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《34》再び診療内科へ

 宿泊学習の当日、何となく嫌な予感に襲われながら、いつものように寝起きの悪いむくを起こすと、

「今日はお腹が痛いから、宿泊学習は行けそうにないよ」

とむくは言った。

「そんな事言ってないで、できるなら行ったほうがいいよ」

むくが宿泊学習へ行きたくないから口実にそう言っている気がして、何度か行くようにかもめは言ったが、結局聞く耳を持たず、宿泊学習は欠席してしまった。数日前からの不安と予感が的中だ。

その頃のむくは、確かにかなり精神状態が悪かったことおあるが、一度「行かない」と言い出したら、それを簡単に変えるむくではなかったので、かもめはあえて無理強いしなかった。

しかし、この旅行を欠席してしまうと、クラスに友人のいないむくは、再度通常授業が始まった時に宿泊学習等の共通の話題が持てず、更に学校へ行きにくくなるのでないか、という不安は過った。そしてまたもやその予感は的中してしまった。

宿泊学習が終わって授業が再開されても、むくは学校へは行こうとしないで、約1週間欠席した。

しかし、いくら何でもその翌週には行くに違いない、と思っていたが、それは甘かった。ひき続きむくは、学校へ行こうとしなかった。

始めのうち、学校へは体調不良で欠席と連絡していたが、いつまでもそれで通しているわけにはいかなくなり、かもめは担任の先生に電話を掛けて簡単に事情を説明し、これからの事を相談する為に、学校へ出かけた。

相談の結果、むくを無理に教室へ行かせる訳にはいかないので、暫くまた、保健室へ登校させて様子を見ることになった。

それと同時に、むくの精神状態を治さなければいけないので、再び心療内科を探し始めた。

前回同様、子供の診察が可能で女医さん、という条件で探すと、なかなか病院は見つからなかったが、パソコンで検索しているうちにこれは?という病院が見つかった。

早速、電話を掛けて尋ねると、条件に一致していたので、約1週間後の6月初旬に診察の予約をお願いした。

(これでやっと、むくも元気を取り戻せるかも?)

と、かもめは少しほっとした。

予約当日に診療内科へ行くと、前回と比べものにならないぐらい狭く、待合い室は3、4人座っただけで一杯の感じだった。

初診なのでむくと二人で診察室へ入ると、40代ぐらいの、とても優しそうな女医さんだった。

むくの症状について先生と話しはじめると、これがまた信じられない優しく、穏やかな口調。心地良さで眠くなってしまいそうだった。

精神科医と話すと、こんなにも癒やされるものなのか?特別なオーラがあるのかも?ちょっとかもめはびっくりした。

その日はむくが中学に入学してからそれまでの、学校での様々な出来事や精神的な状態、賃貸二重生活、そしてからすの病気(脳梗塞)等についても一通り話した。しかし、精神的な病の診断は難しく、診察を一度しただけで直ぐに診断は出来ないらしく、何度か診察に通ってから、診断を受ける事になった。

ただ、むくには自殺願望や強い衝動性があったので、念の為に弱い精神安定剤だけは処方してくれて、夜間に精神が不安定な時だけ、服用するように言われた。

その診療内科で、むくはその後三回診察を受けて、その結果、

「鬱病かもしれない」と先生から告げられた。

その診断の日に、(数ヶ月前にテレビで見たアスペルガー症候群の子供と、自分の特徴がとてもよく似ているので、きっと自分もそうじゃないか?)、とむくが思っていることを先生に伝えた。

「それはないと思いますよ」

先生は言ったが、むくは絶対にそうだといい、納得しなかった。

それで先生の友人で、某大学病院に勤務する女医さんを紹介してくれて、アスペルガーの検査も含めて、こんどはそちらで受診することになった。

その先生は主に子供の精神状態や発達障害等が専門で、それらの研究をされている方とのことだった。

予約した日時に大学病院へ行くと、それ程混んではいなかったが、診察予定の時間から30分は待った。

精神的な病気は先生と患者さんとのコミュニケーションが重要なので、ある程度時間が必要だし、話しの具合によって長引いたりするのは止むを得ない、とかもめは思っっていた。しかし、むくは多少イライラしていた。

順番が来て診察室へ入ると、先生は50歳前後の女医さんで、雰囲気がどことなく美智子様に似た、上品で優しそうな方だった。

この先生もやはり話し方からしてもの静かでとても優しく、むくの大量の愚痴、呪いに満ちた話し、自殺願望、その他の様々なことに、しっかりと耳を傾けてくれた。

むくはこれ以上はないというぐらい言いたい事を喋ったので、予約の1時間はあっという間に過ぎてしまった。

その約1週間後に、2回目の診察を受けた。2回目もむくは同じように先生と沢山の話しをして、むくについてだいたいは理解してもらえ、その日の診察の最後にむくが鬱病うつびょうである、との診断が下された。

またむくが以前から気にしていた(自分はアスペルガー症候群では?)との疑いについても、先生と話していたので、その検査は次回に行われることになった。

まず検査の手始めとして、「注意欠陥他動性障害」についての検査用紙を渡されて説明を受けた。

「私はアスペルガー症候群だと自分では思うんですけど?」

なぜ別の検査をするのか疑問に思ってむくが尋ねた。

「あなたのお話しを聞いて、あなたは授業中に立ち歩きをしたり、落ち着きがないというので、アスペルガー症候群よりは、どちらかというと注意欠陥他動性障害のほうに近いように思うので、まずこの検査をしてみようと思うのです」

質問は対象者の生後から現在に至るまでの行動や性格的特性、コミュニケーション能力等多岐に渡るもので、それについて保護者(養育者)が、該当項目にチェックするというものだった。

「注意欠陥他動性障害には様々なタイプがあり、全般的には注意力が欠如している、飽きっぽく落ち着きが無い、授業中に立ち歩きをしてしまうといったような特徴があります。中には注意力だけが特に足りなくて、忘れ物が多い人もいたり、女の子の中には興味のある事に対しては、異常なまでの集中力を見せ、頭の切り替えが上手くできないタイプもあります。まず今回は、その検査をしてみましょう」

そう先生はおっしゃった。

検査用紙の質問の回答は、かもめが自宅で行い、次回の診察の数日前までに先生の自宅へ郵送しておき、診察当日に先生から検査結果の診断を受けるという話しだった。


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