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012 ユヴァスキャラ王国へ2 オーガ

いつもお読みくださり誠にありがとうございます。

8日目の朝はどんよりとした曇りだった。

日の出前で周囲が真っ暗であってもいつもは降ってくるんじゃないかと思えるほどの星たちが1つも見えないのだ。

何より雨が降る直前の独特の湿度を帯びた空気が、「これから雨が降るぞ!」と教えてくれる。


「雨具を出しておくか」


俺が起きた事に熊五郎が気が付き「がう」と短く挨拶をしてきた。


「おはよう、熊五郎」


「なぁん」


「クルッポォ」


「にゃん太、ぽっぽもおはよう」


「……ん、おはよう……」


エルミはまだ眠そうに挨拶をしてきた。


「エルミもおはよう」


俺は寝袋から出て、朝ごはんの準備を始める。

折角、焚き火が残っているから、ニジマスに串を打ってそれを焼く。

今朝は大量に複製してある土鍋ご飯と根野菜の味噌汁、それと今焼いているニジマスだ。

熊五郎とにゃん太にはビックホーンディアの肉を焼いて、ぽっぽにはいつもの様にとうもろこしと鶏肉だ。

この頃、ようやくエルミも目が覚め、俺の分の寝袋も丸めてシートを畳んでくれていた。


「エルミ、ありがとうな。じゃあ、ご飯にしようか」


「ジュンイチもいつもご飯をありがとうね」


森を駆け回っていた熊五郎とにゃん太を呼んで食事の時間が始まる。

俺はエルミと視線を交わし、


「「いただきます!」」


声を合わせていうのも悪くないな。

そう思ったら、


「がう」「なー」「ぽー」


と3匹も同時に挨拶をした。

俺とエルミはそれを見て微笑み、朝ごはんを食べる。

ニジマスの塩焼きはグリルも美味しいけど焚き火で焼いた方が好み、とエルミ。

それは俺も同感かな、と答えて、家に戻っても時々、家の外で食事しようね、となんだかフラグが立ちそうな会話を楽しみながら朝食を終える。

後片付けをして、全員に洗浄魔法を使う。

これって歯を磨かなくてもいいので凄く楽だ。

俺とエルミは皮鎧を装着してエルミは腰に剣を、俺は弓と矢筒を背負う。

熊五郎に鞍などを付けて昨日と同じような感じに森を進むことにした。


「ん?何かに追われている?」


俺は「索敵」を行うと10体ほどのモンスターが遠巻きに俺たちを囲むようについて来ていることが分かった。

念のため、結界を対物理攻撃、対魔法攻撃用のものも重ね掛けを行う。

全マップ探査を常時発動しモンスターたちの動向を探りながら進んでいく。

昨日と同じペースで進む事ができれば10日ほどで森を抜ける事ができるので、できれば余計な戦闘はしたくないというのが俺の本音だ。

熊五郎も昨日よりエルミを乗せて歩くにのに慣れたのか僅かに移動速度が早くなっている。


1時間後、相変わらず彼らは一定の距離を保ちながら俺たちを追跡している。

りんごやジャーキーなどのおやつを食べ、水分補給も行う。

するとポツポツと雨が降って来た。

俺はレインコートを2つ用意してエルミにも着せる。


「雨はちょっと厄介だな」


「そう言えばさっきからどうしたの?」


「ああ。実は俺たち、10体ほどのモンスターに囲まれていてな。一定の距離を保ってついて来ているんだ。雨が本格的に降って来たら足止めをくうし、奴らが襲ってくる可能性も高くなる」


「ちなみに囲んでいるのってモンスター?」


「いや、視認できていないから分からないけど、人間ではないと思う」


「もしかして……」


「エルミは分かるの?」


「分かるというより、森の中で集団で襲ってくるのは狼かオーガって相場が決まっているの」


「オーガ?」


「うん。オーガは人間よりも大きく、力も強く、中には魔法も使える個体がいるの。ゴブリンやオークというのもいるけど多くは数人で襲ってくるから10体となると……オーガだと思う」


「そうなんだ。それじゃあ、彼らがオーガだと思って俺も警戒するよ。さあ、出発しようか」


再び森の中を進んでいく。

地形としては少し谷間になっているところを通ると近く、また、索敵をするとこの先に10体のモンスターとは別のモンスターが10体ほど待ち伏せしている。

しかもその一部は谷間の上にいるのだ。


(迂回すると3時間はロスするが、投石されても結界があるから大丈夫か?)


エルミの安全を考えて、俺は迂回するルートに変更した。

だが、俺たちを追跡しているものたちが、俺たちの進行を谷間に誘導しようと圧力を掛けて来た。


「エルミ、奴らが仲間が待ち伏せするルートに誘導しようとしている。悪いが戦闘になりそうだ」


「大丈夫。ジュンイチも守ってくれるし熊五郎やにゃん太、ぽっぽもいるから」


奴らは自分たちの被害を最小限にしようと罠を張っているとしたら、ここで反撃されるとは思っていないだろう。

俺はここで攻撃に転じる事にした。


「そうか。熊五郎、にゃん太、ぽっぽ、ここでエルミを守ってくれ。多重結界も張ってあるが十分警戒してくれ」


「がうっ!」「なぁっ!」「クルッポォ!」


3匹は同時に返事する。

俺をエルミの方を向いて「行ってくるよ」と一言言うと、囲んでいる10体のうち一番近くの奴の側に転移した。


「ナッ!」


俺が急に現れた事でそいつは驚いていた。

エルミの予想通りオーガで「説明」で見た通り、赤っぽい体色をし、身長は3メートルほど、頭には2本の角が生えている。


「なぜ追ってくる?」


「エサヲオウノニ クウイガイノリユウガヒツヨウカ?」


オーガは言い終わる前に手に持つ棍棒を俺に振り下ろす。


ドン


棍棒は空を切り地面に叩きつけられると、地面を抉り地響きを立てる。

バカ力だけでなく棍棒もそれなりの質量を持っているようだ。

俺は弓と矢筒を「収納」し、作っておいたミスリルソードに持ち替えた。

オーガは俺に向かって棍棒を水平に振り回す。

それを掻い潜り、オーガの胴を一刀両断する。


「バ、バカナ……」


オーガを収納し、再び矢に持ち替え、俺に集まって来たオーガらに向かい「速度」付与した矢を連射する。


シュ シュ


「グォ」「ガッ」


と短い悲鳴を上げて倒れる。

俺は再び剣に持ち替えて、エルミに向かったオーガの近くに転移して首を撥ね、収納する。

これで残り6体。

奴らは散って個別撃破されるのを警戒して1か所に集まっているようだ。

その前に俺は転移を繰り返しオーガを屠っていく。

だが、最後の1体は俺の剣を剣で受け止めた。


「オーガジェネラル?」


体長が3メートルと他のオーガと然程変わりない大きさなのだが、体色は黒に近い赤で角も長い。

何より、反応速度、素早さ、そしてパワーが桁違いなのだ。

そこで俺は少し距離を取り「鑑定」をしたところ、オーガではなくオーガジェネラルと表示されていたのだ。

奴が手にしているのは「黒鬼」という大剣らしく、人間の狂戦士という職種の戦士が欲しがり大剣なんだそうだ。

俺は弓と矢に持ち替え「速度」「威力」「幻惑」を付与しタイミングを少しずらして3連射を行った。


びゅ びゅ   びゅ


再び剣に持ち替え、俺は転移で奴の懐に入り込む。

矢を打ち払う事に意識を向いている奴は俺が転移した事に驚き、一瞬の隙を見せる。

だが流石ジェネラルというだけあり、すぐさま反応し俺に斬りかかった。

俺はそれを横に避ける。

そこに3矢目がジェネラルの左腕を吹き飛ばした。


「ガアッ!」


そのまま俺は踏み込み、オーガジェネラルの首を撥ねた。

俺はジェネラルやまだ回収していないオーガの死体を回収し、エルミのもとに戻る。

エルミは3匹が寄り添っていた事もありそれ程緊張はしていないようだった。


「お疲れ様。怪我とかない?」


エルミは俺に労りの言葉を掛けてくれる。


「ああ、怪我はしてないよ。取り敢えず、こっちは片付いたから、進もう。待ち伏せしている奴らにも十分、注意をしような」


注意を促し、熊五郎たちに谷間に進ませる。

その間に俺は谷間の上に転移を行う。

そこに1体のオーガが隠れており、その横には人の頭ほどの小岩が積まれていた。


「ナンダ オマエハ!」


俺に気付いたオーガは手許の棍棒を手にして振り下ろしてきたが、難なく避けてそのまま額に剣を突き刺す。

オーガを「収納」し、谷間の反対側に転移をすると、反対側で何が起きていたかを見ていたのだろう、棍棒を構えていた。


「オーガヨリツヨイニンゲンナドアリエナイ!」


そう言いながら、大振りにならないように棍棒で殴りかかってくる。

だが、オーガは然程棒術に秀でている訳ではないようで、1分後には地上に伏していた。

俺はそれも収納し、谷の向こうで待ち構えている8体のオーガの背後に転移した。



オーガジェネラル、少し弱すぎですが……


感想を頂けると、書くときのエネルギー源になります。

ぜひぜひ、いろいろお待ちしております!!

ブクマ、レビュー、評価なんかは涙が出るくらい頂けたら嬉しいです。

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