ヒルダ=ニュートン01
それからコテツとアーデルハイトは無人のオートタクシーを使ってコテツとアーデルハイトの住む高級マンションへと帰宅した。
要した時間は計五分。
アッカーマンシステム本社のすぐ近くのマンションだ。
その三十六階の一号室の扉の前に立つ。
そして十を超える生体認証の末にコテツとアーデルハイトの住む空間の扉が開く。
コテツとアーデルハイトは自動ドアをくぐろうとして、
「お帰りなさいませだにゃん。コテツお兄様……」
そんな歓迎を受けた。
黒いロングヘアーに顔立ち整った美少女が猫耳カチューシャに、両手両足に肉球グローブをつけて、虎模様のワンピースを着ていた。
それは一種奇妙な光景だったがコテツもアーデルハイトも思考が混乱して、つっこみの一つも入れられなかった。
「……間違えました」
ただそれだけを言ってコテツは扉から一歩引いた。
同時にウィーンと機械音を発して閉じる自動ドア。
それからコテツは、
「どうも階を間違えたみたいだ。エレベータに戻ろうハイト」
アーデルハイトにそんなことを言った。
「いやいや、階は間違ってないぞ。それに今の女子、コテツって……」
「コーテッツさんと聞き間違えたんだよ。なんにせよ御近所の恥を知ってしまったのだから何も言うまいさ。これは僕達の心の中だけに留めておこう」
「でもこの扉はコテツの生体認証にも反応したぞ?」
そんな有効的なアーデルハイトの正論に、
「…………」
黙ってしまうコテツ。
もう一度生体認証をして扉を開けるコテツ。
ウィーンと音がしてコテツの部屋の扉が開く。
そして、
「お帰りなさいませだにゃん。コテツお兄様……」
そんな歓迎を受けた。
黒いロングヘアーに顔立ち整った美少女が猫耳カチューシャに、両手両足に肉球グローブをつけて、虎模様のワンピースを着ていた。
それは一種奇妙な光景だったがコテツもアーデルハイトも思考が混乱して、つっこみの一つも入れられなかった。
「…………」
「…………」
「…………」
コテツとアーデルハイトと黒髪の美少女が沈黙する。
それから黒髪の少女は言う。
「なにか反応してくださいませんとヒルダは対応できせんにゃん……お兄様……」
もう一度、
「にゃん」
と言って肉球グローブをした右手をクイクイと猫の毛づくろいのように動かす猫娘……改めヒルダ。
コテツはこめかみを人差し指で押さえて、
「うーん」
と唸った後、
「それで? 君は何でこんなところにいるの?」
「それはもちろんお兄様に会いたかったからに決まってます」
「うーん。会話になってるようでなってないなぁ」
どうしたものかと頭を抱えるコテツに、
「兄さん!」
マイの人工知能が映像投射機によって三次元映像として玄関に映るとコテツに声をかけてきた。
「兄さん。ヒルダちゃんですよ。ヒルダ=ニュートン……!」
「っ?」
首を傾げるコテツ。
代わりに、
「……ヒルダって……あのCクラスを無敗で突破した空前絶後の新人……ヒルダ=ニュートンのことか?」
首を傾げるアーデルハイト。
その言葉を聞いてハッとするコテツ。
それから黒髪ロングの美少女をしげしげと見つめる。
そこにはコテツの脳内ハードに入っている幼馴染の美少女の面影があった。
「ヒルダ……なの……?」
「はいな。お兄様……お会いしとうございましたわ」
それはまだコテツとマイが地球に住んでいた頃の幼馴染にして、無敗でSCリーグのCクラスからBクラスへと上がってきた伝説の怪人……ヒルダ=ニュートンだった。
「うわ、見違えたよ。こんなに綺麗になってるなんて……」
「お兄様やマイと別れてからお嬢様学校に通っていましたから。お兄様のお嫁に行ける準備は万端です」
「なんか人生設計を飛躍してないかな?」
「だってお兄様……子供の頃にヒルダのことを好きだと仰ったじゃありませんの」
「いや、子供の頃のことを持ち出されても……」
そんなたじろぐコテツに、
「ともあれとりあえず部屋に入りませんか兄さん……それからハイトさん」
そんなマイ。
「そうだな。そうしよう。茶を淹れてくれマイ」
「はいな。わかりました兄さん」
ニッコリ笑うとマイは自身の映像を消した。
それからコテツとアーデルハイトは靴を脱いで……コテツとマイが地球の日本で過去暮らしていたため靴を脱ぐ習慣がついている……室内に入る。
同時にヒルダ=ニュートン……ヒルダはマンションの三十六階の一号室と二号室をぶち抜いて作られた空間の余っている部屋にこもって着替えると普段着の姿でコテツの前に現れた。
黒い髪はまるでブラックシルクで、肌はまるで白磁器のように澄みきっている。
普段着をきたヒルダは大和撫子然とした少女となった。
それからコテツはダイニングテーブルに腰を落ち着けた。
量子変換して茶を準備したマイが、
「お茶、できましたよ?」
そう言う。
それに対してヒルダが反応した。
「ではヒルダがお兄様のために運びます」
ヒルダはコテツと自身の分の湯呑みを持ってコテツに茶を差し出し自身の分をダイニングテーブルに置くと、コテツの隣の席に座りコテツの腕に両腕を絡めた。
「お兄様、マイちゃんの淹れたお茶ですよ。どうぞお試しください」
「いや、それはいいけど……ハイトの分は?」
「泥棒猫の分なんてありません」
「誰が泥棒猫だ!」
ガルルと興奮するアーデルハイト。




