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みたらし!  作者: だるま
8/9

穂香、早起きは三文の得?

ふぅ

やっと連載開始かな

今回は、早起きした穂香お姉ちゃんの回です

 こんにちは。というかお久しぶりですね、穂香です。覚えてくいてくださったでしょうか?

 なにせ、ここの作者さんがこの小説の短編風システムに限界を感じていたようなので……って、あ、こういう裏事情はナレーションしちゃいけないっていう暗黙のルールがあったんでしたっけ!

 しかも小説では、読者への語りかけは駄目だとか何だとか……。

 私としたことが、すいません。

 というか、私としたからこそ、こういうミスが出るんですよね。うーむ……直さないと。

 日本の小説協会(ってあるのかな?)の皆様には全身全霊を持って謝罪させて頂く所存でございます。

 すいませんでした。

 ――よし、じゃあ今回も我ら山田家の日常をお話しますね。

 といっても今回三姉妹で出てくるのは、穂香――私のみですが……。

 今は日曜の早朝五時――皆はぐっすり寝静まっている時間です。

 そんな時間にいったいこの穂香は何をしているのかと言いますと、実は私も今起きたばかりなんです。

 意味もなく、早起きをしてしまったんです……。


「ふぃ~……」


 何とも間抜けな声を出しながら洗面所へと向かう私。

 問いかけてみれば確かにこの状況、二度寝なんて選択肢もあったんですが――私、基本的に一度寝て起きたらもう眠くならない体質なんです。

 だから、二度寝なんてしたくならないどころか――逆にもう一回寝るなんて面倒なんて感じてしまう程。

 使い勝手の良いスキル(スキルって響きかっこいいですよね)なんですが、時にこうして早起きしてしまうと性能の良さを逆恨みしてしまうこともあります。

 人間は理不尽ですからね~。夏場のときは「あちぃなぁ~冬来いよ~」とか言ってるのに、いざ冬が来れば「夏出てこいやごら! びびってんのか!」ですもんね~。ちなみに台詞は夏希から引用しました。

 まぁ、しょうがないよ。人間だもの。

 み〇を。

 ………………。

 あまり調子に乗ってると小説協会の方々から本格的に制裁を貰いそうなので、そろそろ真面目にこの早起き事情をどうするか考えないと。

 とりあえず顔は洗った。寝癖も直した。朝ごはん用にトーストを焼いた。イチゴジャムを塗った。

 ――今に至る。


「そういえば、早起きは三文の得っていうことわざがあったなぁ……」


 焼いたトーストを一人貪りながら、そんなことを呟いてみます。

 早起きは三文の得――。

 あれは正直に言って、間違ってますよね。

 あのことわざはきっと、気持ちの持ちようのことを言ってるんですよ。

 早起きすれば得なことあるかもしれないよ。なんて……言ってしまえば、雰囲気作りですね。

 早起きしたら得がありそうっていう雰囲気を、言葉で作ってるだけなんですよ。

 本当に得があるんだったら、今こうしてる間にも夏希達は飛び起きてくるよ……。

 しかしことわざというのも、宛てにされるためにあるものですから。

 ここは宛てにして、早朝に起きるかもしれないちょっとした幸せを期待してみるのも一興ですよね。


「………………」


 今度は歯磨きをしながら、リビングから窓越しに外を見てみます。

 私の家の周りは見事な具合に田んぼしか無い田舎なので、視界に入るのは土や野原ばかりです。

 太陽がひょっこり顔を出して、辺りは柔らかな光を浴びて――。

 なんだかこう、静かです。

 音だけじゃない。雰囲気が、空気が――静かです。

 良いですね、朝って。具体的な得なんて無くても、心が穏やかになります。

 そうだな――こういうときは、あれだな。


「――ランニングに行こう」




***




 というわけで、即刻ジャージに着替えて走ってみました。

 田んぼが周りに広がる中、その間に続く細くて長い一本道――いわゆる田舎道というやつです。

 早朝ランニング――今も昔も皆から愛されてる運動ですね。

 気持ちの良い朝に、生暖かい光を浴びながら汗を出す。これこそ早朝ランニングの醍醐味じゃないでしょうか。


「ハァッ、ハァッ」


 け、結構疲れますね。これ。

 なにせ帰宅部だし、バイト先だってコンビニなもんですから。

 専門的な運動はあまりしないんで、体力が平均より下回ってる女なのです……。

 始めてから一キロ――。限界とまではいきませんが、ちょっとキツいです。

 うーむ、どうしたものか……。

 目標とか決めずに、ただ衝動のまま走ってしまったのでこのまま帰っても良いような――ていうかこれ以上走ると帰るときに地獄を見そうなんですよね~。

 周りに広がる田んぼの間に、まだ続く細道――。

 そんな中、少し自分の運動音痴っぷりを卑下しながら走っていると――何やら前から一人の影が近づいてきました。

 女の子です。

 女の子が走ってこっちにやってきます。黒いジャージを着ているところを見ると、早朝ランニングのランナー仲間でしょう。

 いや――女の子なんて愛称は合わないな。身長は私と同じくらいだし、きっと高校生だと思います。

 いずれにせよ長い一本道――こんなエリアの中、お互い走りながら向かってきたらすれ違いは免れません。

 案の定、私とその女の子はお互い真正面を向きながらすれ違いました。

 朝からランニングなんて、お互い頑張りましょう! ――なんてバカなことを心の中で思いながら、その子の顔をチラッと見ます。

 ――え。

 見た瞬間、絶句しました。

 それは向こうも同じのようで、お互いに走っていた足を止めました。


「あ」

「あ」


 知り合いです。

 ていうか、友達です。


「ちぃ……?」

「ほのたん?」


 私のことを『ほのたん』と、愛着染みたこと言ったこの子は、赤神千紗――通称、ちぃです。

 私の通っている高校――天城六陽高校の同級生。

 パッチリした目に、柔らかそうな唇。スタイルも抜群で、胸も大きければ足もスラッとしていて――まさに女子の理想像のような体とルックスを持っています。

 そしてそれらに退けを取らない特徴が、肩まで伸ばしたセミロングの髪。

 赤神の名に相応しい、赤く艶やかな髪の毛です。

 神々しいまでの輝きを放つその赤髪。後ろからその姿を見た人でも、その髪だけで見とれてしまいそうです。

 運動神経抜群、成績優秀などと絵に描いたような垢抜けぶり――そんな彼女は無論、当たり前のように学園のアイドルというポジションに着いています。男子はおろか、教師さえもその姿に見とれる程。

 さすがアイドル、やっぱりジャージ着てても可愛いなぁ。

 まさかこのボケ山田の友達だなんて…………どういう経緯でなれたんだろうと自分でも思います。


「えぇーほのたんにこんなところで会うなんてー! えーどうしよ何話そう……」

「いや、会ったからって無理な会話を作ろうとはしなくて良いんじゃない……?」


 しかしそんな彼女にも、勿論すべてが完璧というわけにもいきません。

 学園のアイドルとさえ評される彼女。しかし彼女の人気はあくまで、男性側に集まるだけなのです。

 つまり、女子からの支持を得られない。

 まぁ確かにここまでのルックスとスタイルなら、女性陣が嫉妬するのも仕方ないでしょう。

 でもですね。

 でもですね、そうじゃないんです。

 女子は彼女に嫉妬なんてしてないんです。

 ゛する余裕が無いんです゛……。


「――良いこと考えたよ! えっちな話しようよ!」

「………………」


 …………これなんです。今日も出ましたよ。

 彼女の、女子からの支持を得られない本当の理由――。

 極度の変態レズビアン体質。

 女の子大好き。女の子のパンツ欲しい。女の子の胸が揉みたい。

 学校のアイドル赤神千紗は、これらの欲求を基本として成長している生物なのです。

 ちなみに彼女、胸のある男の子は好きだそうです。

 とんでもないキャラですね。


「ちぃ、どうしてそう考え付いたか教えてくれる?」

「ほのたんが走ってるときにバインバイン揺れてるおっぱい思い出してたら考え付いたんだぜッ」

「ドヤってしないで。ちぃっていつも私の胸しか見てないじゃん」

「それは誤解だ待ってくれ! 私は基本的に女子と話すときはおっぱいしか見ない!」

「目を見なさいよ変態!」


 うぅ~。駄目だ。

 ちぃと話すときはいつも調子が狂って、言葉遣いが荒くなってしまうんです。


「よし決めた。今晩はほのたんにしよ」

「ほえ……? 何の話?」


 今晩は私にする……?

 何だか怪しい臭いしかしないような台詞ですね。今私の脳内が微かに警告しています。

 これはエロ路線です! 絶対エロです!


「はぁん……。今のうちにほのたんのあのマシュマロバズーカを脳内に焼き付けておかないと…………。やべぇ柔らかい……もみもみ……ハァハァ……スゥ……はぅん……やっべまじ可愛い……ほのたぁん……ほのたん大好きぃ……」

「………………」


 ………………。

 これが天城六陽高校一のアイドルの姿なのでしょうか。

 こんな――ヨダレ垂らしながら白目剥いて、目の前の女友達の名前を連呼しながら妄想に浸るこの何とも間抜けで醜い生き物を、アイドルと呼んで良いのでしょうか。

 あまりの気持ち悪さに、私も吐き気を催していた時期もありました。

 ――しかし、ものは慣れなんですね。悲しい限りです。

 今この現状を目の当たりにして、かろうじて一発ぶん殴る余裕がある自分を我ながら誇らしく思います。

 妙に不快な音が響き渡りました。

 私の拳が、一人の少女の顔面を勢い良く抉る音です。

 ――人間は理不尽ですからね。気づいたら人を殴っているような生き物なんです。

 しょうがないよ。人間だもの。

 ほのか。


「痛くて……きもちぃぃぃぃ」


 鼻血を垂れ流し、地面へと背中から倒れていく学校のアイドル。

 しばらく、地面の上で魚が跳ねるかのようにピクピクと痙攣していた動きが止まったのを確認すると、私は『それ』に背を向け、我が家へと走り出しました。

 ――あぁ。

 早朝ランニング――きもちぃ~。

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