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夜は天にて冴えわたり11

「そんなことがあったんですの……」

 場所はコテツとアーデルハイトの居住空間。

 コテツが昼間のヴォルフガングとの決闘を簡潔に説明するとアルファは夕食であるカルボナーラを食べながらそう言った。

「そういえば確かにヴォルフガングが『コテツ=ナガソネは弱いから役に立たない』などと言っていましたけど……」

「『アースクシミュレーション』で戦って僕が負けたからね」

「ということは……コテツはヴォルフガングより弱いんですの?」

「弱いよー。負けたのがいい証拠」

 あっさりとコテツ。

「でもコテツがSCリーグで負けたのは不戦敗だけじゃないですの……」

「そんなこと言われてもね。負けたのは事実だし」

 カルボナーラを食べるコテツ。

 そこにアーデルハイトが割って入る。

「ていうか何でアルファがまだここにいるんだ?」

「それはもちろんコテツと組むためですわ」

「あ、それならもう無理」

 サクッとコテツ。

「何でですの!」

「もう今回のツーマンセルはヒルダで登録したから」

「そんな……! じゃあわたくしはどうすればいいんですの!」

「別の奏者と組めばいいんじゃないの?」

「せっかくわたくしが寛大にもコテツ風情と組んであげると言っているんですのに!」

「コテツ風情って……。いや、まぁいいんだけどさ……」

「アイドルで可愛い美少女のわたくしと組めるんですのよ? 光栄に思って最優先するのが普通でしょう!」

「そんなこと何度も言われてもね。マイやハイトやヒルダも十分可愛いし。アルファだけが特別だなんて思えないよ……」

「う……」

 と絶句して、

「ううう……ううううう……」

 まなじりに涙をためるアルファ。

「泣かないでよ……!」

 焦るコテツにボロボロと涙をこぼしながらアルファが言う。

「わたくしは……コテツを選びましたのに……コテツはわたくしを選んではくださらないのですね……」

「だからって泣かなくても……」

「だって……だって……わたくしは他のアースク奏者からいくらでも組もうと言われてきましたのに……コテツだけはそれを蔑にするんですもの……!」

「なら今度またツーマンセルの試合があったらアルファと組むから。それじゃ駄目?」

「う……ひっく……ううううう……」

 と上ずった鳴き声をあげて、アルファは、

「それなら……うう……まぁ……」

 そう首肯した。

「じゃ、今度ツーマンセルかスリーマンセルの試合があったらアルファを誘うから。だから泣き止んで。お願い」

「はい……わかりましたわ……」

 ぐしぐしと両瞼を腕でこするアルファ。

 それから目を真っ赤にはらしてカルボナーラを食べる。

「そもそも美少女に泣かれるのは反則だよ。こっちが悪い気がしてしょうがない……。マキャベリズムとわかっていても何だかなぁ」

 ぼんやりとコテツ。

 そして視線だけで、

「マイにしか罪悪感を持たないんじゃなかったのか?」

「鬱陶しいって言ってるんだよ」

 そんな会話するコテツとアーデルハイト。

「わたくし……美少女ですの……?」

 涙声でそう聞くアルファに、

「こっちがドキッとするくらいね」

 コテツはそう答えた。

「そうですか……。えへへ……」

 アルファはシャクナゲのように微笑んだ。

「むっ……」

 と不機嫌になるアーデルハイトにコテツは気付かなかった。

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