夜は天にて冴えわたり09
次の日、
「ほら、起きなさいなコテツ!」
朝早くにコテツを起こしたのは茶髪のパーマにイブニングドレスを着たアイドル……アルファ=アストラルだった。
掛布団をひっぺがし、朝の冷気をコテツに染みさせる。
「うう……まだ眠る……」
重いまぶたに抵抗することもなくコテツ。
「もう朝食ができてますわ! 早く起きることですね!」
コテツの耳を引っ張るアルファ。
「いてて、いててて、いてててて……」
耳を引っ張られるままに起き上がるコテツ。
それからコテツは目をパチクリさせた。
「あれ? アルファ=アストラルがいる? なんで?」
「昨夜わたくしを別室の寝室に寝かせたのはあなたじゃないですか!」
「ああ、そう言えばそうだったかも」
コテツは記憶を掘り返した。
昨晩、コテツは泣き疲れて眠ったアルファをアーデルハイトのベッドに寝かせて、ついでにアーデルハイトに一緒のベッドで寝るように言ったことを思いだす。
「とにかく……朝食はできていますわ! 早く来なさい!」
「へーいへいへいへーいへい」
そう言いながら自身の居住空間のダイニングに顔を出すコテツ。
そこにはエプロンを着ているアーデルハイトがいた。
「お、今日は起きたな。偉い偉い……」
アーデルハイトはくつくつと笑うと器に味噌汁をつぐ。
今日の朝食は和風だった。
白御飯。
味噌汁。
納豆。
焼き鮭。
地球の日本に住んでいたことのあるコテツにはありがたい朝食だ。
「うーん。いい匂い……」
和食独特の香りに酔いしれるコテツ。
「主に感謝しいただきます。アーメン」
十字を切るアルファ。
「いただきまーす」
一拍するコテツ。
「じゃあ俺も……」
一拍するアーデルハイト。
そうやって三人の朝食が始まった。
もそもそと食べ始める三人。
コテツの妹たるマイはその光景をニコニコと見つめていた。
対してコンスタンスは仮想コンソールを映像化してカタカタと仮想キーボードに何がしかのプログラムを打ち込んでいた。
アルファは急ぐようにして朝食を食べ終わると、
「それではわたくしはこれでおいとましますわ。今日はドラマの撮影に出ないといけませんので……」
「ああ、そういえばそんなことやってたね。『君に届いて』ってドラマだったっけ?」
「そうですわ。マネージャーが迎えに来る前に自宅に戻らないと……」
「今から自宅に行って間に合うの?」
「大丈夫ですわ。わたくしもこのマンションに住んでいますから」
「あ、そうなの?」
「わたくしは二十五階に住んでいます。ここからエレベータですぐですわ」
「それなら問題ないね」
淡泊にコテツは練った納豆を白飯にかける。
「そういうことで、今は引きますわ。でもまだコテツの事を諦めたわけじゃありませんからね」
「だーかーらー、僕はヒルダ=ニュートンと組むって言ってるのに……」
「その余裕を崩してみせますわ」
「はいはい」
うんざりとコテツは味噌汁をすすった。




