《36》むく、カウンセリングに通いはじめる
大学病院で診断を受けてからは、再び近くの診療内科へ通った。
むくが自分の気持ちや悩みを何度か先生に話すうちに、むくの悩みの多さを理解してくれた先生は、むくにカウンセリングの提案をした。
「ここには毎週カウンセラーの方来ているので、カウンセリングを受けてみる?」
「受けてみたいです」
常に悩んでいて、様々な事をどうしたらいいのか自分でも解らないむくは、とりあえず賛成した。
かもめはカウンセリングを受ける事自体は賛成だったが、カウンセリングを受けるには 1時間8000円も必要なので、まず費用のことが気になった。
からす宅では住宅ローンの支払いだけでなく、賃貸マンションの家賃や、むくの私立中学の学費をも払わなければいけない上、毎週カウンセリングへむくを通わせるのは、この時点ではかなり痛手だったのである。
しかしだからといって、ほっておいてもむくの鬱病はが良くなるわけではなかったし、少しでも早く病気を治す必要があったので、むくにカウンセリング受けさせる事に決めた。
とにかくむくにとっては大事な時期だったので、病気を長引かせるのは良くない、とかもめは思った。
カウンセリングは翌週から受ける事に決まった。
通常はその医院で受けるのだが、初回はカウンセラーの方の都合で、代官山にある、クリニックタワーの一室で行われる事になった。
たそこはカウンセラーの方が、その医院以外に、メインでカウンセリングを行っている、カウンセリングルームだった。
初回のカウンセリングはインテーク面接(導入)といって、カウンセラーがクライアントについての情報収集の為の面接なのでむくの保護者であるかもめとカウンセラーで、行う事になった。
当日代官山へ行くと、カウンセリングルームのあるタワーは駅前に建ち並ぶ、高層マンションのうちの1棟で、かなり立派なビルだったのでちょっとびっくりした。
そのビ全部ではなかったが、途中の階まではクリニックがびっしりと入っていた。
初回のカウンセリングでは、かもめはカウンセラーの質問に沿って、むくが生まれてから幼児期までの、身体的な発達状態(言語、歩行等)、また、幼稚園から現在までの日常や学校生活での行動面や、対人関係について詳細に説明した。
カウンセラーに、むくの事について説明していくうちに 、改めてむくが生まれてから、中学生になるまでの間には、かなり多くの問題行動や対人的トラブルがあったのだ、ということを改めて思い知らされた。
カウンセラーに伝えなければいけない事がとても沢山あったので、面接予定の1時間ではとても時間が足りず、結局時間を30分ぐらいオーバーして、むくのことをカウンセラーに説明した。
ここでのカウンセリング料は、いつもの医院で受けるよりは高く、1時間で1万円だった。
時間がオーバーすると、15分ごとに1500円の追加、30分だと3000円の追加料金が
必要だった。
しかし初回はカウンセラーの方の裁量で、1時間分の料金だけを支払って終了した。
そしてむくのカウンセリングは、翌週からに決まった。