沖田総司篇
薬の匂い、天井の染み、庭で眠る黒猫、近所の子供の声、毎日何も変わらない。
あの頃は、毎日が命懸けて戦っていた。
歩けば誰かに狙われるそんなん日々、今は布団の中で死ぬのを待つ日々。
誰も僕が【労咳】になるなど思ってもいなかっただろう。
「布団の中で死ぬなんてごめんだね」昔平助くんと一くんにそう言ったことを思い出した。
平助くんは、油小路で戦って死んだ。
一くんは、今もどこかで戦っている。
なのに僕は、新選組から離れ1人安全な場所に居る。
「僕は何をしてるんだ。皆の所に、近藤さんの所に行かなくちゃいけないんだ」
と呟いた時、庭の方から
「やくたたずだから置いていかれたんだ。」
庭の方を見ると、黒猫が僕の方を見ていた。
「僕はやくたたずなんかじゃない。僕は…僕はまだ戦える!」
いつの間にか僕は刀を持って黒猫に斬りかかっていた。
その後、どうなったのかは覚えていない、気づいたらいつもの景色の中に居た。
だがその景色の中に、黒猫は居なかった。
それから一月たった夏の暑い日、夢をみたあの日僕が置いて行かれる時の。
「総司ちゃんと先生の言うこと聞いて療養するんだぞ!」
「分かってますよ近藤さん」
「行って参る。」
と言った近藤さんの声は震えていた気がした。
後ろに居た土方さんはそのまま何も言わずに行ってしまうのか…
「総司。さっさと治して追いついてこい。」
そう言って土方さんは出て行ってしまった。
「言われなくても、追いついてみせますから」
「そうだ、僕は追いつかなくちゃいけないんだ。近藤さんの役にたつため、土方さんとの約束を守るため、そして新選組としてまた戦うために。」
「待っていてください、僕は…っ僕は追いついて…みせます…から」
1868年7月19日沖田総司は、そう言い残して新選組の元へ旅立って行った。




