第7話-魔力-(千花視点)
-5月7日-
千花はいつも通りの時間に起きた。
いつも通りか…まるでこの惨状に慣れてしまったみたいでなんか嫌だ。
飛行型の異型が現れてから一夜経過したわけだが、普通の異型以外今は出現していない。
とのことだ。
手探りで周りを探る。
……髪ゴムがない。
3年前の誕生日の時シュガーから貰った宝物だ。
ぼやけた目で鏡の前に行きコンタクトをつける。
千花がコンタクトだということはシュガーにも話していない。
布団に戻ると枕元に髪ゴムが置いてあった。
それにしても随分と人数がすくなくなってしまった……
昨日の会議でまだ自己紹介をしていない(忘れていた)人達と自己紹介したり生存メンバーの確認などをした。
生存メンバーは12人。
最初の半分くらいだ。
まずは自分。
八乙女千花。
能力が怪力となにか。
そしてシュガー。
能力が治癒と時間旅行(会長命名)。
会長。
能力が物質操作となにか。
副会長。
能力が時間遅延と幻惑。
幻惑というのは蜃気楼を見せるような感じらしい。
そしてまゆちゃん(麻生麻由里)。
能力が生命探知と意識送信。
雫先輩。
能力が酸素爆発となにか。
萌ちゃん(加藤萌)も生きていた。
能力が障壁となにか。
障壁は半透明の壁を作れるらしい。見た感じは曇りガラスに似てるって言っていた。
田中も生きている。
能力が終焉の刃(田中命名)となにか。
新井先輩も生きている。
本名は新井直人というんだって。
能力が水操作(水生成の工藤さんがいないと死にスキル)となにか。
後の3人が初めて会う。
まず、谷中 姫。
2年3組で違うクラスだが(悪い意味で)噂でよく聞く。
能力が服従と麻痺。
服従は命令した相手の行動の自由を奪えるらしい。怖っ…
麻痺はその名の通り相手を麻痺させれる。
そして西園寺 冥。
副会長の妹らしい。
1年3組のクラス委員長?みたいななにか。
能力が閃光となにか。
閃光は物凄い光を発し、目を眩ませる。もちろん味方も眩しいので使いどころの難しい能力……らしい。
最後が波多野 王。
王と書いてキングと読むらしい。
プチキラキラネーム。
2年2組らしいが初めて見る顔だ。
登校拒否かなにかかな?
能力が透明化と測定。
透明化は自分の姿を一時的に見えなくするらしい。
測定は……
あっそうだ。今日測定について詳しく教えて貰うんだった。
ふと、横を見る。シュガーがいない。
先に行ったのかな?と思い体育館から出る。
そこにはシュガーがうつ伏せで倒れていた。
「シュガー!大丈夫!?」
「ん……千花……?僕は…大丈夫だよ…」
しかしどう観ても大丈夫そうではない。
とりあえずシュガーを体育館まで運び寝かせた。
シュガーには治癒の能力があるし大丈夫だろう。
みんなが集まる会議室に向かった。
会議室の前に来たとき背後から声をかけられた。
「先輩♪」
後ろを振り返るとまゆちゃんがいた。
「集合場所、3年1組の教室に変わりましたよ。」
そうだったのか。だけど、なんで急に場所が変ったんだ?
別にどこにいても同じな気がする。
「同じなら、別にどこでもいいじゃないですか?」
「えっ?」
「えっ?」
「先輩、声にでてましたよ?」
そうだったのか……気をつけないと。
とりあえず3年1組の教室に向かった。
そこで待っていたのは波多野、会長、萌ちゃんの3人だった。
「やっときたか八乙女。35分の遅刻だぞ。」
まてまてまてまてーぃ!
え?集合時間なんて決めてないよね?
んー……忘れただけで集合時間決めていた?
「えっ…と…ご、ごめんなさい!」
こういうときは余計なことは考えずに謝る方がいい。
「ははは。冗談だ。」
「ところで、佐藤を見たか?」
「えっと…校庭で倒れていたので体育館で安静に寝させてます。」
「わかった。では、波多野。測定とやらを聞かせて貰おうか。」
「らじゃ。えっとな、測定っていうのは……って説明するよりまず能力について説明したほうがいいかな。」
能力の説明?今わかっている事の他になにかわかったのかな?
「まず、お前らは普通に能力をつかっているが、ノーリスクで使えてると思ってるのか?
お前らの体内には不思議な力が存在する。それをゲーム風に言い直すなら『魔力』だ。
お前らが能力を使うときこの魔力を消費する。
だが、ゲームみたいに魔力0でも回復などは出来ない。寝たり休憩したりすると回復するが回復量は0に等しい。
そして、お前らは気づいているかは知らないが、今この町には邪悪な魔力が充満している。
お前らが今生きていられるのは体内の魔力のおかげだ。
つまり、お前らが魔力を使い果たすとそこに待つのは『死』ただそれだけだ。
わかったな?」
なるほど。魔力が尽きると死んでしまうのか。
もしかしてシュガーが倒れたのは魔力が少ないから?
だとしたら大変だ。
シュガーの時間旅行はすごい量の魔力を消費するのかも知れない。
教えてあげよう。
千花達が波多野の情報によっていろいろな考えを起こす中、暗い会議室で怪しく笑う一人の生徒がいた。
「ハハハ………計画第二段階…………完了。」