第9話-覚悟-
しかし、廊下で戦うとなると、狭すぎる。避けるのが難しい。
そんなことを考える時間もなく会長エイリアンの太い腕から攻撃が飛んでくる。
「先輩!危ない!」
そう言われたとき目の前に半透明の壁ができる。
この能力は萌ちゃんのだ。
会長はこちらに攻撃ができないと思ったのか、壁を壊し校庭に行く。
それを追うように千花が廊下に壁を開けて校庭に出る。みんながその後に続く。
まゆちゃんは攻撃の能力を持っていないので後方に控えている。
残念だが、僕も戦闘には参加できない。
田中が終焉の刃を打つとき萌ちゃんが障壁で逃げ場をなくす。
だが、会長はびくともしない。
「なにっ…効かないだと…これは我の力不足だということか…?フフフフフフ……面白いではないか!私利私欲の為汚らわしい悪魔と成り果てた我らの隊長との真剣勝負!フフフフ…果たして貴様はどれだけ耐えれるかな?」
田中がいつものように叫ぶと…
田中が10人になっていた。
『喰らえ!全てを切り裂け!正義の刃よ!』
10倍うるさい。
しかし会長はびくともしない。
その時会長が強く光る。
眩しくて目を開けられない。
目を開けると会長がどこかに消えていた。
そして、何もないはずの空間から炎が連続で飛び出す。
咄嗟に萌ちゃんが反応し、障壁を作る。
いつのまにか後ろに回り込まれて、水が作られていく。
その水が氷の刃になりこちらに飛んでくる。
「これは…みんなの能力……!」
「じゃあ、元会長の姿が見えないのって…」
「波多野先輩の能力でしょうか?」
どこからともかなく氷の刃や火球が飛んでくる。
「くっ……キリがない…」
次の火球が飛んできたと思った時、千花が走り出し、火球が出現したあたりを思いっきり殴った。
鋭い音がし、あたりに砂埃が舞った。
「手応えは……あり。」
会長は姿をあらわしたが、全くの無傷だ。
一応知能はあるのか、会長にとっては厄介な障壁を使える萌ちゃんに集中攻撃する。
千花が攻撃を相殺したり、障壁で守ったりもしたが、やはり限界が来る。
萌ちゃんの右脇腹に会長の鋭い爪が突き刺さる。
「あ………れ…………?痛………いよ…?」
「千花!会長をひきつけて!」
「わかった!治癒するんだね!なるべくひきつけてみるよ!」
そう言われたものの、僕自身に治癒の能力なんて存在しない。
ただ、傷口の時間を巻きもどすことはできる。
巻きもどすと言っても止まった心臓を再び動かすことはできない。
だから死者を蘇らせることはできなかった。
「治癒…完了。」
「シュガー…治癒頼める?」
萌ちゃんが戦線復帰すると入れ違いで左腕が普通ありえない方向に曲がった千花がやってきた。
「あいつ…時間をかけるほど力が強くなってる…」
そういえば田中のうるさい声が聞こえない。
千花の治癒を迅速に済ませ、田中を探す。
田中は学園の影に身を潜めていた。
両腕両足がボロボロになっていた。
「なんだ、佐藤か…なに、案ずるな。ちょっとしたかすり傷だ。暫く安静にしてれば治る…。」
そういうのは流石に無理がある。
だって全身血まみれで声にも力がない。
いそいで田中を治癒しようとすると、
「俺の…ことは…放っておけ……それより…みんなの護衛に……回ってくれ……俺はもう……手遅れかもしれない………………佐藤がそこにいるのも……もう見えないのだ……」
田中はそう言うとピクリとも動かなくなった。
また、仲間を失ってしまった。
もう悲しみの感覚が麻痺してしまったのかもしれない。
そう思うと自分が嫌になってくる。
後残ってるのは僕、千花、萌ちゃん、まゆちゃんの4人。
戦力になるのは2人。
このままではみんな失ってしまう。
それだけは嫌だ。
だが、時間を巻き戻しても同じ運命を延々と見ることになるだろう。
何度も、何度も仲間を失ってしまうかもしれない。
なら、自分を犠牲にしてでもみんなを助けたい。
ボクノ本当の2つめの能力…………それは圧縮爆発。空気を圧縮し、一気に解き放つ事で大きな爆発を起こせる。
だが、可能な最大規模で行うと自らの体までもを爆発してしまう。
つまり、死である。
そんなことはもう関係ない。
自分はどうなってもいいからみんなを助けると心に誓ったのだ。
田中の元を離れ走って会長の元へ行く。
「シュガー!?危ないよ!離れて!」
千花の静止も無視して会長へと走る。
目測であと100M……50M……
そんなことを考えていると、会長から自分に向かって何かが飛んでくる。
言葉にできないような音をたて、その なにか はシュガーの体を貫いた。
「つか………ま……えた…………」
その なにか を思いっきり掴み、会長を巻き添えに自爆する。
「最大規模爆発………!!」
一瞬爆発音が聞こえたと思ったとき意識は遠い遠いどこかへと消えていった。




