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依頼とクレタ平原

「なんだよ、俺がいるって。第一お前がやってるギルドの依頼って情報収集がメインだろ。俺なんかどう考えても役にたたんだろうが」


シロウは不満そうな様子だった。



シロウは戦士であり、チームで果たす役割は主攻やらタンクがほとんどだった。

一方で、ソウタは盗賊であり、チームで果たす役割は索敵や罠の処理、主攻の補助がほとんどだった。

ソウタは特に索敵を含む情報収集を得意としており、今回のギルド依頼もその関係だと容易に想像できる。

そうすると、索敵などやったこともないし、シロウは図体もでかく、ソウタと比べてスピードが段違いで遅いのでどう考えても役立たずでしかないのである。




「いや、今回のはあくまで様子見て来いって程度の依頼なんだよね。だから、その場所の周辺で適当に魔物でも狩っていつもと変わった様子はないか確認するぐらいなんだ」


「なんか、ギルドの依頼ってずいぶん大雑把なんだな。

 で、それで一人で狩場行くのは面倒くさいからどうせ暇な俺に付き合えということね」



シロウの言葉を聞いて、そうそうと言った様子で肩をバンバン叩いてにこにこ笑った。

そんなソウタの様子を見て、こいつには何を言っても無駄だなと思い、悔しいがこいつの言うとおりどうせ暇だし久しぶりに一緒に狩場に行こうと決めた。



「俺とソウタの二人で行くんだろ?

 治癒者ヒーラーも魔導士もいないしそんな難しい狩場なんていけないと思うぞ?」


「あ~、それなら大丈夫よん。シロウがここ三年間で行きなれたクレタ平原だからさ。まあ細かい話は向かいながら話すことにするよ」



そういうと颯太は立ち上がり、さっさと行こうとシロウをせかした。

まあクレタ平原ならここからそう遠くもないし、いつも自分がソロで使う狩場なので二人でもまず問題はないだろうとわかったので細かいことはこいつにいっても仕方ないし早速向かうことにした。



あまり乗り気ではないように見えるが、三年ぶりに気心知れていた人間と仕事に向かえるのだシロウは心が躍らないわけがなかった。






オドバルからクレタ平原までは馬を借りて向かった。

クレタ平原までは何もなければ馬で1時間程度でつくのでシロウはときどき狩場として使っていた。

馬は魔物と戦っているときは邪魔になるので、平原近くの農村で預かってもらうようにしていた。



「で、細かい話になるんだけど今回の依頼はどんな内容なん?」



シロウは道中馬に揺られながら今回の依頼の細かい内容を聞いていた。

ギルド専属への依頼の詳しい内容なんて知らないし別に普段なら興味もない、いや少しは興味あるけどさ。


まあそれはおいといてさっきのソウタの話ではあまりにも大雑把しすぎてこれからなにをすればいいかわからなかったからである。



「うーん、なんかクレタ平原に向った人が何人帰ってきてないらしいんだよね。

 シロウも知ってる通り実力がある人はソロでもいけるし、そんな頻繁にチームごともどってこないなんて今までなかったからさ。まあ思い過ごしだと思うけどさ」



「チームごと壊滅だと?

 まあ、相手は魔物だし絶対は確かにないけど、それでもそんなに頻発するのはなんか気味が悪いな」



シロウとソウタの言うとおり、クレタ平原は近くに村もあるし、ソロで来れるくらいの狩場である。

もちろんいままでこういうことが全く起きていないなどということはないが、それなりに経験をつんだチームであればまず無事に帰ってこれるし、運が悪かったとしても全滅なんてことはまずないはずなのだ。



それにも関わらずチームごと壊滅が頻発している・・・・

ソウタは心配ないよといった様子であるが、

シロウ話を聞き何とも言えないような嫌な予感がした。

なにも起きないといいがなぁと思い強く手綱を握りしめた。




「まあ、そんな感じで一応念のためってことでリリィさんから頼りになるこの俺に依頼が来たわけさ」



「リリィさんも大変だな。でも、これでなんか起きちゃったらもっと面倒なことになるかもしれないし、暇そうなソウタに頼むのが一番かもな」



なんやら威張っていたソウタはシロウの言葉を聞いてガクッと崩れ、一番暇そうはないだろ意外と忙しいんだぞと疲れた素振りをみせ笑いをさそった。


昔の話やここ三年間の話をしていたら一時間なんてわりとあっというまだった。

シロウがいつものように一人で向かう狩場への道のりとたいして変わらないはずなのに、今日の道のりは時計が壊れたかのようにあっというまに過ぎ去っていった。




「ディム爺さん、今日は俺とこいつの馬あずかってくれ」


シロウはクレタ平原に来るときはいつもディム爺さんという人に馬を預けている。

特段の意味はないが、嫌な顔一つせず預かってくれるし、自分を孫のように扱ってくれるので気軽に使わせてもらっていた。


「おぅ、シロウか・・・ほほ、今日は珍しく連れがおるんじゃな」



そんなことを言うディム爺を見て、ソウタはやっぱりいつも一人なんだとにやにやしながらこっちを見て、慰めるようにポンポンと肩をたたいた。

事実だし仕方ないがなんだかむかついたのでソウタの頭を強めに叩いから馬を預けて狩場に向った。





クレタ平原は周りを山や森に囲まれた平地で、視界が開けていて足場も悪くない。

これは狩場としては非常にやりやすい環境である。



狩場の環境はそこに生息する魔物と同じくらい重要な条件である。

魔物が同じでも、戦う環境が違えば難易度はガラッと変わってくる。


このような平原であれば、魔物が現れればすぐに気付き対応できるが森ではどうだろうか?

不意に遭遇して準備ができていなければ手痛い傷を負うことになるだろう。


平地では戦いやすく自分の力を発揮できるかもしれないが、足場が悪い場所ではどうだろうか?

なんの対策もなければ普段の力なんて出せるわけがないことはわかりきっている。



おかしな言葉かもしれないが環境も魔物のようなものなのである。

対応できなければ死につながるのだ。

その点から考えるとクレタ平原は非常にやりやすい狩場なのである。



シロウの表情にも、ソウタの表情にも先ほどのような、和やかな様子は一瞬たりとも垣間見れない。

特段、気を張り詰めるでもなくごくごく自然な様子である。

狩場に入ったものは自らスイッチを入れなければ死んでいく。

二人はそういう場所に今立っていた。


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