018 ユヴァスキャラ王国王城3 王城料理 ※
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第1王女サネルマが中心となり騎士団長ハンネスに侍女らが王を亡き者にし第2王女エルミをも殺そうと画策した。
そしてそのサネルマを唆したのが、6人の魔導師たちだった。
こに魔導師たちは俺が行った魔力封鎖により、2度と魔法が使えない身体になっている。
この者たちの処分を王妃エヴェリーナが次々と指示を行う。
サネルマは尖塔に無期幽閉。
ハンネスは断首刑。
侍女などその他の協力者は絞首刑などに処した。
魔導師たちは拷問をかけることにした。
俺は魔法陣の魔力残渣から魔力反射の行き先がハルムスタッド王国であることを突き止め、それを報告する。
そんな事を手伝っていたら、俺とエルミが普段夕食を摂る時間を過ぎており、エルミのお腹から「くー」と可愛い音が鳴った。
「エルミ様、至急、食事の準備をさせていただきます!」
侍女たちは王妃を始め、第1王子や弟たちも食事を摂っていない事に気が付き、急いで食事の準備を始めた。
俺はエルミと共に王城の中庭で熊五郎、にゃん太、ぽっぽたちに食事を用意し、もふもふを堪能してから王城へと戻る。
侍女たちに呼ばれ、食堂へと案内されると、そこにはサネルマ以外が席についていた。
「今日はろくな歓待も出来ず申し訳ありません」
「いえ、これから家族になろうとしているのです。そう畏まらないでください」
エヴェリーナが頭を下げ謝罪の言葉を紡ぐのだが、俺にとっては窮屈だ。
それに即応したのは第1王子たちだが、エヴェリーナは変わりそうになかった。
「ジュンイチ様、エルミ様、そう言えばあのグレートベアやクゥアールは……」
エヴェリーナとエドヴァルドは地下でジュンイチが使役していたモンスターに度肝を抜かれていたのだ。
「ああ、あれは俺の眷属ですね。念のため、潜ませていたのですが被害が広がらずに良かったですよ」
「あのエルダーピジョン以外にも眷属がいたのですね」
以前、自宅から伝書鳩代わりに送ったぽっぽの返事を書いたのはエドヴァルドだったようだ。
そんな話をしていたら料理が運ばれてきた。
黒パンほどではないが固いパンと茹でただけの野菜にアクなどの処理を全くしていない塩気のないスープ。
そして血抜き処理をしていないウサギの直火焼きだ。
ウサギは表面が焦げているが中は完全にレア。
苦味がありバサバサの部分となんだかレバーっぽく臭みのきつい生部分が同居したウサギ料理だ。
コップの中の水は少し濁っており、どうも飲む気が起こらない。
「急拵えではありますが、人族よりはマシな食事かと思います。それでは主神オーヴァージェンに感謝して」
これはエルミの家族の食事の挨拶だろう。
俺も皆に合わせて「感謝して」と言いパンに手を付けた。
(固い……これって何日前のパンだ……?)
出されたものにケチをつけるつもりはないが、エルミと初めて一緒に食事をした際に「こんなご馳走をいただくには……」と言っていた事を思い出した。
その時のメニューはご飯、ポトフとニジマスの塩焼きにホーンラビットのグリル焼きだった。
芋やにんじん、玉ねぎを使った料理は色彩豊かで見た目にも美味しそうだった。
それに対して、
パン……黒
スープ……茶色
ウサギ料理……黒
これを美味しそうに感じるにはスキルが必要になる。
するとピコンと何やら表示が出てきた。
『スキル「美味しそうに見える」を獲得しました。どの料理に使用しますか?』
おい、そんな失礼なスキル、獲得すんじゃねぇ……と思ったのだが、
パン……有効
スープ……有効
ウサギ料理……有効
とした。
すると目の前の食事が一気に美味しそうに見えるではないか!
俺は手に持ったパンを食べたのだが……固くて酸っぱくて……見えるだけではダメなんだとつくづく思う。
当然、エルミも同じような感じであり、食べ慣れている筈のエヴェリーナたちも似たような感じだった。
食後、俺は食事のお礼をした。
「今日はこのように心温まる食事をありがとうございました。宜しければ、明日の朝食は私が用意させて頂きたいと思うのですが如何でしょう?」
ちょっと怪訝そうに思われないか心配だったが、
「使徒様の手作り料理でしょうか!?是非、是非ともお願い致しますっっっっ!」
エヴェリーナの鶴の一声で決定したのだった。
それと言うのも、俺が用意したりんごジュースを味見したエヴェリーナはその美味しさにシュルヴェステルに飲ませる筈だったものが半分に減ってしまった程なのだ。
「ジュンイチ、家族分よ。大変じゃない?」
「お義父さん、お義母さん、お義兄さんに2人のお義弟の分に俺とエルミだろ?」
「7人分だけど、ここの調理場は大した料理ができるような設備じゃないのよ?」
エルミは俺がアイテムボックスで調理できる事を知らないんだった。
「何とでもできるさ」
「まあ、ジュンイチだもんね」
そう言いながら取り敢えず、出された料理は半分は食べる事ができたのだった。
俺とエルミ、そしてエヴェリーナとアドヴァルドの4人はシュルヴェステルの眠る部屋へと向かった。
シュルヴェステルは元気を取り戻し、血色はすっかり良くなっており、まだ身体を起こすまでは回復していないが話す事は可能になっていた。
「おお。君が私を治してくれた使徒ジュンイチ様ですね。いや、畏まった感じが嫌だと聞いているから、ジュンイチと呼ばせて貰うよ」
そんなシュルヴェステルのお腹かから「ぐーっ」と空腹を教える合図がなった。
「ははは。恥ずかしながら身体の回復で空腹も感じるようになったようだ」
「それでしたら、俺が料理を用意しましょう」
そういうと、コカトリスの鶏ガラとにんじん、玉ねぎ、各種薬草を使いスープを取り、塩胡椒で味を整えたスープの中に土鍋ご飯を入れる。
コカトリスの卵を溶いて回しかけてから一煮立ちさせて分葱を散らした鶏雑炊の出来上がりだ。
時間調節を使えば5秒ほどで完成。
アイテムボックスからトレーを取り出し、少し大きめのすいとんによそってレンゲを添えてシュルヴェステルに出した。
部屋中に広がる鶏雑炊の香りは得も言われぬもので、食事を食べたばかりの俺たちもお腹の虫が鳴く。
「せっかくだからお義母さん、お兄さんも如何ですか?」
すると2人から間髪入れずに、
「「是非っ!」」
という返事があった。
もちろん、エルミと俺も食べる事にした。
「それでは、主神オーヴァージェンに感謝して」
シュルヴェステルの挨拶を受け、全員で「「「「「「感謝して」」」」」」と応答して雑炊を口の中に運ぶ。
「「「「「旨〜〜〜いっっ!」」」」」」
貴方達、ご飯食べたよね?
そう言いたくなるほどお代わりのラッシュで、結局5合分のご飯で作った雑炊が空になる程だった。
部屋を出る際にシュルヴェステルに「洗浄」と「浄化」、それに「回復」を掛けた。
やはり清拭しかされていなかっただろうし、病状に伏している間、歯を磨いていなかっただろうしね。
シュルヴェステルは病み上がりという事もあって、雑談は最小限にし寝室に向かう。
寝室は何故だか、俺とエルミは1つの部屋を充てがわれ、
「ごゆっくり〜っ!」
とエヴェリーナ。
エルミは顔を真っ赤にさせているが、
「エッチは結婚してからだからね?」
そう言うと、頬を膨らませながら
「分かってる!」
……ごめん。やっぱり成人してから、が良いな。
そう思いながら俺とエルミは熊五郎とにゃん太、ぽっぽを呼び寄せ、自宅に転移するのだった。
※ スキルの変化
称号 : オーヴァージェンの使徒
スキル : 剣術、棒術、槍術、体術、弓術、魔法(全属性)、付与、転移、眷属化、従属化、収納、鑑定、隠密、結界、鍛治、錬成、錬金術、重力操作、創造、治癒、回復、裁縫、調理、農業、狩猟、建築、自動地図、索敵、全マップ探査、身体強化、漁業、洗浄、浄化、話術、交渉、スキル獲得、健康体、複製、木工、紡績、生地作成、縫製、美味しそうに見える(NEW)
加護 : オーヴァージェン主神の加護
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