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5.街道にて1

お久しぶりです。やっとリアルの方が落ち着いたので、これからしっかり投稿していこうと思います!

 アイリス先生の魔法で森が更地となった事件から1ヶ月が過ぎ、平穏な日常が戻ってきた。この事件は結局、自然災害という形で国へと報告されたらしい。

 森上空に巨大な積乱雲を目撃したと、村人が証言したとかなんとか……


 そんなことより、”なぜ巨大積乱雲が発生したか”が問題だと俺は思うが、理由は誰にも見当はつくまい。


 それから数日後には、村中での警戒態勢は解かれ、両親は仕事に出かけるようになった。

 気絶ギリギリまでマナを活性化させ、自身の強化をする平穏な日々を過ごしていた。ちなみに時々気絶することで、両親にしっかりと病弱アピールも忘れてない。


 ――とある昼下がりに、ふと俺はアイリス先生にもらった【魔法袋アイテムボックス】のことを思い出した。

 中身と容量の確認をするため、両親の目を盗んで初めてこの世界で目にした小川のある森に来ていた。水辺には野花咲き、キラキラと水面に太陽光が反射している。


 しかし両親には、俺の不審な行動は未だに気づかれてないようだ。

 我ながら上手く隠せていると思う。


「ここまでくれば誰にも見られないだろ」


 念のため【探知】で周囲の様子を探ったが、人の気配は感じられなかった。

魔法袋アイテムボックス】の中を確認すると辞書のような書物が数冊入っており、薬草、生物、魔物、地理、生活魔術、初級魔術、中級魔術、上級魔術の書物と貴重なものばかりだった。

 この世界での書物は、製紙技術も活版技術も未発展なためか、かなり高価で貴族や大商人くらいの富豪層にしか手にする機会はあまりない。

 ちなみに村に訪れた商人の売り物の値段を確認した時には、辞書ほど分厚くない本でさえ、金貨一枚だったのだ。金貨一枚を日本円に直すと10万円程の価値が有る。もちろん現代日本の方が物価は高い為、正確に換算するならば50万円はするだろう。


「マジかよ……アイリス先生……」


 中身の書物に驚きつつも、両親に気づかれずに魔術を上達することができる喜びに、俺は武者震いをした。

 ふぅ、これは勉強して早く先生に追い付けということだな? 期待に応えるためにも頑張るしかねぇな。


 容量を確認するために、【魔法袋アイテムボックス】を川に沈め、川の水を容量いっぱいになるまで、入れることにした。


 ……10分後。


 ……20分後。


 ダメだ、埓があかないや。とりあえずたくさん入るってことが分かれば十分だ。

 その後、俺は火と水の複合魔術で熱湯を入れ、【魔法袋アイテムボックス】内の時間の経過を確認することにした。

 それから3日後。

 結果は熱湯のままだったので、どうやらこの【魔法袋アイテムボックス】内では時間経過が”ない”もしくは”非常に遅い”らしい。

 時空魔法が付与されているのか? そう考えたが、考えても答えは出ないのですぐにやめる。


「ふぅ……とんでもないものもらったな。これは秘密にしとかないと、盗まれたら大変だな」


 中身を取り出される心配は、所有者の権限を誰かに譲渡しない限り大丈夫らしいが……


 ということで今後の方針は、アイリス先生からもらった書物で訓練を怠らず、しっかりやろう。それと、薬草学など基本的なことを勉強していこいう。俺はこの世界のことにはかなり疎いようだからな。


 そう心に決め、俺は自宅への帰路に着いた。


 ◇ ◆


 青い空、白い雲! 

 見渡す限りに広がる新芽の芽吹く草原を、かっぽかっぽと軽快なリズムで馬車が進んでゆく。

 俺はというと荷台の上で、新しい土地を肌身で感じているところだった。


「はぁ~ぅ」


 暖かな春の陽気があくびを誘う。道中に出てくるのは小型の魔物【一角うさぎ】ばかりで、緊張感なんてものはない。俺の荷台に近づく【一角うさぎ】は滅多にいない。野生の勘か、遠くでこちらの様子伺うか、背を向けて逃げていってしまうのだ。

 仮に襲ってこようとも、父さんもしくは母さんが一瞬で駆除してしまう。

 それもそのはず、【一角うさぎ】は額に鋭い角を持っているのが最大の特徴で、単純な突進攻撃しかしてこない。そのため初心者冒険者でも気をつけて戦えば、一人でも狩ることのできる魔物だ。

 両親ほどの熟練冒険者にかかれば、言うまでもない。


「リリー、今日の昼はうさぎ鍋にしよう」


「そうね、そろそろお昼かしらね」


 リリーはこの世界での俺の母親だ。茶髪にエメラルドのような眼、彫りが深い顔立ちをしていて、かなり美人だと思う。実際、俺が暮らしている村の女性でも、このレベルの美人はなかなかに見たことがない。さらに加えて、料理上手で凄腕の魔術師だ。得意魔術は土属性でよく家の庭先で魔術の鍛錬を行っている。


【一角うさぎ】の血抜きをしながら荷台に戻ってくるのが、父親のガリウス。筋骨隆々な体躯で大型の剣を振り回す姿がお似合いだ。


 ちなみに俺は両親のユニーク魔法を知らない。俺のユニーク魔法は両親のどちらかを受け継ぐはずだと、アイリス先生に聞いているため、どんなユニーク魔法か結構楽しみだ。


「ウィル、お鍋にお湯を沸かしてスープを作ってくれない? 母さんはうさぎを捌いて、野菜をカットするから」


「ほいさ!」


 荷台から四人用の鍋を取り出し、薪の上に器用に設置する。生活魔術で水を半分ほど入れ、薪に火をつけると、藁に引火したオレンジの炎が、乾燥した薪に着火しパチパチと薪が燃える音が聞こえる。


「よし、次は鍋のスープ作りだな」


 荷台からこの世界で醤油の代わりに使われている、ソーユという調味料を鍋の中に入れ、味見をする。これに【一角うさぎ】と野菜のダシが出れば十分おいしいだろう。


「かあさん、ウサギ肉と野菜入れてもいいよー!」


「はーい」


 母さんは手際よくウサギを捌き、食べやすい一口サイズにカットし、野菜と一緒に持ってきた。グツグツ滾っている熱湯の入った鍋の中に具材をドバドバと投入し蓋をする。あとは具材が煮えたら完成だ!

 いい匂いのする鍋を、まだかまだかと見ていると、母さんに声をかけられた。


「ウィル、少しそこから離れてちょうだい?」


「? お、おう」


 焚き火の横で屈んでいた俺は、母さんに声をかけられその場を退く。母さんが俺が離れたのを確認すると、母さんの体を青白い淡い光が包み込む。母さんの【オド】が活性化している様子だ。


(えっ? 母さんこんな所で何するつもりだ!?)


「【アースメイク】デスク、チェア、カップ」


 母さんがそう唱えると、何もなかった場所に石でできた机と椅子、ティーカップが御者さんの数を含めて6つ出現する。

 地面が盛り上がりグネグネと形を変え、机や椅子になったのだ。

 こんな土魔術、俺の知識にはもちろんアイリス先生にもらった魔術書には載っていなかった。

 つまり……


 ――これは母さんのユニーク魔法!?


「母さん、いまのって……」


 自分の脳内に浮かんだ一つの仮説を母さんに聞こうとしたら、先に母さんが答えてくれた。


「ウィルに見せたのはこれが初めてだっけ? ウィルの想像通り、私のユニーク魔法【造形魔法・土】。この魔法は土や岩などの物質を、思いのまま変形する魔法よ。あなたももしかしたら母さんのユニーク魔法を受け継いでいるかもね」


(マジかよ、すげえな……)


 初めて見たユニーク魔法に驚いていると、お腹から「ぐぅ~」とお腹から気の抜けた音が鳴った。


「ふふっ。お腹もすいたし、ご飯にしましょう? ウィルは父さんを呼んできてくれる?」


「お、おう」


 父さんを呼びに先頭の荷台まで行くと、父さんは武器の手入れをしているところだった。【一角うさぎ】を切断した際の血や脂肪分が大剣に付着したのだろう。

 俺は地面に腰をかけて、手入れしている父さんに話しかけようとしたところで、父さんが街道の前方をバッと素早く振り向く。

 それに釣られ、俺も前方を向いたところで……


 ――キンッ、っと響く金属音。


「っ父さん!」


「ああ、わかってる。リリー、荷台を見張っていてくれ! ウィルは俺と来い!」


「ええ、もちろん! ガリウス、ウィル、くれぐれも油断しないこと!」


 荷台から飛び降りた俺は、身体強化魔術を唱え父さんの横を駆ける。時速40キロ程に加速すると、周りの景色は飛ぶように移り変わる。

 次第に見えてくる金属音の発生源。

 足を止めず、俺はそのまま視力強化をかけた。


 俺の双眸に拡大され映ったのは2メートルほどの茶色い毛皮に覆われた巨躯の魔物が、金属の槍を振りかざし、商隊の護衛らしき冒険者と剣をぶつけ合っているところだった。

 俺と父さんはさらに加速し、魔物の正体が分かる位置にまで近づく。

 あの魔物は……


 ――【オーク】


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