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夜は天にて冴えわたり07

「というわけで……アルファ=アストラルです」

 コテツはアーデルハイトとマイとコンスタンスが出迎えてくれた玄関で……茶髪パーマの美少女兼アイドル兼アースク奏者であるアルファ=アストラルを紹介した。

「アルファ=アストラルですわ……よろしくお願いします」

 ドレスの裾をつまんで優雅に一礼するアルファ。

「…………」

「…………」

「…………」

 アーデルハイトとマイとコンスタンスはポカンと呆けた。

 アーデルハイトが人差し指を伸ばして、その震える指でアルファを差した。

「アルファ=アストラル?」

 そんなアーデルハイトの疑問に、

「アルファ=アストラル」

 あっさり頷くコテツ。

 アーデルハイトはコテツの胸ぐらを掴みあげて言った。

「お前は……! ヒルダの時といい今回の事といい……どうしてそう美少女ばっかり連れてくるんだ!」

「怒らないでよ。絡まれたのはこっちなんだ」

 そしてバー『天竺』での出来事を簡略して話すコテツ。

 アーデルハイトはジト目になった。

「それでなんでアルファがついてくることになるんだよ……?」

 豊満な胸を腕組みして支えて、アーデルハイトは問うた。

「さあ、僕にもさっぱり……。せっかく一人で酒に浸っていたのに迷惑してるのは僕の方なんだ……」

「このジゴロめ」

「耳が痛いなぁ……」

 コテツは靴を脱いで、アルファに靴を脱がせてコテツとアーデルハイトの居住空間に招いた。

 ダイニングへと進んで……ダイニングテーブルの席にアルファを座らせるとコテツは名を呼んだ。

「アルファ=アストラル……」

「アルファでいいですわ」

「……じゃあアルファ。何が飲みたい?」

「カルヴァドスがいいですわ」

「じゃあそれで」

 コテツは量子変換されたカルヴァドスをダウンロードして量子変換機の中でカルヴァドスを具現化する。

 カルヴァドスの封を開けて、自身とアルファとアーデルハイトの分のグラスになみなみと注ぐコテツ。

 それから自身もアーデルハイトとアルファのようにダイニングテーブルにつくとコテツは言った。

「今は亡きマイ=ナガソネに乾杯」

「乾杯……」

 アーデルハイトがコテツのグラスに自身のグラスをぶつけた。

「よくわかりませんけど……乾杯……」

 首を傾げながらアルファもまたコテツのグラスに自身のグラスをぶつける。

「ところで……マイ=ナガソネって誰ですの? 聞く限りではコテツ=ナガソネの親類のようですけど……」

 そう問うアルファに、

「あ、私の事です……」

 そんなマイ。

「人工知能が親類にいるなんて珍しい家系ですのねナガソネの家は……」

「まぁ色々あってね。それで……? 僕とさっきの続きがしたいって言っていたけどどういうこと?」

 カルヴァドスをあおりながらコテツ。

「そう。そうでしたわ。ですからコテツ、二日後のツーマンセルの試合、わたくしと組みなさいな……」

 言うアルファに、

「ぶっ」

 アーデルハイトが噴き出した。

 それからアーデルハイトは隣に座っているコテツの胸ぐらを掴んだ。

「どどどどういうことだコテツ! お前……またこんな奴に安請け合いを!」

「してないってば。バーでも言ったんだけど僕は断ったんだ」

 うんざりと両手を挙げて無抵抗を示すコテツ。

「それが納得できないのですわ! アイドルのわたくしと組むことになんの異論がありますの!」

 そう尊大げに言ったのはアルファだ。

「だって……既に組んじゃってるし」

 あっさりと事実だけを言うコテツ。

「破棄なさいな」

「そんなことできるわけないでしょん」

「このわたくしが直々にコテツ=ナガソネを選んであげたのよ? ここはむせび泣いて感動し、ありがたくわたくしの温厚篤実に礼を言うべきところじゃなくって?」

 カルヴァドスをあおりながらアルファ。

「あのね。世の中可愛いだけじゃ通らないこともあるんだよ?」

「可愛いは正義ですわ!」

「君がそう思うんならそうなんだろう、君の中ではね」

 そんなコテツに、

「っ!」

 絶句するアルファ。

「ま、そういうことで。諦めて?」

「……ちなみにコテツは誰と組みますの?」

「ヒルダ=ニュートン。オベロンを駆るデフィートレスだよ。まぁ僕のせいで黒星が一個付いちゃったけど……」

「ヒルダ=ニュートン……! あいつですの! あの元デフィートレス!」

「そ」

 あっさり言ってコテツはカルヴァドスをあおる。

 アルファはカルヴァドスをグイグイと飲み干して、ダンとダイニングテーブルにグラスを叩きつけると、

「何であんな奴と組むんですの! わたくしの方が可愛いじゃないですの!」

「そうかなぁ。ヒルダも十分可愛いと思うんだけどな。そう思わない? マイ……」

「私も兄さんに同意です」

「もちろん一番はマイだけどね」

 自身の傍に立っているマイにキスをするコテツ。

 マイは面白いほど真っ赤になった。

「ななな何を!」

 狼狽えるマイに、

「愛のおつまみ?」

 皮肉気に笑ってコテツ。

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