楓、友達を作る・前編
前回、穂香が大学二年などとくちばしっていましたが
訂正させていただきます、穂香は高校三年生です
すいませんでした
それと、この話も少しばかり編集しました
どうも……楓と言います。はじめましての方ははじめましてーーあ、はじめましての方しか居ませんよね。ごめんなさい。
山田楓といいます。十四歳で、中学二年生です。好きな食べ物は焼き肉で――あ、こんな話どうでもいいですよね……。ほんとごめんなさい。
――私が今来ているのは、天城町にある天城南中学校です。皆天真爛漫な方たちで、いつも校舎の中は賑わってるんですよ。ふふ。
でも私はどうしても人と話すのが苦手なタイプで、学校にはあんまり――というか一人も友達が居ないんです。だからいつも休み時間は一人で本を読んでたり、お昼休みも一緒にご飯を食べる人が居なくて……。
でもでも、今日は友達を作れるように頑張りますから! 応援よろしくです!
――さて、今は休み時間なので、私にとっては当然読書タイムですね。男の子達はいつもの通り大きな声で盛り上がってますけど。
「つーかまじあいつムカつくんだけど~」
「ぎゃはは~冗談は顔だけにしろってか~ッ!」
お、おお……顔のことで誰かにむかついてるようです。もしかして私でしょうか。明日からマスク着けてきたほうが良いかもですね。
でも気にしない気にしない。私は本を読むことに盛り上がってればいいんですから。一人で盛り上がりたくはないですけど。
休み時間は授業の疲れを取れればいいんです。それなのに大声で話してたら逆に疲れちゃいます。
「……」
でも、ちょっぴり悲しいですね……。皆は友達とお喋りを楽しんでるのに、私だけ読書という。でもしょうがないんです。私が友達作らないのが悪いんだし。自分のせいなんです。
もっとこの引っ込み思案を直せば、一人くらいは友達できるはず――と、思います……。自信無しです。
はぁ……。誰か友達を募集してる人とか居ないかなぁ。例えばこの休み時間に、私みたいに一人で居る人――とか。居るわけないかなぁ……。皆仲良さそうだもん。
私は本を読むふりをして気づかれないように辺りを見回しました。
一人で居る人……一人で居る人……。
――あ! 居た!
私が座っている席の列で一番前に、一人黙々とぼーっとしてる人が居ました。黙々とぼーっとっておかしいですかね。
椅子に個人個人で貼ってある名札に目を通します。
尾田……展夫……くん? てんおくんで良いんでしょうか。尾田くんいつもの休み時間はあんな風に一人だったっけ。確かこのクラスで休み時間に一人で居たのなんて今まで私だけのような……。
いえ、気にしていられません。せっかくこんな私にもチャンスが訪れたのですから、この機会に何としても友達を――。
幸い休み時間は始まったばかり、少し話をするなら十分な時間です。でも、どうやって話しかければ良いんでしょうか。
――尾田くん、良かったら私と友達にならない!?
こうですかね。でも友達って、なろうって言ってなるものじゃないですよね。
――尾田くん、ちょっとだけでも私とお話してくれないかな!
う~これも堅苦しいなぁ。
どうしよう。分かんない。皆はどうやって友達作ってるんだろう。
そんなことを淡々と考えていると――、
「あの」
「ひゃあ!?」
いきなりの呼び声に、我ながら情けない声で反応してしまいました。拍子の抜けた恥ずかしい声です。それと同時に持っていた本も床に落としてしまいました。
「はい」
声の主が私の本を取ってくれました。おそるおそる本を受け取りながら、その人の顔を見上げます。
そこに居たのは尾田くんでした。さっきまで私が話しかけたがっていた、尾田くんです。
チリチリの髪の毛を伸ばして、クルクルした眼鏡で目を隠しています。全然目が見えないくらい濃い眼鏡。唇もタラコみたいに赤く膨れ上がっていました。病気なのかな……。あと、お腹が妊婦さんみたいなのも特徴です。
特徴多い人ですね。個性があって羨ましい……。
「あ……ありがとう」
「ブヒッ!」
「!?」
どう接していいか分からず、どもりながらもお礼を言う私。すると尾田くんが奇妙な鳴き声を発しました。
――ぶ……ぶひ? 豚の真似でしょうか。
あ、もしかして笑わそうとしてくれてるのかな。だったら笑っておいたほうがいいですよね……。
「は……はははは! そ、それうけるぅ~ッ」
ど、どうしよう。わざと笑おうとしたらすごくぎこちない感じに……。失礼極まりないですよね。嫌われたかな……。せっかく話ができるチャンスだったのに。
しかし尾田くんは私をフォローして、一緒に笑ってくれました。おお! なんて優しい人なんでしょう!
「フヒヒ!! フヒヒフヒヒ!!」
「!?」
す、すごい笑い方です。涎が垂れています。お腹減ってるんでしょうか。
「か、楓殿は面白い殿方ですなぁ。拙者、勇気を持って話しかけて良かったでござる!」
おお、今度は忍者の物真似だ! 尾田くんはいろんな物真似のレパートリーがあるみたいです。忍者だったり豚だったり……。
今まで話したことなかったけど、こんな面白い人だったなんて。私も尾田くんを見習わないと。
「尾田殿こそ最高でござる! 拙者感服致しました!」
にんにん。と忍者のようなポーズを取りました。
「ゴポォ!! か、可愛すぎるぅ~!!」
「!?」
突然、尾田くんが胸を抑えて苦しみ始めました。
「お、尾田くん! 大丈夫!?」
私は急いで立ち上がり、尾田くんの背中を擦りました。
「だ、大丈夫でござるよ。ちょいとあまりの萌えオーラに押されただけでござる」
「よ……良かったぁ」
「ブヒー! その笑顔もカワユスーッ!!」
「尾田くん!?」
***
「――と、いうことなの」
「うーむ……」
「ん~……」
――山田家の食卓です。放課後のチャイムがなると同時にそそくさと帰った私は、今日の一日に疲労感と満足感を満たしながら夕食まで待っていました。
今は、今日あった出来事を皆に話していたのです。
「お父さん、どう?」
「うーむ……」
私は根っこからのお父さん子なので、何かあるときはお父さんに話を聞いてもらいます。我が家のお父さんは山田源五郎と言って、すごく優しいです。銀髪の長髪がよく似合う人で、目が細く、コワモテと呼ばれるような男の中の男です。最近はロックに目覚めてバンドをやり始めています。頑張れ四十一歳!
しかしお父さんはそのコワモテ顔を一層堅苦しさの積もる表情にさせると、渋い声で言いました。
「正直、そいつはやめとけ」
「えぇ! 何で!?」
お父さんは珍しく堅苦しい表情をして、顔を横に振りました。
「私もそう思うわ」
その意見に、お母さんも賛同します。長い黒髪をサラリと揺らしドヤ顔しました。セクシーですが、そのドヤ顔の意味は分かりません。
我が家のお母さんは、山田奈央というとても美人な人です。ツリ目の似合う強気な顔で、性格も男勝りです。でも時々さっきみたいにセクシーになります。ちょっと太っていますが、それでも十分美人です! 胸も大きくてナイスバディですしね!
しかしお父さんの意見に賛同したのはお母さんだけに止まらず、お姉ちゃん二人も堅い顔をして顔を横に振ります。
「でも、尾田くんはいい人だよ。忍者の物真似だってできるんだから」
「楓、いい? 世の中にはオタクっていうとても悪い生き物が居て――むぐっ!?」
穂香お姉ちゃんが喋ろうとしたところで、夏希お姉ちゃんがその口を塞ぎました。
「楓、お前そいつちょっと連れてこいよ。この家に」
「え……」
私は俯きました。
――だって、尾田くんとは確かに友達だけど……。でも、友達になったばかりだし、もしかしたら友達っていうのも私の勘違いなのかもしれないし――尾田くんは本当は私のこと暇潰し用のお話し相手としか思ってないかもしれないし……。
「友達なんだろ? 呼べないのか? 友達を家に招くくらいできねーとなぁ!?」
夏希お姉ちゃんがいやらしい目をして顔を近付けてきます。怖いです。
しかし私はなぜかここで強がりを見せてしまい、
「で、できるよ。尾田くんと私は友達……なんだから」
「よしっ、決まりだな。んじゃ今週の土曜連れてこい!」
このように、退けない状況に陥ってしまいました……。何たることでしょう。まかれた油に自分で火を灯してしまいました!
こうなったらしょうがない――よし、明日の学校で誘ってみよう!
が、頑張るぞ~。