《14》やっとリハビリ病院へ転院
からすの転院先は一生懸命探したけれど、個室に空室がない事と条件が合わないのとで、なかなか見つからなかった。約1週間探しても駄目だったので、さすがにからすが焦り始めた。
「リハビリを始めるのが遅くなると、食べる事が出来なっちゃうよ」
「遠くの病院でもいいからとにかくすぐに入りたい!」
からすの焦りはピークに達していたし、その気持ちは痛いほど理解できた。(でもからすは待つしかないの?)
と諦めかけていたら、ケアワーカーの女性から、からすに連絡が入った。
「何軒か転院をお願いしていた病院のうのちの1つに、急に空室が出たそうです。」
「もし、その病院に転院を御希望であれば、奥様と御相談されてから、直ぐに私にお返事を下さい」
との事だった。
その病院は転院先の第一希望で、都内にある病院だったのでラッキーだった。ただ空いたのは4人部屋。からすが希望していたのは個室だったが、だいたいどの病院でもよほど高い部屋以外は直ぐには空室がない状態だった。だから、からすと相談して取り敢えずそのリハビリ病院の4人部屋へ入院させていただく事に決めてケアワーカーの方に連絡をした。
その後先生と話しあって転院はその電話から3日後に決定。
転院先はからすの入院していた病院から、タクシーで20分位の距離にあり、からすの会社からも比較的近くだったの事も重ねてラッキーだった。
からすは転院の日を待ちわびながら、一方では病室で出来る嚥下障害のリハビリや、我慢して鼻からの流動食を行って1日でも早く点滴が外せるように努力していた。
リハビリとしては氷を舐めて喉に刺激を与え、嚥下反射(飲み込みを促す)を促す事や、口の筋肉を使った体操等で、嚥下障害のリハビリとしては一般的な訓練だった。そして様々な努力の甲斐があって、からすは何とか退院までに点滴を外す事が出来た。
「これでやっと退院できる。長かったね~!」
「ほんとだよね~!早く食べられるようになるといいね」
入院から24日目の11月17日にやっと念願かなって退院し、同じ日にリハビリテーション病院へ転院する事ができた。
退院当日はからすの顔は晴れ晴れとしていた。本格的なリハビリができればきっと回復する事ができると希望を胸に抱いていたのだろう。
「退院は嬉しいけど、気になるのは今までの入院費だよね」
「保険を掛けているからいいけど、一旦は自分で立て替えなければいけないしね」
からすの退院は嬉しかったが、入院費がどのくらいなのか支払いについては恐ろしいかもめだった。
退院前日に渡された明細書を見ると入院費は約47万円。
からすの会社の健康保険組合のシステムは、入院した場合は費用を一旦自分で支払っておき、1、2ヶ月後に健保から還付されるシステムだと聞いていたので、まずは自費で支払っておく必要があった。
最近はある程度大きな病院では入院費がクレジットカードで支払えるので、カードで全額を支払う事にした。そうしておけば入院費の決済が先送りになり、健保から還付される時期とそんなにはずれないのでうまくいけば投資信託をわざわざ解約しなくても、支払えるという計算を働かせた。すぐにお金を用意しなくてもよいのだから、クレジットカードとは便利な代物だと改めて思った。
支払いの後は病室で使用していた身の回り品をまとめ、病院から渡された、転院先のリハビリ病院へ提出する資料一式(MRIの画像等)を持ってエントランスへ向かうとそこには看護師さんやソーシャルワーカーの人達が見送りに出て来てくれていた。挨拶をしてからタクシーに乗り込み、からすもかもめも苦しい思い出の病院を後にした。淡い希望を胸に抱きながら…