夏の恋
今回初めての小説で、随分前に書いた小説です。まだ文の成り立っていない小説であると思います。
心を広くして見てください…
いつのまにか彼を好きになっている…
それは…魔法のように…
教室で数学のワークをしていた亜月怜。
夏休み直前ということで、早めに宿題を片付けておきたかったのだ。
教室は蒸し暑く汗ばむ。カリカリとゴシゴシの音が交互に教室を満たしていた。
「ぇッ―……」
分らない問題がでた。習っているが応用系の問題だ。怜は頭を抱えて頑張って解こうと必死でいた。だが、どんなに考えても考えても分らず途中で諦めて、ワークに筆記用具を片付けてしまった。
「…はぁ〜…ちっとも分らない…」
カバンに全て荷物をまとめ、教室の窓から外を眺めた。
青色が空一面描かれている。雲は一つとしてない。
(…綺麗…スッキリしてる…外に出たい…)
「何してんの?」
「きゃぁ!!!」
気付くと後ろには同じクラスの同じ部活動の、男子の羽月光が立っていた。
不意に声をかけられ、怜はビックリして座りこんでしまった。
光は、「そんなに驚いた?」と笑いながら言うと怜は「当たり前だよ〜」と立ち上がり、背中を軽く突ついた。
彼は背が高く、毎回馬鹿にされる怜。頭の良さだって色々と遊ばれる。だけどそんな光は嫌いじゃない。というより、むしろ光が好きだった。
「…ふーんだ…小さくないもん…」
「嘘つけ…ちびっこ」
頭を押さえて、にっこりと微笑む光。そんなのが少し悔しくて、そして心が大きく跳ねた。
―やっぱり…好きだ…―
「亜月?」
「ぁッ…何でも無い!!ほら・・・馬鹿!早く部活行かないと!部長怒ってるよー!?」
背中を押して部活へと向かう。怜は後ろに隠れて、薄く頬をピンク色に染めていた。そんなことは光は知らない。
夏休みに突入して4日目。
「……もぅー…いやだ―――!!」
家中に響く怜の声。それは鬱憤が溜まってのことだ。夏休みが入りまだ4日しか経っていない。だが、たった4日しか経っていないのに光に会えず怜は一人イライラしていたのだ。
「宿題も捗らない!…もぅ…どっかいこう…」
自転車に乗り学校方面へと漕いで行く。行く当てはない。だけどただ何処かへ行って時間つぶしをしたい。怜は無我夢中に自転車のペダルをこいだのだ。
学校の前まで来ると、一気に溜めていた鬱憤が消えた。
只、ちょっとグラウンド見ただけで…。
目線をグラウンドの左端にやる。木陰に会いたい人…話したい人が座って寝ているのを見かけた。
(光ッ…)
静かに光に近づく。規則正しく寝息を立てている。
穏やかな午後。日差しが強い。風が少しあるだけで、蒸している。
「…会いたかった……」
呟くだけで響いてしまいそうなグラウンド。怜は少し恐かった。光が起きてしまったらと…。
「……ばぁかぁ…何ここで寝てるん?演劇の台詞覚えなさいよね…」
額を突つき怜は隣に座って光の寝顔を眺めていた。
(いつになれば…この気持ち消えるかな…?)
雲の流がゆっくりで、時間の流れもゆっくりと進んでいく。
「…んーッ……」
腕を伸ばして光はゆっくりと目を覚ました。気付けば寝ていた。
「はッ?」
土がついた手をほろって、再び地面につけたさいに、他の人の手が触れた。振り向いてみると頭の天辺が見えた。
(誰…小さい…小学生?)
静かに顔を除きこむと怜であった。
「あ…亜月!?」
意外な人物に驚いてしまった。いつからいたのか…ある意味で恐くある意味でヤバイところで起きてしまった…と光は思っていた。
「んー…ぁ…あき…ら…」
「俺?」
「…あきらのばーか…。気付け…この気持ち……」
寝言。怜はどういう夢を見てるのだろう。
一方光は、
「気持ち…?」
と混乱していた。
「ん…ふはー…寝ちゃった…おかーさ……えッ!!?」
目を覚ますと目の前には光が居た。思わず「何で…」と言ってしまいたいくらいだった。だが、その言葉を飲みこんでしまった。一瞬にして記憶が蘇る。そう…自分からここに来て光の傍にきたのだ。
「…おれ…お前の母さんじゃない…」
飽きれた顔をしている。怜は「ゴメンッ…」と謝る。
「…今回は許してやる…。けど……どんな夢見てたんだよ?何だよ俺に「ばーか」は無いだろ?それに何だよ俺に「気付けこの気持ち」って…何だよ…お前に馬鹿って言われる筋合いあるかよ…」
苦笑しながら質問してくる。怜は頬を赤くして言葉を失った。言えるわけが無い…。そんなことを言うのは「告白も同然!」だ。
「いや…まぁ…気にしないで…?」
ははっと目を泳がせて笑う。光はそんなのを見逃さなかった。「気になるだろ?」とやっぱり聞いてくる。
「い…いやだッ!!!そんなの言えない!!!!」
怜は逃げ出してしまった。
―チャンスだったのに…―
その日の夜。怜はあの時、「はっきりといえば…」と酷く後悔していた。
「告白すれば良かった…」部屋に余韻するその一言。空しくて、悲しくて、辛くて…この夏早く過ぎて欲しかった。
(…でも…良かったのかな…)
「れーいー!友ちゃんから電話ーー」
一階から母の声が聞こえた。僅かであったが。
「はーい」
駆け足で一階に下りて受話器を手にした。
「怜?あんね、これから花火するの!どう?」
花火…。
暇だし、空しいし…元気になりたいし・・・・・・。怜は「行く」と答えた。
「じゃぁ…私の家に来てね!」
電話はすぐに終了。怜は着替え身支度し、携帯を持って自転車で友果の自宅まで漕いだ。
「はぁ…はぁ…疲れたー…」
「はいー、お疲れ!」
友果の家に着いて、外で待っていた友果にドリンクを貰った。そのドリンクはとても冷たくて気持ちの良いものだった。
「あれ…私たちだけ?」
周辺を見まわしてみると他にいる人が居ないように見える。友果はニヤニヤしながら「ううん。他にもいるよ?これから違うところでやるの」と言って、自転車に跨った。怜もそれにつられまた、自転車に跨った。
「どこ?」
「付いて来な」
付いて行くがまま。怜は何も言わずに只、友果の後ろをくっ付いていくだけであった。
自転車で漕いで数分のところ。それは、昼間に来た学校。
(うッ…よりによって学校かー…)
昼間のことを思い出すだけでもテンションが下がっていく怜。そんなことは知ってか知らぬかの友果。
学校のグラウンドを見ると数人の人を見つけた。
「おまたせー」
手を振って数人のところに近づくと、同じ部の人達がいた。
「大丈夫〜!あらら?どしたー怜っちゃーん?そんなにくらい顔しちゃって」
「ぇ…ぁ…気のせい!何でも無い!元気だよ〜」
元気のある振りをして、裏では元気の無い怜。隠している感情をどう制御すれば良いのか…怜は少し戸惑っていた。
バチバチと音のする線香花火。皆とは外れたところで一人で線香花火をしていた。ちょっとだけ不気味と地味さ、切なさが混じった花火。それでも怜は一人でした。
「…はぁー…」
「ため息ついてどうした?」
「別にー…………はッ!?」
話しかけられて思うままに返事を返すこと20秒弱。怜は仰天をしてしりもちをついた。
「なッ…何しに光が!!!?」
そう、光に話しかけられたのだ。怜はあまりの事に唖然、呆然としていた。しりもちをついた反動で線香花火は落ちてしまった。
(ひ…昼間のこと思い出すから…やめてー…)
もう泣きたい気分。怜は少しだけ目を潤わせて光をみた。
「なッ…何泣いてるの!?俺泣かせた?!」
怜の泣き顔を見て光は、動揺してしまいアフタフしていた。怜は「違う違うッ…」と腕で涙を吹いて光を再度見た。だけど、やっぱり涙が止まらなくて涙を流してしまった。
「…っく…ひッ…ごめ…あきら…ごめん……」
腕を掴んで光に訴えるこの気持ち。
―もう…押さえきれない…―
「わたしは…あきらのこと…す・・・」
「れーいー?」
「ッ!!」
タイミングの悪い時に友果が声をかけてきた。怜は完全に思考回路が止まり、何も考えれなかった。只、「わたしは…あきらのこと…す…」の続きを何を言おうとしたのか考えていた。
―ナニヲイオウトシテイタノ…?―
「怜…何で泣いてるの…?」
「突然泣き出したんだよね…亜月が…」
友果が駆け寄って今の状態を把握した。怜が告白しようとしていたのだ。だけど怜は混乱して何を言うか分らなくなっていた。
「光…悪いけど…怜を送っていってあげてくんない?」
「俺かー…俺で良いのか?」
「えぇ…」
座りこんでいる怜を立ち上がらせて「帰ろう?」手を差し伸べて光は怜を送っていった。
自転車に怜を乗せて光が押している。怜は未だに混乱していた。そして涙ぐんでいた。
重い雰囲気で光は息が詰まりそうだった。だけど…何処か理解してあげたい気持ちがあった。
「あきら……ごめんね?」
「ん…いや平気」
ぶっきらぼうであるが返事は返す光。怜は少しその返事に怯えた。恐かった。
「……さっき…何を言おうとしたの・・?」
「……分らない…自分でも……もう…自分の感情押さえるのに必死で…分らない!!」
沈黙が流れる。この沈黙は大事な沈黙だろう。光は怜を理解してあげたくて、怜は自分の感情を整理するためのもの・・・。
だけど怜はその沈黙は恐いとも思えた。
「もう…ダメだね!私・・・精神弱すぎッ・・・」
沈黙を破って怜は笑って言った。光はビックリして「おまえ何を・・・」と言いかけた。それを遮るように怜は
「私は光のこと好きです!付き合って欲しいです」
その微笑んだ顔はいつまでも長続きはしなかった。顔を俯かせて自転車に降りて
「と…ありがと!じゃぁまたね!」
と、走って光から離れていった。
―とうとう言っちゃった…自分の気持ち―
あれから光には一回も会っていない。そのまま夏祭りへと移り変わってしまった。
「あー…友果が見当たらない…」
浴衣を着て怜は近くの夏祭りへと来ていた。
実は友果と夏祭り行く約束していた。現地集合と言っていたが、中々友果が見当たらず怜は困っていた。
「ごめんなさいッ…・・」
人の波にさらわれて中々思うように前へと進めない。
(進めなッ…むかつくな〜…)
掻き分けて何とかして進んでいる。その時だった。後ろから腕を掴まれて前へとズンズン進めた。
「あッ…あの…?」
顔を上げて腕を掴んでいる人を見た。それは言葉を失いかけてしまう人物だった。
「…光……」
見なければ良かった。少し後悔して少し嬉しかった。
ある程度人ごみから離れたところで腕を放して連れてきた。怜は「ありがとう…」とまともに顔を見ないまま光から遠ざかろうとした。すると光は「亜月…お前…俺の話しも聞いてくれよ・・?」と言った。だが、怜は聞かずに走って光から姿を消した。
「怜……」
逃げていく怜の背中に投げかけた小さな声。光は切なさと辛さで胸が痛かった。
「おっそ〜い!」
「ゴメンッ。母に捕まっちゃったさ!ごめんね〜」
はははって笑いながら友果に話した。
(ゴメンね・・本当は嘘なの…)
心のそこから詫びる怜。本当のことを言うとなんだかややこしそうになりそうで止めたのだ。
「どこいこう〜…って…隣の人……」
「あッ・・・彼氏。ごめんね…彼氏つきだけどイイ?言うの忘れちゃったんだよねー…」
背の高い人でカッコイイ。怜は友果の彼氏を見て「じゃぁ二人で行ってきなよ!私はイイよ?じゃぁ…私違うところ見てくるね!」と言ってまた人ごみの中に入っていった。
「怜ー…はぁ…悪いことしちゃった…」
「人が多すぎ…そうだ…花火大会だからかき氷ととか買ってあそこに行こう〜」
怜は足を速めてあそこへと向かった。
近くの神社。ここからの花火は絶景だった。人が来ることなく静かなところだった。
「やっぱ…静か!」
かき氷を食べてちょっと想い耽っていた。
(羨ましいなぁ…彼氏…私なんて……)
友果の彼氏を思い出して考えてしまった。そうこう考えていると花火が打ち上げられていった。
「キレーー…そういういえば…ここは…友果と良くきてたっけ?今日がはじめてかも…一人で来るの…」
まわりを見渡して幼い頃のことを思い出した。
(失恋した時も…恋をしたときも…喧嘩した時も…・・・どんなときも・・・いつもここで二人で話してたよね・・・もう・・・もう…)
「こんなことないのかな!!!」
つい声にだして叫んでしまった。
「もう…もう…」
涙を流して崩れ落ちる精神。怜は何も考えたくなかった。
「泣くなよ…どうしてお前そんなに泣くんだよ…」
「…ッ…ひ…」
見上げると光が立っていた。目線を合わせるように光はしゃがみ込んだ。
「どうして……そんなに泣いてるんだよ…」
頭を撫でて怜に尋ねる。だけど怜は首を横に振るだけで何も返事は返ってこない。
「泣くなよ…亜月…?」
「…分らないよ!!私だって…泣きたくて泣いてるわけじゃい…」
立ちあがり走ってまた光から逃げ出してしまった。光は走って怜を追いかけた。
「亜月…亜月…怜!!!」
「!!ッ…」
名前で呼ばれてびくついた。怜は振り向いて光を見た。
涙を流して真っ赤。光はそんな怜が愛しく、腕を掴まえて自分の胸元に引き寄せた。
「あき…ら……」
「怜…逃げるなよ……俺の話しも聞いてくれ…?」
強く抱きしめ怜を逃さなかった。
「俺は…俺は怜が好きだ…」
耳元で囁く声はとても低くまた感情を湧き上がらせる。
怜は力のない手でひしりと背中をつかんでいた。
―想いが通じた…―
「光?」
夏休みが開けた2学期。怜は光を探していた。教室行っても部室に行っても見当たらなかった。
「どこいったんだよ〜…」
頬を膨らませながら怜は光を再び探しに行った。
「…いた…」
「ぁ…怜…」
屋上のほうでのんびりと休んでいた光を見つけた。つかつかと光に近寄った。
「探したよ?もぅー…馬鹿…」
「ごめんー。でも…馬鹿って言われる筋合い無しだな・・・ちびっこ…」
笑って光は言うと怜は「ちびじゃない!」と言い張る。
二人は笑って放課後の一時を過ごしていた。
もぅ、泣いたりとかしないよ…
これからは、毎日笑うから…
END
いかがでしたか?
まだまだ未熟です。ですが、これからもっともっと頑張って小説を書いて行きたいです。もしまた、嵐堂逢羅をみたけた時小説を読んで行ってください。
では、今回ここまで読んでいただき誠に有り難うございます。