《1》むくの幼少期から小学校時代
娘の〈むく〉は高校生。夫〈からす〉は数年前に40代にして脳梗塞を発症。成人病など、病気に繋がるような下地は全く無かったので、発症の原因は不明である。
この病気との直接の因果関係は無いのであるが、この物語自体に深く関わっている私立中学受験とむくの幼少期から小学生時代について少し触れておきたいと思う。
むくは今から約16年前の冬のとある日に誕生した。幼稚園時代から小学校の低学年にかけては我の強い一面もあったが、友人関係はわりと引っ込み思案で、人見知りが激しく友人を作るのは苦手だったりした。
それでも何とか友人を作り、また環境的にも恵まれて大きな問題も無く幼稚園や小学校生活を送ってこれた。しかし後から思い返してみると友人との小さな問題やトラブル、また問題行動は沢山あったような気がする。
かもめはむくを全く甘やかしたりしては育てなかった、というよりむしろ厳しく、でも愛情を持って他人への思いやりや優しさなど、様々な事を教えて育ててきた。だから、むくがそういう態度を取るようになるとは全く想像していなかった。何故そういう態度をするのか、また全く他の人に合わせようとしないの何故なのかはとても謎だった。
とにかくかそういう風な性質が前面に出てしまい、友人はいても小さなトラブルは絶えず起こし、人と上手く関わるのが苦手だったのである。
それから異常に面倒くさがりやなところがあり、掃除や委員会の仕事などをさぼる事はしばしばだった。
先生に「委員会の仕事をやりましたか?」と問い詰められると「ちゃんとやりました」とすぐばれる嘘をついて、平然としている事も度々あった。
先生からそういう話を聞いたので、なんでそんな嘘をつくのかむくに尋ねると、いつも「面倒くさいから」という返事しか返って来なかった。
ただ、頭はわりと良い方で、学校での成績は低学年から5、6年生を通して常にクラスの上位の方だった。
だからむくが小学校4年生になった時にかもめは、むくは友人作りが苦手だが、勉強は比較的できたので私立の中高一貫校で大学まで併設しているような中学へむくを進学させれば友人作りにも苦労せず、むくが楽しい学校生活を過ごせるのではないかと考えた。
またむくもかもめのその意見に賛成し、中学受験をしてみたいと言ったので、その時は漠然としていたが中学受験専門の大手のN塾に小4から通い始めたのである。