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エメリ姫
第三話です。
「皇女様、本当によろしいのですか?」
その日の朝、着付けをさせているメイドの一人が、髪を結いながら問いかけてきた。
「もちろんですわ。あの子がどこまで解っているかは知りませんけど、わたくしはそのつもりですわ」
「お言葉ではありますけど、あの方はこのようなことへの経験は皆無と思われます。メイド長としてそのような方にお任せするというのは…」
「問題ありませんわよ。わたくしがこうしてほしいだの、ああしてほしいだのと教えれば済むことですもの」
「陛下はご存知なのですか?」
「知りませんわ。だから、これから伺うついでに言うつもりです」
「…はぁ、まったく皇女様らしいですね。もし何か困り事がありましたらいつでもお呼びください。いつでもすぐに駆けつけますので」
「えぇ、ありがとう」
「勿体無きお言葉です」
そう言うと彼女は、髪から手を離し、扉の手前でこちらに深く一礼してから部屋を出て行った。
作:葉月希与