「ありがとう、お義父さん」
「うーん、お義父さん、いい響きだ。で、学院は全寮制だが、部屋は同じで良いな?フィアンセは同じ部屋になるのが慣習だからな」
「えっ……?」
「人族だから良く知らないのかも知れぬが、初夜は婚約が成立したらいつでもできるんだぞ?」
「いえ、そ、それは結婚式を迎えてからでお願いします!」
俺はロリでもペドでもないんだ〜!と心の中で絶叫しながら、やんわりと初夜に向けてのレールを強引に修正を試みた。
「「「「「「イクジナシ……」」」」」」
そんな声があちこちから聞こえてきたが……同じ部屋なのは避けることができなかった……
感想を頂けると、書くときのエネルギー源になります。
ぜひぜひ、いろいろお待ちしております!!
ブクマ、レビュー、評価なんかは涙が出るくらい頂けたら嬉しいです。
応援のほど宜しくお願いします!




