001 プロローグ
お読みくださり誠にありがとうございます。
「やってらんねえよ、たくっ……」
日本も少子化に伴いどこも人手不足になっている。
それは俺の勤める会社も同じで中堅建築会社では求人をしても人員の補充がままならない。
だから俺は設計から現場監督まで熟さなければならず、休みもこのところまともに取れていないというのが実情だ。
それにも関わらず、新人だけは常識外の辞め方をしていって、3か月の新人研修を終えたかと思えば、翌日から出社せずに退職代行とやらを通して辞めていったと部長から報告があった。
大学を卒業後、なまじっか20年も働いているので係長なんて肩書きがあるせいで、今回の退職は俺の監督不行届?とやらでマイナス査定に繋がるらしい。
まあ、いい。
明日からの土日は久々の2連休で郊外に出かけて釣りを楽しみながら1泊のキャンピングだ。
当然、お一人様。
大学時代に彼女はいたが就職したら多忙にかまけていつに間にか自然消滅。
それ以降、俺は彼女ができず現在に至る。
友人たちとキャンプに行くのも良いんだが、この年齢になると友人たちの多くは結婚をして子供もおり、そいつらに声を掛けて週末を俺と過ごさせるなんて奥さんに申し訳なくてそんな事できっこない。
荷物の準備は前日に纏めて行うようにしている。
小さな、だけど2人は入れるテント、バーベキューセット、寝袋に釣りセット、防寒具に雨具、米や肉、適当に野菜と各種缶詰と言った4食分の食料と各種調味料、それに汚れても良いように2日分の着替え、アウトドア用のナイフに懐中電灯、使い勝手の良いトイレットペーパー……そしてブランデー小瓶。
トータルで27キロもの荷物になったがリュックだけでなくキャリーカートも使うから比較的楽だ。
前もって荷物を準備して、というのもアリなんだろうけどそんな荷物を横目で見ながら会社に向かうというのができなくて前日に準備をする。
だからなんだろうけど、「キャンプしに行く」前日ってワクワクして寝られないんだよね。
人によって趣味は違うんだろうけど、俺にとってのアウトドアは魂の洗濯に近いかも知れないな。
朝の6時には家を出て電車に乗る。
目的地は北関東の渓流釣りもできるキャンプ場だ。
天気は火曜日まで崩れる事はないらしいから最高のキャンプ日和。
現地に着くまでの電車の中もそんな天気が影響してか、少し混んでいる車内も全く苦にならない。
途中乗り換え、都内から3時間もすると車内は人も疎らになり、小さな駅を降りたらキャンプ場まで徒歩だ。
そのキャンプ場はオートキャンプがなく、知る人ぞ知る穴場的なキャンプ場で、なんでも地主の爺さんが趣味でやっているというキャンプ場だ。
俺も過去に3回ほど来ており、お一人様キャンパーにとって、夜中に打ち上げ花火をするような若者が来ないキャンプ場は非常に希少な場所だ。
キャンプ場までの小径も良く整備されていて、いつ来ても気持ちの良いキャンプ場だ。
キャンプ場の管理棟は小さな宿泊施設も併設しているログハウス。
俺は最初にそこに向かいキャンプ場の利用登録を済ます。
「爺さん、いつ来ても元気だな!」
「おお、半年ぶりか。山に住んでいると山の神様に好かれるから元気になるんじゃ。淳一もきっと山の神に好かれているんじゃないか?カカカカカ……」
爺さんの大きな笑い声が室内に響く。
俺もその笑い声に釣られて一緒に笑い、
「今日も川沿いでお願いできるか?」
「おお、釣りか。放流した稚魚も大きく育って釣り頃だな。持ち帰りはできんが釣りをするなら1000円追加だ」
そんな料金でできるのも爺さんの趣味で行っているからなんだろうけど、安いよな。
「良いのか、そんなに安くて?」
「ああ、構わん。気になるんなら、ほれ、そこにアイスボックスがあるから少し多めに釣ってワシの所にも持ってきてくれ」
「分かった。それじゃあ、借りてくな」
「楽しみ待っておるぞっ!」
そんな会話を交わし、アイスボックスに氷を入れて俺はお気に入りの川沿いへと向かう。
綺麗で淀みのない川の水はそのまま飲んでも良さそうな水質だ。
そんな川縁から少し離れたところで水捌けの良さそうな場所を選んでテントを張る。
2人用のテントは荷物もテント内に入れられるので野生の動物に食料を食い荒らされる事もないので安心だ。
釣りの準備もし、川底の石をひっくり返すと川虫がいるのでそれを捕まえて石を元の位置に戻す。
これで5〜6匹捕まえたら早速釣りを開始する。
仕掛けに川虫を引っ掛けて、川に投じると妙に食い付きが良く、25センチほどのニジマスが釣れる。
2投目もすんなり釣れる。
こんなに簡単に釣れて良いのか?と思える程で、夕食と明日の朝食のために6匹、爺さんの分も6匹釣る。
魚はビニール袋に入れてから爺さんから借りたアイスボックスに自分用の魚を入れ、爺さん用にはエラからナイフを入れて背骨を切って締めておくのを忘れずに行う。
そうしないと味が落ちるからね。
「いやあ、大漁大漁♪」
鼻歌交じりにニジマスを締めていたら珍しく爺さんがやってきた。
「どうじゃ、釣れたか?」
「ああ、今、魚を届けようと思っていたところだ」
俺は既に締めたニジマスを見せた。
爺さんはそれを見て「なかなか上手いもんじゃの」と言いながら、どこからか持ってきた木串を刺していき、
「どうせじゃ、一緒に塩焼きにして食わんか?ビールも、ほれ、持ってきたぞ?」
そういうと缶ビールが8本ほど入ったビニール袋を俺の前に置いた。
なんでも、今日は俺だけの貸切のようで、爺さんも暇なんだそうだ。
俺もたまには爺さんと焚き火を囲むのも悪くないと、
「せっかくだから一緒に飲もうか!ブランデーもあるしな!」
「そうか。それじゃあ、今夜は飲み明かそうかのぉ」
早速、料理ができるように石を組んで火を起こす。
家からは焼き鳥を食べられるように既に串を打ち終わった焼き鳥が10本あるので、それに今釣ったニジマスの塩焼きを6本、飯盒で2合ほど米を炊いて2人で食べる。
焚き火に炙られて、鶏肉とニジマスの脂が焼ける匂いはお腹を刺激する。
「旨いっ!釣り堀のニジマスより格段に旨いな!」
「はははっ、そりゃあ綺麗な清水に棲みストレスのない生活をしているからじゃな!」
爺さんの言葉が心に突き刺さる。
「ストレス……か」
「なんじゃお主、ストレスまみれか?」
「ああ、そうだな。ストレスまみれ……その通りだ」
「お主は、こんな自然の中を思うままに生きていた方が良いんじゃないか?」
俺は酔っている事もあり思わず肯定した。
「そうか。それならお主が自由気ままに過ごせる場所に住まわせよう。年齢も若くして、身体も強化、自由に住めるために必要な能力も少しサービスしてやろうぞ」
爺さんが何か言っていたが、俺は眠気に抗う事ができずにそのまま眠りにつくのだった。
◇
気がつくと俺はテントに寝ていた。
枕元には爺さんからの手紙。
「オーヴァージェンへようこそ。ここは地球とは全く別の世界だ。お主が思うまま、自然の中で自然を感じ好きに生きるが良い。それが可能になるよう少しだけ身体に色々スキルをつけておいたぞ。先ずは「ステータスオープン」と唱えるんじゃ」
……なんだこりゃ?
確かに少し変わった爺さんだったが……「ステータスオープン」
俺は書いてある通りに唱えてみたら、目に前に半透明の画面が広がった。
そこには俺についての記載が細かく書かれていた。
伊藤淳一
種族 人間 → 超人類
性別 男性
年齢 42歳 → 17歳
身長 176センチ
体重 64キロ
視力 右 2.0 左 2.0
健康状態 良好
疲労度 0
精神状態 良好(若干不安)
体力 110 → 9999
魔力 0 → 9999
知力 103 → 9999
賢力 117 → 9999
攻撃力 87 → 9999
軽快さ 64 → 9999
防御力 85 → 9999
器用さ 103 → 9999
抵抗力 21 → 9999
幸運度 72 → 9999
魅了 53 → 9999
回復力 86 → 9999
スキル : 剣術、棒術、槍術、体術、弓術、魔法(全属性)、付与、転移、眷属化、従属化、収納、鑑定、隠密、結界、鍛治、錬成、錬金術、重力操作、創造、治癒、回復、裁縫、調理、農業、狩猟、建築、自動地図、索敵、全マップ探査、身体強化、漁業、洗浄、浄化、話術、交渉、スキル獲得、健康体
加護 : オーヴァージェン主神の加護
「なんだこりゃ……」
ゲームに画面のようなものにいろんなスキルが書かれていた。
そして、画面の横には「説明」というボタンがあり、それぞれの説明が書かれておりそれをざっと読む。
「うーん、チートって言えばチートか。ただ、これだけの能力があればここで住むには自由に生きられるか」
一通りの確認を終えた俺はテントを出た。
すると、そこは爺さんと夕食を食べた川沿いではなかった。
テントを中心に何故だか半径10メートルほど空き地になっておりそれ以外は鬱蒼とした森になっていた。
「うわぁ……「地図」を見るか」
すると自分のステータスは画面の左端に移動し画面に地図が広がる。
自分の位置を中心に半径1キロほどの地図だ。
川は300メートルほど西に流れている。
「食料は……「全マップ探査」で獲物を……を、結構いるな」
俺は創造を使って弓と矢を創り、それを持って一番近くにいるウサギっぽい動物のそばに行く。
「隠密」を使う事でウサギは全く俺に気がつく事なく草を食べていた。
弓を構え、「弓術」を使用して矢を射ると矢は真っ直ぐウサギに向かい命中した。
「おー、初めて矢を射ったのにすごいな。これがスキルなんだろうな。で、これを解体するには……「収納」か」
するとウサギは消えて、アイテムボックスに
ホーンラビット × 1
となっていた。
すると画面には、
『解体しますか? YES / NO』
と表示され、俺はそのまま「YES」を選択した。
表示は、
ホーンラビット × 1
が
・ホーンラビットの肉 × 2キロ
・ホーンラビットの角 × 1
・ホーンラビットの毛皮 × 1
・魔石極小 ×1
・討伐部位 ホーンラビットの鼻 × 1
に変わった。
「これって複製できたりしないよな?」
そんな事を呟くと、
『スキル「複製」を獲得しました。何を複製しますか?』
こんな表示が出てきたのでホーンラビットの肉を5倍に複製することにしたら、
ホーンラビットに肉 × 10キロ
となっていた。
俺のオーヴァージェンでの生活はこんな感じで始まる事になった。
※ スキルの変化
スキル : 剣術、棒術、槍術、体術、弓術、魔法(全属性)、付与、転移、眷属化、従属化、収納、鑑定、隠密、結界、鍛治、錬成、錬金術、重力操作、創造、治癒、回復、裁縫、調理、農業、狩猟、建築、自動地図、索敵、全マップ探査、身体強化、漁業、洗浄、浄化、話術、交渉、スキル獲得、健康体、複製(NEW)
加護 : オーヴァージェン主神の加護
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