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エピローグ ~10月24日~
今日は残業を少しだけ早く切り上げ、遠回りをして渋谷で電車を降りた。
初めてここを訪れた時まだ25歳だった青年は今年で37歳のおじさんになった。
十二年前、愛する女性の誕生日を祝うために都内を歩き回ってようやく見つけた小さなケーキ屋は、今では名前を出せば誰もが知っている人気店になった。
『カランカラン』
「いらっしゃいませ」
少し古くなったドアを開けると、ショーケースの中の十二年間変わらぬ場所にそのケーキは並べられている。
「あっ、このモンブランを、三つください」
薔薇の絵の入った箱を大事に抱えて家路を急ぐ。
Fin.




