《27》攻撃されたむく
クラスメート二人との話し合いをした翌週の土曜日に、それは起こった。
むくの学校は毎週土曜日の午前中にも授業があるのだが、その日の午後むくが帰宅すると様子が可笑しかった。
「学校で何かあったの?」かもめは聞いた。
「授業の後の掃除の時間に、クラスの4人組から酷い事を言われたんだよ」
そう言ってむくは泣きだした。
「掃除してるのに『ちゃんと掃除しろよ』と、いきなり文句を言ってきたんだ」
「あんた達だって、喋ってばっかりで掃除してないじゃない」
とむくは言い返した。
「あんたみたいな問題児がいると、クラスの雰囲気が悪くなるから嫌だよなー!この学校に来なければいいんだよ!」
「それにブスのくせに可愛いつもりでいるしさ」
と4人組は、むくに言いたい放題を言った。その4人組は普段から意地悪く、人の悪口が多かったのでむくが嫌っていた子達だった。
「うるさい、黙れ!自分達だって話しばっかりしてて、全然、掃除していないだろ!
「それにあんた達は、いつも人の悪口ばかり言っているような最低の人間だよ!そんな奴らに言われる筋合いなんかないね」
そうむくは言い返し、机を蹴ってその場から走り去った。そして、一人になる為にトイレへ駆け込んだ。暫くトイレに籠って落ち着いた後むくが教室へ戻ると、ホームルームが始まっていた。
むくがいないのでおかしいと思った担任が、クラスの生徒達から掃除の時間のトラブルについて、ちょうど聞いている最中だった。
「あなただけが掃除をさぼっていたので、何人かで注意したと生徒達から聞きました。何故ちゃんと掃除をしないのですか?それに今もまた、何処へ行っていたのですか?!」
皆からの話しでむくだけがさぼっていた、と決めつけた担任はそう言った。
「私はサボっていません」
と担任に言い、クラスでのでき事を説明した。しかし、担任は聞く耳は持っていなかった。とにかくむくだけが悪いと決めてかかり、皆の前できつく注意をされた。
12月のむくの携帯電話事件以来、担任はむくの事を嫌って、よくは思っていなかったので、この事で更に印象を悪くしたようだった。
4人組の中の2人は、むくが相手に送った携帯メールの中で、いつもその二人が悪口を言っていることを、名指しで載せてしまっていた相手だった。
その後のむくの、謝まり方が悪かったことを根に持っていたかもしれない。またその二人は、クラスメートの悪口を言ったり、苛めをしていた事をむくに暴露され、担任からも注意されたので、更に恨んでいたようだった。機会をみて仕返しをしよう、と話していたのかもしれない。
結局その日の事は、むく一人が掃除をさぼった悪い生徒という事になり、酷いことを言った四人組は何の“おとがめ”も受けなかった。
その話しを帰宅したむくから聞いたかもめは、担任の先生から誤解を受け、またクラスメートからの酷い言動をほおっておいてはいけないと、担任の先生に電話をして再度事情を説明したが、やはり先生は全く聞く耳を持たなかった。
「お嬢さんだけが掃除をさぼっていたので、クラスの子達に注意されたのです」
「でも本人はちゃんと掃除をしていたと、言っていますが」
「一応他の先生にも聞いてみたのですが、やはりお嬢さんは掃除をしていなかったと言っていました」
その先生が他のクラスの様子をずっと見ている訳はないのだが、結局先生はこちらの言い分など聞く気がないので、何を言っても無駄だ、とかもめは思ってそれ以上言うのを止めて、電話を切った。
むくが友人から酷い事を言われても、そちらに非があるのだからそう言われても当然、といったような対応だったのである。
携帯事件の後からの、担任のむくに対する対応の悪さが影響して、クラスの友人たちのむくに対する態度にも影響が出始めた。その頃から徐々に友人がむくから去り始めていたのである。
かもめには次なる不幸が、またむくに訪れる予感がしていた。