お互いの想い
第6話です。
※話数番号を変更しました。
「……」
目が覚めて、眼前のベッドに姫が眠っているという状況が始まってからすでに二週間ぐらいが経ったけど、やっぱりまだ慣れない…。
なんでこうなっているかというと従事する初日にさかのぼる。
「い、今、なんて」
「だから、これからはこの部屋で寝食をともにしようと思っていますの」
「いや、寝るときもともにすることはもちろんのことです。そのほうがもしものときもすぐに対応できますから。ただ、僕が言いたいのはそこではなくて、なぜ身支度までもが入っているのかということです」
「え? 専属ですもの、当たり前でしょ」
何故か不思議そうな顔をする姫。
「いえ、専属ってそういう意味では…」
「そうですの? でも、いいじゃない。わたくしがそうしたいと思ったんですもの。あ、でも、さすがに恥ずかしいからベッドは別だから」
「当たり前です」
というわけで、僕は姫と同じ部屋で過ごすこととなった。
「…おはよう…ルーア」
ベッドにしていたソファを元に戻していると姫が少し眠そうな目をこすりながらやってくる。
「おはようございます」
僕は微笑みながら挨拶する。
「……」
寝ぼけているのか少しぼんやりとしたような目をする姫。
「どうしました?」
「…ルーア、やっぱりベッドで寝たほうがいいのではなくて?」
「いや、別に大丈夫ですよ。それに、恥ずかしいんですよね?」
「そ、それは…、恥ずかしいっていうか、間違いが起きたら大変っていうか、そういうのはまだ早いですし」と早口で小声で言ったのち「ルーアのためだったら我慢しますもの」
「…。姫の心を傷つけていたのなら申し訳ありません。ですが、我慢するということはその分何かを押しつぶすことになります。僕はそんなことを貴女にしてほしいとは思っていません。むしろ、してほしくない」
「でも、ずっとソファじゃ」
「大丈夫ですよ。それに、あまりフカフカの布団だと落ち着かないので」
「…そう、なの?」
「はい。騎士系の貴族なんてそんなものですよ」
僕はそううそぶく。こうでも言わないと姫は引かないから。
「…でも、無理はしないでね」
「えぇ、もちろんです。それより、まもなく朝食が来るはずです。その前に着替えを済ませましょう」
僕がそう言うと姫は「お願い」とにっこり笑いながら答えた。
作:葉月希与