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澤村愛はめんどくさい

記憶

作者: 末摘花

  きっともう戻れないのだと思う。そう思い始めたら本当にもう戻れない。

  私には未来しかないのに、決して戻れはしない過去ばかりに縋っている。何度も何度も記憶を再生して、何度も何度も同じことを考えて、或いは絶望をした。私は馬鹿なんだと愚弄しなければ、生きていけないくらいに海底に沈んだ。

  海の底は静かだよと、伝えた人がいる。けど声は音にならず、ただあぶくとなって水面に昇っていく。薄情だなとそれを眺めていた私は、対照的にどんどん沈んでいく。海の底は静かです。だからここには来ないで、明るい陸に居てください。馬鹿な私を棄ててください。

  父が振り返らなかったのを知っている。私はその背中を見ていたから。長く伸びた影を、ぼんやりとずっと眺めていた。振り返ってほしいとは、たぶん、たぶんだけど考えてなくて、あぁ置いていくのかと距離が開いていく。足についた重りのせいで陸に上がれない。水面から見た陸の景色は、あまりにもきれいだった。


「なんて、」


  7回燃やされて、七竈の花のように上質な灰になろうか。使われることもなく、海に散ってしまおうか。無駄に考えて渦巻き始める頭の中を、誰も分からないから自分を偽っていられる。相手にとって都合の良い人間を演じていられる。

  こんな生き方しかできないのだと気付いたのはいつだったのか、覚えているはずもない。

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