夏希、これこそ天城探偵団
なんか適当気味だな……
眠いぜ
やあやあ諸君! 皆のアイドル夏希様だぜ!
今回、私は何をしているのかと言うとだな……なんと私の秘密基地に来ているのだ! 通称『学校』と言うらしいけど。
天城塩原高校――天城町でピカイチのバカ(偏差値が低いって言うのかな)高校だ。といっても中に居る奴はそんなバカでもないけどな。私も含めて!
「夏希隊長! 今日も筋肉付けましょうぜ!」
「夏希隊長、今日キャサリンがボクの消しゴムを拾ってくれましタ。キャサリンは可愛いくせに心も優しい僕のエンジェルデス」
「夏希隊長、ボビーだって今日、ワタシの髪がサラサラだって褒めてくれたのヨ!」
「夏希隊長、隣のバカップル――もといクズップルがうるさいです。一発殴ってもよろしいでしょうか」
放課後、生徒が真っ先に部活やら居残りやらに勤しんでいるとき。
塩原高校校舎の会議室にて、とある四人の男女が、私を囲むようにして椅子に座っていた。かくゆう私も、足を組ながら椅子に腰掛け皆の話に耳を傾けている。
そのおり、いきなり私の前に座っていた大男――安西友也が騒ぎだした。
「夏希隊長! パンツ見えてます! 太ももの筋肉の隙間からパンツが見えています! だがそれでも俺は隊長のパンツよりその美しい筋肉に見とれるばかりっす! はい!」
「落ち着け安西隊員、パンツくらいでギャーギャーと――お前は子供か。私はな、この日本においてパンツを見せるのははしたない行為だとされていることが気にくわないんだ。ショートパンツはいいのになんで普通のパンツは駄目なんだ! 短ければ良いのか短ければ!」
「さーせん! じゃあゆっくり拝ませて頂きます!」
「お前見る気満々じゃねーか」
安西友也、十六歳。体長二メートルくらいの大男。
その体はすべて筋肉でできていると言っても過言ではないような頑丈さを誇る。ちなみに野球部。
どこか抜けているようなアホ面をしていて、ボウズ頭も特徴の一つだ。
ちなみに放課後なのになぜ部活をせずここに居るのかは分からない。恐らくサボってる。
「キャサリン、愛してるヨ」
「あらやだボビーったら、いきなり過ぎるワ! でもそーゆーとこもステキ」
「おいバカップル――もといクズップル――もとい〇〇ップル、プルプルプルプルうるせーんだよ。抱き合うなキスすんな何か揉むな」
私の右隣でイチャイチャしてんのは、世にも珍しいバカップル――ボビー・チャイルドとキャサリン・デメキスだ。
見た通り聞いた通りどちらも外国人で、ボビーはアメリカ、キャサリンはイギリス出身となっている。
まずはボビー――こいつはスキンヘッドの黒人で、イカツイ顔をしている。しかし見た目の割に本当にアホ。今のようにいつもキャサリンと引っ付いてる分かりやすいキャラだ。ちなみにスシが好きらしい。
そしてキャサリン――こいつも分かりやすいキャラだからどうしても説明は省きたいばかりだけど、長い金髪をツインテールにしたお姉ちゃんとでも思ってくれ。英語の教科書とかでよく乗ってるアレ。アレみたいな奴。
ちなみにおっぱいでかい。
「なんかワタシだけ説明テキトーヨ! 修正してン!」
「それだけアンタはモブキャラってことじゃない? 少しは自覚したら?」
この毒舌女は、静海留衣。
長くてツヤのある赤髪のストレートヘアーで、まさにドSを極めるためだけに生まれたような女。
半分閉じた目、そして常に微動だにしない無表情の顔であらゆる人間を見下し、ゴミ当然としか思っていない――まさに悪魔。ちなみにこういう奴に限って意外に甘いものとか好きだったりするけど、静海の場合食べ物だったら何でも好む。
「ゴミだなんて……随分と大袈裟な偏見ね。私は人を個体物として認識したことさえないわ」
「ゴミ以前の問題かよ! 私達はあなたにとって見れば空気も同然ですか!」
「ふふ、冗談よ」
無表情で笑うなよ。
――まぁしかし、こうして会議室にて男女五人が密集し、いかにも怪しげな雰囲気を醸し出していたのにはちゃんとした理由があるのさ。
『天城探偵団』――そんな言葉に聞き覚えがあるはずだ。
そう――この天城町に訪れる不可解な事件の数々、そして悩める人々の相談――。それらをすべて解決していく天城探偵団! それこそが我々なのだ!
……え、知らない?
「とは言ったものの……最近事件も依頼も何も無いからつまんないよなぁ~。誰か依頼こーい」
「言ったもののって……誰に何を言ったんすか隊長、もしかして筋肉っすか?」
「友也、その繋げ方には無理がないか……」
しかし、天城町の平和を守ることを目的とした天城探偵団だけど……元から平和な天城町にはほとんどこの団は不要なんだよな。
「まずこの団の知名度が低すぎるから、来る来ない以前の問題じゃない? 誰もこの団体の存在を知らないのよ」
毒舌……ではあるが、やはり留衣の言う通り、それは事実だな。まだこの団を立ち上げてから半年も経ってないし……。
「ふふ、まぁ私はあなたの芸を見てるだけで暇潰しになるからいいんだけれどね」
「私芸なんてやったことないんだけど! 今までずっと素で生きてきましたけど!」
「ボクはキャサリンの横顔が見れれば満足サ」
「キャッ! じゃあワタシはボビーの後ろ顔を見つめてるワ!」
「キャサリンのオバカチン! 後ろに顔なんてないゾ!」
「俺は筋トレできれば満足っすね」
考えてみれば、メンバーもメンバーでロクなの居ないよなぁ……。筋トレ目当てで入るとかおかしいんじゃねーの、ここ探偵団だよ?
唯一まともと言えば、留衣くらいだしな。この子は毒舌ってだけでちゃんと物事は真面目に考えるタイプだし。
「しょうがない、まぁ今日は解散しよう。そろそろ日も暮れるし。各自パパとママに団のことを話し、知名度を上げとけよ!」
「聞き流されるなよ――というのが一番の注意点じゃないかしら?」
「いや、子供の真剣な話を聞き流す親なんて存在するはずが――」
***
その夜。
「お母さん、私今天城探偵団てとこに入ってんだぜ。町の平和とか、皆の悩みとかバババーンて解決すんの! だから天城町の危機とか戦争とか、全部私達に任せちゃって良いんだぜ!」
「あっそ」