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017 ユヴァスキャラ王国王城2 ハルムスタッド王国

いつもお読みくださり誠にありがとうございます。

「間も無く、あの忌々しいシュルヴェステルが亡くなるな」


「左様で。どんな国にもバカの1人や2人は必ずおりますものです」


「わははは。特にあの第1王女はバカもバカ。人を呪わば穴2つと言うだろうに」


ハルムスタッド王国の王城執務室でその王であるカレルヴォが宰相イェルドと話していた。

このイェルドはサネルマを騙して城の地下に魔法陣を構築し呪術を完成させた張本人だった。

ユヴァスキャラ王国とハルムスタッド王国は長い歴史の中で常に敵対していた。

地理的に淳一のいた森は大陸の中央に位置し、森の北側にこの2つの国が並んでいた。

しかも、2つの国は共にエルフの国であり、元は兄弟が建国した国であった。

そして兄弟だからこその憎悪が生じて、その兄弟が亡くなっても今だに憎しみあっているのだ。


そして、その憎しみはハルムスタッド王国の方が強かった。

それというにものも、共に森の北側に位置する国なのだが、ユヴァスキャラ王国の方が資源に恵まれ、そして農作物にも恵まれていたのだ。

常に、ユヴァスキャラ王国の方が豊かな生活を送っているのだ。

カレルヴォはいつかは両国を統一し、相手国民を奴隷にしてやろうと考えていた。


「そう言えば、魔法陣管理をさせている魔導師たちは無事に戻ってこれるのか?」


「彼らには転移魔石具を渡しております故、何か有れば転移で逃げのびる事ができます」


「そうか。魔術師の上位職種持ちを6人も送っているのだ。彼らを失うのは余りにもイタイからな」


ハルムスタッド王国は良く言えばエルフらしい生活を送っていた。

森に愛され、無駄な贅沢をせず、自然と共に生きる。

集落には長老がおり、古い因習が残り……

それに対してユヴァスキャラ王国は魔石具が使われ、快適な生活にある程度豊かな食生活を送っている。

そんな格差を見せられ、羨まない筈はなかった。

しかし憎悪を利用されているのはサネルマだけでなく、このカレルヴォも同じだ。

宰相イェルドはエルフ族ではなく、魔族の中のダークエルフ。

呪いにより、両国を魔族の国にしたいと虎視眈眈と狙っているのだ。


「王が亡くなれば奴らは烏合の衆よ。挙兵の準備もしておかないとな」


「そうですね。それでは我がハルムスタッド王国が誇る魔導兵器も投入する準備も行いましょう」


そんな話しをしていた時、イェルドは急に頭を抱えて呻き声を上げ始めた。


「ぐっぅぅ……何故だ……魔法陣が、浄化(・・)されていく……」


「おい、イェルド、どうした。何があった?」


「ユヴァスキャラ王国に設置した魔法陣が……浄化され消滅しました……」


魔法陣が消された場合、時に、設置した者にその攻撃が跳ね返る事があり。

今回は呪術。

イェルドはシュルヴェステルと同じように顔は黒く、皮膚は干からび、呪われた姿をしていた。


「くぅ……誰か、呪詛返しを……こんな高等魔法を誰が使えるのだ……」


魔術に長けた魔族であっても呪詛返しを回避するには事前の準備が必要だった。

特にユヴァスキャラ王国については魔法的に格下とみなしていただけあって、彼は呪詛返しをされるとは思っていなかったのだ。


「ここから回復するのは……時間が掛かる、か……」


そう言いつつ、イェルドはしばし回復までの期間、眠りに付くのだった。




少し時間を遡る。


ユヴァスキャラ王城では王妃の命を受けて衛士たちが地下に向かっていた。

王城の地下は独居房や武器庫などがあり、使用していない部屋も幾つかあった。

その一つにサネルマとその支援者たちは魔法陣を形成していた。


「1つ1つ虱潰しに探せ!怪しいやつは引っ捕らえろ!」


衛士たちが地下に、それこそ押し寄せるように向かった。

部屋が多いとは言え、多くの衛士が探査すればいつかは魔法陣を設置してある部屋が見つかるのは時間の問題。

その部屋には6人の魔導師たちがいた。

彼らはハルムスタッド王国所属の魔導師であり、サネルマに取り入り王城に潜入した工作員たちだ。

いわゆる魔術師の上位職種である魔導師が6人もいれば、この城の衛士など恐るるに足りないのだが、それでも面倒ごとを好まぬ事もあり、モンスターを召喚して衛士たちと戦わせる事にした。


「あと1歩で王を殺せる筈だったのだが……」


王にかけていた呪術が何者かによってサネルマに向けられた事は魔法陣を管理していれば察する事ができる。

彼らの計画は失敗したのだ。

それであれば、王族のサネルマの生気を吸い取り、この魔法陣からモンスターを召喚すれば良いだろう。


「間も無く、モンスターを召喚できる。この城であればワイルドベアを召喚すれば十分だろう」


「そうだな。城は内部からの攻撃には弱く作られておるしな」


「ワイルドベアなんかが出てきたら衛士の奴ら腰を抜かすだろう」


魔導師たちは笑いながら召喚を始めた。


「我らが魔力を糧に、召喚されよ、ワイルドベア!」


魔法陣全体に黒いモヤが生じ、そのモヤが魔法陣の中央に渦を巻きながら収束していった。

そしてモヤが晴れたかと思うと、そこには体長2.6メートル、体重500キロという巨大なモンスター、ワイルドベアが召喚されていた。


「ワイルドベアよ!部屋の外にいる衛士たちを蹴散らすのだ!」


「グワアアアァァァァァッ!!」


ワイルドベアは咆哮をあげると部屋の外に向かっていった。




(衛士視点)


そこには部屋を廻っていた衛士がおり、出会い頭に吹き飛ばされる。


「うわああぁぁぁぁっ!モ、モンスターだぁぁぁっ!」


まさか、城内にモンスターが出てくるとは思ってもいない衛士は狼狽え、腰を抜かしてしまう。

そこにワイルドベアが襲い掛かる。


「くっ!」


衛士は抵抗を試みようとするが、剣もまともに構える事ができない状態でワイルドベアに立ち向かえる筈がなかった。

衛士はワイルドベアの一撃を喰らい吹き飛ばされる。

そこに他の衛士たちが集まってきて、追撃されないようにフォローに回る。

そのうちの1人、衛士隊隊長がワイルドベアと対峙しながら、


「大丈夫か?」


「あ、あの部屋からワイルドベアが出てきて……」


「そうか。分かった。おい、負傷者を救護室へ運べ!」


「「はいっ」」


負傷者が仲間に運ばれていき、今、ここにいるのは3人。

ワイルドベアと戦うには条件が悪すぎた。

できれば、中〜遠距離攻撃を行うのがベストで最低でも槍があればどうにか最小限の被害で斃せただろう。

ところが今手持ちの武器はブロードソードのみ。

ワイルドベアの一撃を受ける盾すらないのだ。

そこに小さな小熊がトコトコ歩いてきた。


「小熊?」


小熊は「がう」と鳴いて前足で向こう行けという感じのジェスチャーをする。

衛士たちは思わず数歩後ろに下がり、その小熊を見ていたら、


「がうぅぅぅぅぅっ!」


小熊とは思えない咆哮を上げると、身体が一気に膨れ上がった。


「グ、グレートベアぁぁぁぁっ!?」


衛士たちの前には隊長3メートル超、体重700キロはあろうワイルドベアより1回り以上大きい、モンスターとしては格上のモンスターが出現したのだ。

すると、グレートベアはワイルドベアとがしっと組み合い始める。


「グオオォォォ!」


「がううぅぅぅ!」


2頭の重量級モンスターが城内で戦っているという現実離れいた状況に一瞬呆けてしまったが、ワイルドベアが出てきたという部屋に衛士たちは向かった。

人数は少し増えて5人。

剣を構えて部屋に入ると、そこには6人の魔術師らしき不審者たちが杖を構えていた。


「魔術師だ。詠唱をさせるな!」


その言葉に不審者の1人が応え、


「魔術師などと一緒にするな!俺は魔導師だ!ファイヤ!」


無詠唱で魔法を発動し、魔導師は大きな火の塊を衛士たちに向けて放つ。

入り口も広くない場所にこれだけの火の塊を向けられれば回避する術がない。


「にゃあ!」


「子猫っ!?」


ワイルドベアもそうだが小熊が出てきたり子猫が出てくるなど、あり得ない話しだ。

こんな状況でなければモフりたくなるような可愛らしい猫だ。

そんな可愛らしい子猫がいつの間にか入ってきており、子猫はその火の塊に向かって飛び込んだ。


「あぁぁ、猫ちゃん!」


衛士の1人が叫ぶが、そこで彼らの前に起きたのは、巨大な黒猫が火の塊を打ち消すという常識的にあり得ない事だった。

体重500キロはありそうな猫。

いや、クゥアールだ。

クゥアールは床を蹴り、一気に魔導師に飛び掛かりその1人のふくらはぎに食らいつき振り回し、衛士たちに向かって放り投げる。


クゥアールは衛士に顔を向けて頷き、次の魔導師に向かう。

一般にヒョウと呼ばれるネコ科の動物は体重が30キロ程度。

大きい個体でも100キロに満たない。

5倍以上の巨体をヒョウと同じかそれ以上の俊敏さを併せ持ったクゥアールは、近接武器を持たない魔導師にとっては最悪の相性と言える。

1人、また1人と振り回されて大きなダメージを受けて衛士に放り出される。

衛士たちは猿轡をして詠唱対策を施し、指輪などの魔道具を全て外した上で拘束していった。

最後の1人も捕まり、また、部屋の外ではワイルドベアが倒されていた。


「熊五郎、にゃん太、ご苦労様」


「がうっ!」


「なーっ!」


2頭は声の主に応え、再び小熊と子猫に戻る。

2匹は部屋の入り口に向かい座ると、そこにエルミ王女と王女が連れてきた男性が入ってきた。


「エルミ王女、まだ何があるか分かりません!少し離れていた方が……」


「大丈夫ですよ。ジュンイチ、お願いできる?」


「ああ。問題ない」


ジュンイチと呼ばれた男は衛士たちが捕縛した男たちに魔法による楔を撃ち込み魔法を使えない身体にし、そして床に描かれている魔法陣に対し、


「魔法反射」


と唱えた。

これにより魔法陣は自壊し消滅していった。

感想を頂けると、書くときのエネルギー源になります。

ぜひぜひ、いろいろお待ちしております!!

ブクマ、レビュー、評価なんかは涙が出るくらい頂けたら嬉しいです。

応援のほど宜しくお願いします!

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