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《49》教室へ登校できるの?

 むくは中学三年の、始業式の日を迎えた。

かもめは二年前の同じ時期に、家族でむくの将来に夢を描いて入学式に参列した事を、つい先日のことのように思い出した。

 そして残りの一年を心境新たに、むくが頑張ってくれることを祈らずにはいられなかった。

 かもめは一年前と同じように、始業式の日にはむくと登校して、まず保健室へ行った。

 そこには、二年生の時に第二保健室で仲良くなった、芸能おたくの友達が既に登校していた。

「できるだけ、彼女と一緒のクラスになるように考えます」

そう学年主任から事前に言われていたので、かもめはちょっぴり安心していた。

 その友達と一緒なら始業式に参列して、教室へも行けるだろうと考えたからだ。

 しかし始業式が始まり、芸能おたくの友達が参列しても、むくは加わろうとはしなかった。

「ずっと教室へ行っていなかったから、友達が一人もいない。三年生にもなって友達がいないなんて、変な奴って思われるだけだから、やっぱり教室へは行けないよ」

そう言ってむくは参列を拒否した。

「でもそんなこと言ってたら、永久に教室へは行けないよ。保健室で一緒だったお友達も一緒のクラスだし、式に出て教室へ行くんだから、最後のチャンスだと思って、一緒に頑張ってみようよ」

かもめは言った。

「あの人は家が学校のすぐそばだから、通学がすごく楽。だから続きの高校へ行くつもりだと思うけど、私はすごい遠いから、あの人とは違うんだよ  」

結局むくはかもめの意見は聞き入れず、参列もせず、教室へ行かなかった、

この事に限らず以前からそうだが、断固拒否している状態のむくに周りで何を言っても聞く耳を全く持たず、殆ど自分の考えを変えることないので、かもめは無駄だと諦め、それ以上は言わなかった、

「教室へ行けない原因が、学校まで遠いことだけが原因なら、もう一度学校の側に部屋を借りて登校することを考えるか、あとは公立へ転校するしかないですね。もしそれでも教室へ行けないとすれば、何かもっと別の原因があるかもしれませんよ」

学年主任はかもめにそう

(学年主任の言うように、また学校の側に住めばきっと通学しやすいに違nいない。しかし、そうしたらむくが教室へ行くという保証は無いし、とても行きそうには思えない。またむくに振り回されて不確実なことにお金を費やすのは御免だ。それに学年主任の言うように、むくには何か対人関係に関して別の原因がある気がする)

 かもめはそう考えたので、新たに賃貸し直すことはなかった。

 三年生での担任は、ちょっとがたいのよい男性の先生で、以前からむくが知っている歴史の担当で、年齢は二十代後半から三十代前半ぐらい、優しく穏やかなタイプだった。

 暫くの間、むくは週一、二回、保健室へ顔を出す生活が続いた。

「一日一時間でもいいから、教室で授業を受けてみたらどうかな?」

二週間ぐらい経って少し学校に慣れてきた頃、担任の先生がむくに薦めた。

 しかしむくは教室へ行くことは拒み続け、とうとう一度も教室へは行かないまま、一学期の終わりが近づいた。

「今後の進路のことも含めて、一度校長先生が面談をしたいとおっしゃっているので、お二人で学校へ来ていただきたいと思います」

 ある日担任の先生から連絡があり、学校へ面談に行くことになり、日時を決めた。

「とうとう進路をどうするか、決める時が来たね。むくは教室へ行っていないから校長先生から何て言われるか、なんとなく想像がつくよ」

 かもめはここまで来たら、あとはなるようにしかならないと思っていたので、それほど深刻に考えたりはしなかった。

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