《3》公立中学へ転校した~い!
数年前の春、桜が満開の4月上旬にむくが第一志望の私立中学に入学した。
入学した事は嬉しかったけれど、担任の先生がどんな方か、またむくが友人を作り楽しい学校生活が送れるかどうかがとても心配だった。
実際に決められたクラスごとに分かれて教室に入ると、担任の先生は若い女性でちょっと陰険そうな感じだったので不安になった。それに、むくは自分から話しかけたりするのが苦手なので、はたして友人を作れるのだろうか、とこれも心配だった。
しかし入学して間もなく、クラス内で同じ方向へ帰る友人達の中で一人とても気が合って、仲良くしてくれる友人が出来たのである。その事にはむくも勿論だが、以上にかもめも喜んだ。
それからはぎゅうぎゅう詰めの満員電車に揺られながらの通学にも何とか耐え、また1に勉強、2に勉強の学校生活にも頑張った。
そして中間試験では頑張った甲斐があり、(といってもできるだけ努力は少なく、楽して何とかしたいという傾向はあったが、成績も上位の方に位置する事が出来た。
無事一学期が終了し夏休みに入ると、運動部に入部しなかったむくは突然暇になった。最も宿題は各教科から恐ろしく沢山出されたので、そういった意味では忙しく、苦戦はしていたが。
そんな夏休み中の7月末、住宅街の中で行われる夏祭りで暫く付き合いの途絶えていた、小学校の時の友人に再会した。日増しにその友人との携帯での連絡が頻繁になり、かもめはな夏休みの途中ぐらいか何だか嫌な予感がしていた。
そしてある日突然むくが「もう宿題はやりやたくない」と言い始めた。
「それにあの中学は遠いし、満員電車に乗るのも苦痛だからもう行きたくないよ」挙げ句の果てにはそんな事まで言いだした。
なんで突然そんな事を言い始めたのか怪しいと思い、もしやそれは小学校時代の友人とのメールが原因ではないかとかもめは思った。
それでむくには悪いと思いながらもこっそりとむくの携帯メールを見てしまった。大半のメールの内容はむくとはお互いの中学での生活や友人、いじめについて、むく「今の中学をやめて、2学期からはそっちの中学へ転校するから待ってて。いじめはある?」
「ほんと?本当に転校してきてよ。ちょっと意地悪な子もいるけど、私が守ってあげるから大丈夫」
と友人。そんな会話がメール上で交わされていた。
かもめは単に懐かしいとか、冗談で言っているだけかと始めは思っていたが、むくの様子が日増しに可笑しくなり、全く残りの宿題に手をつけなくなった。そして「絶対に、行くはずだった公立中学へ行くから、もう今通っている中学へは行かないよ」と言い張るようになっていったのである。