第二章 彼の名前 私の名前
朝日は色んなことを聞くが、思いはファッションの事ばかり・・・・
この時から、朝日の運命は狂い始める。
「何言ってるんだ? 魚に対応もどうもないだろう?」
「えっと・・・・ 単刀直入に言う! 人が沈んでるの!」
父は、少し硬直したが、飛び込んでその人を担ぎ出した。
私は、正直感心した。
初の漁は、少し驚きのある漁になった。
その人の体温は、異常だった。
普通の人とは思えない体温だった。
父の言う所によると、
「あんな冷たい海に何時間も浸かっていたんだ。 高くない方がおかしい。」
とのことだった。
丁髷じゃない所を見ると、流れ者だと思う。
あと、男性で、父より美形で(少し失礼だけど)、私の拾った布と服があっていた。
袖の所が、少し歪んでいるが、四角く取れていた。
私は、良かった。 まだ使ってなくて。と思った。
家に帰って、12畳の部屋にあの人を寝かせた。
あの人が動いたので、看病の途中で居眠りしていた私は起きた。
あの人は、上半身を起こして、こちらを見ていた。
「起きた? 私、朝日。 貴方は?」
「・・・・影滝。」
表情は、柔らかく、温厚だった。
ただ、無口な方だった。
目も青色で、体中青だらけだった。
正直言って、髪を切った方がいいと思った。
「どっから来たの? もしかして都? それとも流れ者? 何で沈んでたの?」
「そんないっぺんに質問しても分からんだろうよ。」
父が、質問を止めた。
案の定、影滝さんはオロオロしていた。
「我とは、真逆だな。」
影滝さんは、呟いた。
確かに、私と影滝さんは色々違う。
私は、怒りっぽいし、喋り方速いし、何しろ漁師の娘だし。
影滝さんは、温厚で、無口で、武士で・・・・
何より違うのは、名前。
朝日と影滝・・・・
まるで光と影みたい。なんて思いながら樹桶(木製の桶)に入っていた水を入れ替えに行った。
次、部屋に入った時には、影滝さんは、後ろに結んでいた髪の束を残して消えていた。
朝日は、この後どうするのか・・・・
次回、朝日の行動にご注目!