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《52》香港旅行Part1

 お盆の後だったにも関わらず機内はほぼ満席だったがわりと快適に過ごせ、機内食も美味しかったので、かもめはキャセイにとても満足した。

 ただ、保険を掛けていないからすが途中で脳梗塞を再発したり、エコノミー症候群になるのではないかとずっと冷や冷やしていたので、何とか無事にフライトを終え、香港の空港へ降り立った時には、心底ホッとした。

「無事に着いて、本当に良かったよ!」

 香港の空港は、以前シンガポールへ行く時に、乗り継ぎで立ち寄ったことはあったが、実際に入国してみると、改めて その巨大さに圧倒された。

 この旅行は、ホテルまでの送迎付きのパッケージツアーで。到着ロビーに出て、現地係員を探すとすぐに見つかった。その係員はイギリスネームだったので、かもめは始め香港人だと思ったが、実は日本人だった。

 同じツアーの利用客が到着するまで暫く待たされ(といってもフライトは別便)、揃ってからバスでチム・サーチョイへ向かった。

「すごーい!綺麗な海だね。海の色が翡翠みたいな深いグリーンで超神秘的!」

 空港のあるランタオ島から九龍島までは、海上に建設された高速道路を通って渡るのだが、始めて見る香港の、その美しくエキゾチックな海にかもめはとても感激した。

 それはハワイのような、クリアで鮮やかなブルーの海とは全く違った美しさで、どちらかというと、シンガポールで見た海の色に近い気がした。

 九龍島側へ渡ると、途端に香港らしい高層ビル群が現れ、五十階建てぐらいありそうな超マンションも結構見かけたので、かもめは度肝を抜かれた。

「香港ってやっぱりすごーい!こんな高さのは、日本では絶対に見かけないねー!香港は地震はこないのかな?」

 三人にとっては、見るもの全てが新鮮だった。

 チム・サーチョイでは、送迎のために二、三軒のホテルへ立ち寄ったが、約四十分ぐらいで宿泊ホテルのルネッサンス・カオルーンへ到着した。

「海が目の前なんて最高じゃん!」

 そのホテルは正真正銘のハーバーフロントに建ち、スターフェリーの乗り場もすぐ側、ショッピングセンターにも直結しているという、絶好のロケーションにあった。

 またホテル前にはスター・アベニューという、チム・サーチョイ・イーストまで連なる遊歩道があり、壮大な海の景色を眺めながら散歩することも可能だった。

 からすがチェックインの手続きのためにレセプションへ行くと、それほど混雑していないにも関わらず、恐ろしく手続きに手間取った。

「なんでこんなに時間が掛かるの?」

 結局、三十分ぐらいは待たされたうえ、客室の準備も整っていないというので、更に約一時間近く待たされた。

 完全にホテル側の不手際なので、待つ間にホテル内のレストランで、無料でお茶とケーキが提供され、それを食べながら待った。

 混雑する時期にありがちなことだが、香港のホテルでは日本のようなサービス精神は欠如しているのかもしれないと、かもめは思った(最もこのホテルに限ったことかもしれないが)

 やっと客室に案内された時は、既に四時半を回っていた。時間を有効に使うためにわざわざ午前便で来たのに、かなりの時間的ロスだったので、かもめはとても損した気がした。

 その後は三人とも、全く休まず街へ繰り出した。

 そして予め立てておいた計画に沿って、まずはビクトリアピークの百万ドルの夜景を見物するために、スターフェリーで香港島へ渡った。

「香港に来たらまずはこれに乗りたかったんだ。異国情緒たっぷりでドラマティックー!」かもめは大感激した。

 このフェリーは、香港の名物の乗り物の一つと言われるだけあって、昔風の木製の船内がレトロな感じで、また油臭さが、何ともいえない雰囲気を醸し出していた。

 船室は一階と二階があり、乗船料は二階のほうが若干高かったが、それでも日本円にしたら恐ろしく安かった。

 時間にして約五分ぐらいのショートクルーズだったが、三人とも、十分に雰囲気を味わうことができた。

 香港島へ到着して乗り場から出ると、すぐ前にピークトラム駅へ行くバスの乗り場かあるのだが、運良くちょうどバスが来たので、三人ともそれに飛び乗った。

 トラムの駅で下車すると、そこにはトラムを待つ人達長蛇の列が長蛇の列を作っていた。

「どうする?こんなに並んでるけど行く?」

 時計を見ると午後七時前、ちょうど夕食ということもあって、三人とも一瞬、どうしよようか迷った。しかしチャンスを逃すと、旅行中に百万ドルの夜景を見れずに終わってしまう可能性があったので、長蛇の列に並んで待つことにした。

 最もあとから知ったのだが、オクトパスカードというプリペイドカードを事前に購入しておけば、長い列に並ぶことなく乗車できたのである。

 結局乗車までは一時間近く待ち、マナーの悪いインド人達に押し潰されそうになりながら、ピークトラムに乗り込んだ。

 トラムは急傾斜を登っていくのだが、途中から車体が恐ろしく斜めに傾き、それに伴って山合いから見えるビル群も横倒しになったように見えた。その様子は、まるで映画か何かのようにスリルがあって、圧倒された。

 トラムは数分で山頂にあるピークなギャレリアに到着した。

「まずは腹ごしらえだね」腹ペコのからす一家は、その中にある一軒のレストランになだれ込み、そこで簡単な夕食を取った。

「食いっぱぐれなくて良かったー!」

 その後、お待ちかねの展望台に出た三人は、ビクトリア・ピークの素晴らしい夜景に目を奪われた。この日は快晴だったので、一際だった。

「すごいねー!やっぱり実物は、写真とは比べ物にならないぐらい綺麗、想像以上だよ

 !」

 かもめは興奮しながら言った。

  「宝石を散りばめたような」という表現が正にぴったりの、美しく吸い込まれそうなその夜景は、言葉では言い表せない素晴らしさだった。

 三人ともずっと眺めていたかったが時間には限りがあるので、後ろ髪を引かれる思いでそこから退散し、再びトラムの長い列に並んで乗車した。

 なんと下りは、進行方向と反対向きのまま(登ってきた時と同じ方向)、斜めになって降りるので、ある意味で、登りよりもスリルがあった。

 終点で下車した後バスを待っていると、今度はオープントップバスがやってきた。

 それに乗車すると、高層ビル群の間をぬって坂道を爽快に下り、フェリー乗り場へ向かっていった。

「オープントップバスに乗れるなんて、すごいラッキー!ジェットコースターに乗っているみたいで、気持ちいい」

 かもめは吹き抜ける爽快な風の心地ち良さと、香港の街の夜景に酔いしれた。

 念願のビクトリア・ピークの夜景が見れ、色々な乗り物にも乗ることができたので、かもめは香港滞在一日目としては、上できだと思った。

 滞在二日目は、ツアー参加者なら誰でも無料で参加できる市内観光に、三人で参加した。

 早朝朝出発だったので、朝食はとらずに出かけた。

 バスに乗車すると始め誰も乗っていなかったのが、次のピックアップ場所のホテルに着くと、ドドっと一団が乗り込んできて、いきなり満席になったのでかもめはびっくりした。

 実はその団体は朝食付きコースの参加者で、からす一家より先に集合して飲茶店で朝粥を食べて戻ったのだった。

 市内観光のコースは定番中の定番。

 海底トンネルを通って香港島へ渡り、コンベンションセンター前で九龍島をバックに記念撮影→香港島見物→バスでビクトリア・ピークへ上って昼間の景色を鑑賞→黄大仙→飲茶の昼食→レバルスベイ→健康食品と宝石の店でのショツピング、大体そんな感じの日程だった。

 コンベンションセンター前から眺める九龍島側の景色は綺麗だったが、意外と地味だった。

 一方ビクトリア・ピークの昼間の景色は、壮大なのは間違いなかったが、前日の夜に眺めた『百万ドル』の夜景と比べると、甚だ見劣りがした。

「昼間の景色より、夜景のほうが全然綺麗でドラマティック!」

 かもめは言った。

 ビクトリア・ピークあとには黄大仙(お寺)の見物が予定されていたが、残念ながらこれはお寺の都合で取りやめになった。ここは螺旋状の巨大な赤い線香が沢山ぶら下がっている有名なお寺なので、かもめはちょっとがっかりしてしまった。

 ツアーには無料で昼食がついているのだが、かもめは正直、それにはあまり期待していなかった。

 案内されて向かったレストランはチム・サーチョイ・イーストにあった。店内は特に高級という感じではなく大衆的だったが、雰囲気は悪くなかった。 昼食は一応コースで、前菜→飲茶→炒め物や揚げ物→スープ→焼きそばと炒飯→デザートといった具合に順番に提供された。

 味は全体的に可もなく不可もなくといった感じだったが、マンゴープリンだけはとても美味しかった。

「同じ無料でも、シンガポールの市内観光の時に食べた昼食のほうが美味しかったね。香港のほうがシンガポールより物価が高いからか、素材も今一つみたい。でもこのレストランは海鮮が中心みたいだから、お金を払って食べたら美味しかもね」

 店内にある大きな水槽の中に、所狭しと沢山の珍しい魚介類が所狭しと入っているのを見て、かもめはそう思った。

 満腹したあと、ツアーの一行はレパルスベイへ向けて出発した。

 ここは日本円でいえば江ノ島か熱海かといった場所で、かもめはビクトリアピークと同ぐらい楽しみにしていた。

 到着してみると、そのビーチは九龍の喧騒が嘘のように静かで綺麗だったので、(香港にこんな綺麗な場所があるんだ!)とかもめは感激した。

「そちらの斜面の上の方には、以前ジャッキーチェンが住んでいた白亜の豪邸があります」

 ガイドさんがそう教えてくれたので、写真を撮りついでにカメラをズームにしてよく見ると、確かに大きな白い屋敷があるのがレンズ越しに見えた

 ビーチは穏やかで良い雰囲気なのに、あとからその入口付近に、ちょっと恐ろしいことが書かれた立札が立っているのをかからすが発見した。

 《犬を海に入れないで下さい。サメが来ます》

「こんな綺麗なビーチにサメが来るなんて、信じられない。サメはよく、血の臭いを嗅ぎつけてやって来るっていうけどそれでかな?それにしても日本では観光客が来るようなビーチにサメがくるなんてことはないから驚くね。国によってビーチの様子や生物が違うものなんだね)

 かもめは驚いたと同時に、とても勉強にはなった。

 ツアーの最後はショツピングだった。ツアーを無料にするためにお土産店がツアー会社にマージンを支払い、ツアー会社はお客をお店に連れていくというシステムで、これによってツアーが無料になるのだが、押し売り的なお店が多いので厄介なのだ。

 まず案内されたのは、「宝石城」という名前の宝石工場と併設の直売店。

 以前シンガポール旅行の市内観光の時に、連れていかれた宝石工場と同じ名前だったでもしや系列店?と思ったら、やはりそうだった。

 シンガポールでは、中国人の店員にしつこく押し売りされて閉口した記憶があったので(といっても何も購入しなかった)、かもめは興味のないふりをしてやり過ごし、そのあとの健康食品店でも何も購入しなかった。

 ツアーはそれで解散になり、その日の夜は香港名物の「シンフォニー・オブ・ライツ」を見物した。香港島側の高層ビル群から放たれた色鮮やかレーザー光線が、音楽に合わせて様々に変化するというショーなのだが、これは期待していたほどではなかったので三人ともがっかりした。

 その日最後のイベントである夕食は、ルネッサンス・カオルーン内のビュッフェ・レストラン「パノラマ」で取った。

 中華、洋食、お寿司、シーフード、そしてデザートと種類も豊富で味もまあまあだった。

 ただ閉店が午後九時と知らず、「シンフォニー・オブ・ライツ」が終わってから入店したために食べる時間が一時間足らずで、ゆっくり味わえなかったのが三人ともとても心残りだった。一人約五千円程度と料金も結構高かったので、尚更だった。





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