事の始まり 1話
この物語はフィクションです
実際の団体等には全くもって関係ありません
アンドスクールデイズ
「板川君っていっつも一人だよね。」
「板川?誰それ?」
「同じクラスの板川 涼君だよ。」
「あぁ。あの根暗な人ね。」
うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。
うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。
こんな人生まっぴらゴメンだ。
中学生の時は楽しかったのに高校なんて糞くらいだ。
中学生に戻りたいな。
「予鈴だぞ。席に付け。」
担任の声がする。
ショートホームルームを終わらし、部活へ行く毎日。
やっぱりこんな高校行くんじゃなかった。
人生平和が一番ってよく言うものだな。
刺激ある毎日が楽しいに決まっている。
この時の俺は知る余地もなかった。
今から、これからの人生で最も至福の時になることを。
「もう一度、中学校生活を送ってみたくありませんか?」
ショートで長身170ほどある若い女性が話しかけてきた。
「はぁ?」
部活帰りのため午後七時を回っている。
薄暗い路地裏に位置しているため余計に不安になる。
なんだこいつ不審者か?新手の詐欺か?
「はじめまして。板川 涼さん。」
心臓が活発になる。
見たこともない人にフルネームで呼ばれたことに不信感と恐怖感を抱く。
「失礼ですが全てあなたのことは調べています。」
「中学校では難なく暮らし部活では卓球部に所属し優秀な成績を収めていますね。
だが、高校生になったのはいいが高校に馴染むことが出来ず親しい友人を作れていません。」
「なっ。なんでそんなとこまで知ってんだよ!」
俺の顔が赤くなる。
プライバシーのくそもないな。
「すみません。申し遅れました。木池田 奈央 と申します。」
自己紹介とともに胸ポケットから出された名刺を渡された。
「私たちは、高校生になりそこねたいわゆる、高校デビューをし損ねた者たちに救いの手を伸ばす仕事をしています。」
どことなく失礼なことを言われてる気がするんだが。
「そんなことしてあなたに何の得があるんだよ。」
「中学生の実態がわかり我社の貴重な情報になるのです。もちろん、犯罪を犯さない程度の情報です。」
なんとなく納得してしまった。
そんなことより、最初に言われた言葉が気になる。
「最初言っていた「中学校生活を送る」ってのはどういう意味?」
「そのままの意味ですよ。あなたは一年間、中学校生活を送ることができる権利を持っています。」
「やりt」
木池田は俺の言葉を遮るように顔を近づけて言った。
「条件は1つです。日記を毎日書いてください。もちろん、対価は払います。一年間、
生活費は全てこちらが持ちますよ。」
金の心配ないなんて高校生にとっては申し分ない条件だな。
契約をしたら、中学生になるんだけどな。
「本当にやるのであればこのボタンを押してください。」
「このボタンを?」
木池田の手元にはアニメでありそうなひとつのボタンがあった。
「このボタンは押した者の体を若返えさせる効果を持っています。
勿論、このボタンを押した瞬間に我社と契約したことになりますよ。」
俺は、恐る恐るボタンに押した。
「、、、、ん?」
段々と眠くなり体が重くなる。
「嘘ついたな?」
目の前にいる女性はニヤニヤしながらこちらを見ている。
やっぱり不審者だったか。
「おやすみなさい。板川 涼さん。」
そう言って、俺は眠ってしまった。