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ヒルダ=ニュートン10

 そんなコテツ目掛けて、

「行きなさい!」

 ヒルダの指示の下、オベロンの第二フェーズ……《フェアリー》による信号弾はまるで怒涛の川のようにスサノオに殺到した。

「ちぃ……!」

 そう呟いて二十以上の信号弾を切り払うコテツ。

 しかして此度の信号弾はヒルダの意識のよって動かされているモノであって、愚直にスサノオを狙いはしなかった。

 コテツが切り払おうとした信号弾は軌道を変えてサインソードを避けるとコテツのスサノオにぶち当たる。

「ぐう……!」

 二、三発と信号弾……オベロンの第二フェーズ……《フェアリー》によってダメージを受けるコテツ。

「複数のサインバレット……信号弾を自在に操る……! それがヒルダの……オベロンの第二フェーズか……!」

「そうですわ。複数のサインバレットの操作。まるで妖精のように宇宙に浮かぶ信号弾がヒルダの意識によってコントロールされて敵を襲う。それがオベロンの第二フェーズ……《フェアリー》です!」

 そう確認しあっている内にもヒルダの操る信号弾はスサノオにダメージを与えていた。

「第二フェーズに移行したオベロンは無敵ですわ。後はお兄様を前後上下左右自在のサインブレットで追い詰めればいいだけですから……!」

「厄介だなコノヤロウ」

 コテツは二十近いサインバレット……信号弾を切り払おうとサインソードを振るう。

 しかしてコテツのサインソードを避けてオベロンの《フェアリー》……信号弾の群れはスサノオに襲い掛かる。

 それはまるで数多い妖精がスサノオを取り囲んでいるようにも見えた。

 信号弾を妖精に例えるならば、その妖精を統べるヒルダのアースクたるオベロンはまさに妖精王と言った様子だ。

 そして決着がついた。

「ぐ……おおっ……!」

 サインソードをがむしゃらに振るうコテツの意志を無視して二十近くのサインブレットがスサノオに殺到した。

 そしてスサノオのダメージは百パーセントを超えた。

 清々しいまでの決着だった。

「YOU LOSE」

 とコテツの視界に決着のコンソールが出て、それを認識したコテツによって勝負はついたのだ。

 コテツの負け……そしてヒルダの勝ちだった。

 それからコテツはアースクシミュレーションからログアウトして0と1のデジタル世界から0から1のアナログ世界に帰還した。

 同時に現実世界で目を覚ますコテツ。

「う、ううん……」

 そう呟きながらリラックスルームにて照明の明るさに目をくらませるコテツ。

 そしてコテツは自身の顔に他人の顔が間近に迫っているのを確認した。

「ん~……」

 と呟きながらコテツにキスをしようとするヒルダの顔をコテツは認識した。

 同時にガシッとコテツは両手でヒルダの頭部を掴む。

 コテツとヒルダの頭部はあと一センチで唇が触れるところで止まった。

 ヒルダの頭部を掴んだコテツが言う。

「なんのつもりだ……ヒルダ?」

「お兄様にヒルダの初めてを奪ってもらおうかと思いまして……」

「俺にはマイという大事な人がいるよ」

「だからヒルダは二号さんでいいですよ。代わりにいっぱい愛情を表現してほしいです……」

「断る」

 コテツは掴んだヒルダの頭部をブンと振って突き放した。

 床を転がるヒルダ。

「何をするんですの……」

「それはこっちのセリフだよ。なにを寝込みを襲おうとするの?」

「そうでもしなければお兄様はヒルダを意識してはくれないでしょう?」

「……意識はしてるよ」

「本当ですか!」

「そりゃヒルダは顔も性格もスタイルもいいし僕としても嫌じゃないけどさ……」

「ならば今すぐにでもキスを……!」

「でも今の僕はマイのために強くあろうと決めているんだ。だからまだヒルダの期待には応えられない……」

「ですからヒルダは二号で、側室でいいんですって……」

「それでも通すべき筋は通すべきだろう? マイとのことに決着がついたら、そのときこそ僕は誰かに対して決着をつけられるんだと思うんだ」

「う~……納得いきません!」

「そう言われてもねぇ……」

 虚しげにそう呟いてコテツは煙草を取り出して火をつけた。

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