第六章 紫の玉 彼の生死
今宵、観客側に居るはずの朝日が、影滝の生死を持っている。
・・・・危うし・・・・
「今の影滝には、神としての技が使えない。 だから剣技でしのぐしかない。」
私は、そう考えると、兎と狼が戦ってるように見えてきた。
影滝さんが兎。
思わず、手を強く握り締めた。
影滝さんが、急に咳き込み吐血した。
私は、気付いて、手を緩めた。
木甲さんが、私の頭を思いっきり叩いた。
「手を緩める前に、玉を見ろ。」
木甲さんが、もの凄く怖くなっていて、私はびくびくしながら確かめた。
玉には、罅が入っていた。
「皹が入るくらいで、こうなってしまう。 大袈裟だと思うが真実を言うと、影滝の生死は、玉の扱いと、剣技にかかっている。 つまり、影滝の魂は、今、朝日の手の平の上ってことだ。」
私は唾を飲んだ。
影滝さんは、私に命を預けたのと同じ。
そう思うと、私の膝が笑い始め、地べたに座り込んだ。
影滝さんは、刀を振り回し、相手の胸に傷を残し、他の相手に向かって行った。
影滝さんは、死闘を繰り広げた。
・・・・10分後・・・・
私は、あまりに凄いせいか、影滝さんが一時期崖っぷちに立ったせいか、10分間すっかり忘れてしまっていた。
影滝さんは、私のせいで負った傷以外は、見事に当たっていなかった。(朝日は、影滝にもっとダメージを与えていた)
「死ぬかと思った。」
「こっちは死んじゃうかと思った。」
影滝さんと木甲さんの会話には、温かみがあった。
「さっきの状況、目に焼き付けておいて。 ある意味・・・・」
私は、耳を疑うような事を聞く・・・・
「助かった。 ありがとう。」
影滝さんは、微笑んで頭を優しく撫でた。
私は、一瞬戸惑った。
体力的にも疲れたのか、その後、私の身体に倒れこんだ。
影滝さんは、小さな寝息を立てていた。
影滝のそばに居る朝日に、木甲が、彼の秘密を明かす。
次回をお楽しみに~