8話
また訪問してきた皇妃様は、今度は自分の妹君を、まあ帝国の侯爵夫人だそうですが、連れてきておりました。何やらお悩みを抱えているそうで。
「あの、私」
完全にお悩み相談室になってるなぁ、この茶会。参加の御婦人方の視線も温かいんだよねえ。身分は違うけど、娼館の面倒見の良い世話役姐さん達と通じる雰囲気があるな。
「私、どうしても殿方が好きになれなくて」
はい特大のネタ来ましたー。盛り上がらない、そこ。
「旦那様との営みも、初夜以来していなくて」
妹君は、ぽつぽつと話し始めた。
「理由も聞かずに旦那様は待ってくださるんですが、騙しているようで申し訳なくて、辛くって。でもいざ床に入ると、痛いばかりだった初夜を思い出して涙が出てきて」
うん、辛かったのは分かるけど、ここで泣かれると話が進まなくなるので、話を変えよう。私が帰った後で、是非とも皇妃様とかに慰めてもらってください。
というか、そっちは専門外なんだけど。
「ん一、一旦話を変えましょう。貴女が、何と言いましょうか、性的に、好む人物像って、ありますか?」
妹君は、私の問いに戸惑っていたが、やがて心を決めたように、はっきりと言った。
「お姉様です」
「はい?」
「私の理想、お姉様なんです」
「え一っと、お姉様っていうことは、皇妃様?」
「…はい」
そこ盛り上がらない!あと皇妃様、唖然としていますけど、大丈夫ですか?
そこからは妹君の独壇場だった。ずっと、ずっと心の奥にしまっていたのだろう。何でも良いから、臆さず隠さず言ってみなさい、私もそうしたのよ、とは皇妃様も言ってはいたが、完全に弾けた感じだな、これ。また機密が増えた、というか通訳さんがヤバい、無になってる。
これなぁ、物語とか他人事なら気楽に騒げるんだけど、いざ自分の立場になったら、しんどいどころじゃないなあ。特に独身を通せる平民ならともかく、婚姻と跡継ぎ出産が義務に近い貴族令嬢の場合は、死活問題になる。直系にこだわる家だと、最終的には自分を殺して男を受け入れるしかないわけだが、きついと思うなあ。
…ある意味娼婦よりキツそう。
「もうさ、正直に旦那に言ってみたら?」
「え?」
「私は女しか愛せないんです、って言ってみたら、ってこと」
「で、でもそれだと跡継ぎが」
「でも今のままでも出来ないでしよう?」
「そ、それは…」
言葉に詰まる妹君に、御婦人方が思いついたことを伝えていく。
「それでしたら、お姉様、皇妃様の好きなところ、さっき色々とお話しでしたけど、その一部でも、旦那様に身に付けてもらうとかは如何でしよう」
「そうねえ、愛する愛さないはともかく、跡継ぎを作るにはするしかないから、どこか好みの部分を見つけて、最中はそこに集中するとか」
フェティシズムの思い込み作戦ですね、まあ悪くは無いでしょう。
「話のとおり優しい旦那様なら、ちょっと協力して欲しいって頼めば、してくれると思うけどなあ」
3か月後、また皇妃様が茶会にやってきた。この方ちょっと来過ぎじゃない?
で、会うなりまた抱きしめられた。
「ありがとう!貴女には本当になんとお礼を伝えれば良いか分からないわ!」
ぐえ、皇妃様苦しいです。
想いを隠さなくなった妹君は、お姉様と雰囲気の良く似た女性騎士を護衛に雇った。皇妃様の同僚でもあったというその女性騎士は、皇妃様姉妹の要望を受け、妹君と疑似恋愛をすることに。結果、女性騎士が新たな性癖に目覚めたり、事実を知らされた旦那様が失意を乗り越え奮起して体を鍛えたりと、色々あったらしいが、何とか旦那との同袋にも成功したらしい。相変わらず性的な意味で旦那を愛してはいないようだが、跡継ぎは作れそうだ、とのことで。
そんなこんなで、私と旦那様とのやり取り。
「帝国貴族の名誉爵位って、どういう名目で渡そうとしてるんですか」
「両国の親善における多大な貢献を称し、って書いてあるけど」
いや、文面は分かるんですけど、分かるんですけど!親善なの?これって親善なの?
「裸の付き合いも親善のうち、だろう?」
旦那様、言うことがオヤジ臭いです、まあオッサンですけど。
あとはあれか、私の銅像、って誰得ですか?しかも王家保養別荘に設置、ってまさかあの王族銅像の並びに入れるんですか?王族じゃないからそれは無い、エントランスの端に置く予定、って馬車停めの真横じゃねえですか、減茶苦茶目立ちますやん!端って、端って!国賓来る度に羞恥プレイですか!




