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変り者のギルド 『オドバル』

歴代のハンターを見守り、ともに歩んできた木造のギルドは何十年もそこに在りつづけた。

にもかかわらずあいもかわらずこのギルドは異質な存在だった。


この街にあるギルドはどれも歴史あるもので人々にも街を守ってくれるものとして暖かく迎え入れられている。

このギルド『オドバル』もそれには変わらない。


実績も十分だし、歴史もある。

このギルドがどうして異質のものに見えてしまうかというと、他のギルドと比べるとここを利用するハンターが変わり者ばかりだからである。



まさか変わり者募集なんて看板を掲げているわけでもないのだが、

なぜかこのギルドの雰囲気とここにいる人間たちに引き寄せられるかのように変わり者の巣窟みたいになってしまったのである。



シロウもここ一年くらいはオドバルで主に依頼を引き受けたり暇を潰したりしていた。

そしてこの日もシロウはいつも使っているオドバルの酒場で少し遅めの朝食をとっていた。



古びてはいるが不思議とすわり心地が悪くない椅子、ぼんやりと窓から差し込む光、いつも誰かしら酒をあおっているような雑多な感じがシロウはなんだか好きだった。

他のギルドにいる時よりも奇異のまなざしで見られることが少なくなったからであろうか。

まあ、変り者ばっかりのこのギルドでたかが自分ごときがそのような視線をむけられるわけもないかと思いなぜだかわからないが少し安心した



いつものようにライ麦パンを薄切りにしてハムや野菜、チーズを挟みサンドイッチにして、それと野菜と肉がごろごろ入ったスープを食べていた




この世界の平民の食事は非常に質素なものでぼそぼそとしたパンもしくは雑穀でオートミールそして野菜くずでつくったスープがほとんどで、ときどき肉や魚、卵など並ぶ程度であった。


朝からハムだったり、野菜と肉がごろごろ入ったスープを飲んでいるシロウはそこそこ稼いでいるのであろう。




食事中もシロウは今日何をしようか考えていた。

まあ、それは今日に限ったことではなくここ数年ずっとその調子ではあったが。



悩みの原因はというとソロで行ける狩場に限りがあって、そこはもうここ三年間で行きつくしてしまっていたのである。

シロウの実力が足りないから狩場が限られているというわけではない。

元は期待のルーキーと騒がれるだけあってシロウの実力はそこそこのものである。


実際、ソロで活動しているのに大ケガをして再起不能、死亡なんてなってないことからもそれがわかる。


実力が確かなシロウにもかかわらずソロで行ける狩場には限りがあるのだ。



別にいつも通り同じ狩場で同じ魔物を狩りに行くのも、まあ悪くはない。


安全だし安定した稼ぎもでる。

しかし、そんなところばかり行っていると、シロウはもうハンターとしての成長が止まってしまうと思っていた。



事実ここ最近シロウ自身が自分の成長を実感できていなかった。

このことがシロウに更なる焦りを与えていた。


そのこともあって最近は特に新たな狩場の情報詮索に躍起になっていたがそうそう美味い話が転がっているわけもない

結局、いつもの狩場に足を運ぶことの繰り返しとなっていた。



パーティーさえ組めればと思ったことは一度や二度ではすまない。

でも、踏ん切りがつかないのだ。

実力のあるチームに誘われて、一緒に活動しても気持ちはまったくはれない。

結局、どんな実力のあるチームに誘われたところで自分で踏み出せなければなんの意味もないのである。


シロウはその一歩を踏み出すきっかけを探していた。


サンドイッチとスープを食べ終わるまでいい案が浮かぶはずもなく、今日もまたおなじ狩場かと思いシロウは大きなため息をついて立ち上がろうとした。



「おう、シロウ、久しぶりじゃんか」



ここで、シロウのことをなれなれしく呼ぶ人間はめったにいない。

シロウが目をやると、そこには見慣れない動きやすそうな茶色を基調とした質の良さそうなレザーアーマーを着込み、三年前と変わらない見慣れた煉瓦色の厚手のスカーフを巻いた男がにこにこと微笑みながら立っていた。



「ソウタはかわんないな。なんだか安心するよ」



茶髪でくせ毛で童顔の三年前の元チームメイトのソウタを見てシロウは微笑み何処か安心した様子でため息を一つはいた。



「なに笑ってんだよ。ソロで活動しすぎてついに頭おかしくなったのか?」



ソウタは三年前とは変らないシロウと、それとは別になんだか前とは違った様子を感じ取り、仲が良かったからこそ許されるような失礼な発言で同様に再開を喜んだ。



「せっかく、久しぶりの再会に浸ってるっていうのに会いかわらずだなぁ。

 そっちこそ、オドバルの専属のハンターなんかになってさらにおかしくなったんじゃないか?」



久しぶりに会ったっていうのに軽口はあのころのままでなんか安心したし、今のソウタの状況を知って気にかけられているようでうれしいようななさけないような複雑な気持ちになった。



「あちゃー、やっぱりシロウも俺がここの専属なったの知ってたんだ。」


「当たり前だろ。嫌でもみんなの情報ちょいちょい小耳に挟むさ。まあ、俺の情報だけはソロでやってて頭がおかしくなったっとしかお前らに伝わってないかもしれないけどな」



ふざけた様子で頭を抱えてリアクションしているソウタと不気味に笑いながら自虐をこぼしたシロウは目を合わせてなんだか懐かしくて大笑いした。



ひとしきり再開を祝った後、シロウとソウタは椅子に腰をおろしていた。



「ソウタがこの時間にここにいるなんて珍しいな。ギルドの仕事とか忙しいんじゃないのか?」



ギルド専属のハンターとはフリーのハンターとは違い魔物を狩ることや、民からの依頼をメインとして活動はしていない。


基本的にギルドから専属ハンターに直接依頼がきてそれに拒否権はない。

そのかわりギルドから直接雇用されているため給金もでるし報酬も良くなっている。


もちろん誰でもギルド専属のハンターになれるわけもなくギルドマスターからフリーのハンターに直接誘いがくる仕組みになっている。


誘いはもちろん断ってもいいが前述の通り非常に好条件なので二つ返事で了承する者がほとんどである。



「いや、今日も仕事があるんだけど、ちょっといつもの連れが体調崩しちゃってどうしようかなって思ってたところなんだよね」


「ふーん、ギルド専属っていうのも色々とめんどうなんだな。」


「ほんとほんと。俺一人じゃなんもできないって。

 ・・・・・・・・あ、シロウがいるじゃん」



ソウタはけだるそうに欠伸をしていたと思ったら、なにか思いついたのかシロウを見てニヤリと微笑んだ。

シロウはその笑顔を見てなんだかめんどくさそうなことに巻き込まれそうだなーと思うとともになんだか昔にもどったみたいだった。


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