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最終話

 久し振りにブリストン公爵家別邸に行った。子連れで、しかも2人。お腹の中にも居るから、実質3人か。伯爵家から私の専属侍女とか、2人目をお願いしている乳母さんとかも引き連れて、ぞろぞろと行きましたよ。ナニーさんなんて、私も出世しましたね。ナニーでナニした、とか言ってたエドガーを冷たい目で見ていたのが懐かしいです。勿論冗談だよ、と若干焦り気味に言ってたのが、ハゲのくせにちょっと可愛かったですが。

 そんなエドガーが1カ月ほど国外出張という話を、どこからともなく仕入れたロゼッタが、じゃあ私のとこに泊まりに来ない?ということで。彼女とは相変わらず茶飲み友達で、毎月のように会っている。お互いに子供ができて、しかもロゼッタは私と違って社交もしっかりしているみたいだから、そんなに余裕は無いだろうに、何かと私を呼ぼうとするのだ。貴族のサロンなんてなぁ、勿論なんちゃって伯爵夫人なんぞお呼びじゃないだろうし、私も関わろうとは思わないんだけど、全く関わらないのもどうかな、ってことでロゼッタとだけは続けている。


 伯爵家タウンハウスの使用人たちには、交代で休みを取るように伝えて、私たちは向う1月公爵家別邸にお世詰になることに。で、それを聞きつけた王妃様や、御婦人方が勉強会という名の秘密サロンを開きにやってくるという。いや、私社交はちょっと。ああ、例のアレですか?

 好きよねぇ、貴女達も、と思った私は悪くない。


 何回もやってますからね、かなり濃いやつも。私としてはもうネタ切れです。でも参加者の世代が少しずつ変わってるのは気のせいかしら。まあ、貴族夫人が娘や嫁に直接手ほどきは、流石に出来ないか。私の存在が、きっと便利なんだろう。もう出向いてまではやらないんだけど、たまにロゼッタとの茶飲みついでに公爵家別邸で話す程度かなぁ。今回も数か月ぶりのはずだ、あまりちゃんと覚えていないけど、ロゼッタに聞けば分かるはず。


 久々の勉強会の後、ご婦人方がご満悦で帰られる中、これまた久々の王妃様が残っていた。改めて考えると、唯一の茶友達が公爵夫人で、王妃様が参加するサロンに講師で呼ばれてる、って凄いな。言われても『あ、そうですね』くらいしか感想が出ないのがこれまた。まるで他人事だな。あんたのことだよ、って言われて、ええええ!みたいなやつ。たまに身請けでもそんなのあったなぁ。数年しか経ってないのに、なんかもう娼館が遥か彼方のようにも感じる。

 ああ、ついつい現実逃避。王妃様ったら、私の子供が見たいらしい。いや、うちの子は確かに可愛いんですけど、貴族じゃ珍しくもないだろうに。親戚のおばさんか何かですか、王妃様。


「今度は王家の保養別邸に泊まらない?」


 私から子供に視線を移す王妃様。


「お母様の銅像もあるのよ」


 銅像、ああ、そんな話もありましたねぇ。って、本気で作ったんですか。


 タチの悪いロイヤルジョークとばかり。


「おうひさま、おかあさまのどうぞうがあるのですか?」

「そうよ」

「みてみたいです」

「そうよね、見たいわよねえ」


 王妃様、うちの子供と一緒にいい笑顔。


 …卑怯ですぞ、子供をダシに使うのは止めていただきたい。


 で、銅像を見に行くことになった。王妃様は泊りじゃないのを悔しがっていたが、悔しがるところですか?そこ。また泊まりに行くことを約束させられました。いつぞやの浴場での実技研修が忘れられないとか。ちょ、子供の前で言わないでください!浴場で欲情とか、オヤジですか貴女は。


 銅像は、想像以上にリアルでした。というか、大きくないですか?色々と。私ここまで盛ってないですけど。イメージよ、イメージ、と王妃様は笑ってましたが、子供がびっくりしてましたよ。


 びっくりした上の娘が、私に向かって一言。


「おむねがちいさくなったのですか?おかあさま」


 小さくなってないから!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


最後に、ちょっと蛇足になりそうですが、そもそも何故娼婦のティアナと侯爵令嬢で公爵夫人のロゼッタが知り合いになるようなことがあったのか、裏設定?みたいなものを。


~~~


貴族を相手にするような高級娼婦は、実は高位貴族がパトロンとしてついていることが珍しくありませんでした。

ハニトラというわけでもないですが、情報源のひとつとして飼っておく、というのは常套手段だったのです。なんせ、男が一番油断する瞬間なので。

一方で、娼婦は高級と言えども社会的には底辺層の人間なので、発言の社会的な信ぴょう性は低く、存在が消えても金さえあれば容易に解決できます。つまりとても都合が良い。

ロゼッタが悩み事を抱えていた、それに気付いた家中の者が、他家との繋がりが無いのを確認したうえで、都合の良い駒として娼館の婆を通じティアナをお膳立てした、というのが2人の出会いの真相でした。

娼館生まれで花街しか知らなかったティアナも、高位貴族の裏事情まで教えられていなかったロゼッタも、出会った当初はそんな事情は知りませんでした。


あと、直接的な記述はしていないですが、エドガーはもちろんロゼッタの縁者、しかも気安く会話できる程度の、です。流石にそうでなければ、ティアナの身請けは出来なかったでしょう。

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