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7話

 嵐のようだった帝国の皇妃様来訪は、何とか終わった。

 検閲が入る可能性もあるから、手紙でうっかりしたことも書けないのは分かるが、それにしてもやり過ぎだと思う。しばらくは穏やかに過ごしたい。


 しかし、皇妃様の来訪は、半年後、と言っていたのが、急遽3か月後になった。しかも前回はほぼお忍びだったのに、今回は大行列でやってきた。しかも旦那付き。王宮は歓迎準備で目が回っていたが、それ以上にヤバかったのは私の周囲だ。


 私の旦那は貴族で伯爵位を貰っているが社交をしない。つまり、どうでも良い噂やら醜聞やらの情報が入らない。普段ならそれで構わないのだ、最低限の話は勉強会でロゼッタや王妃様が教えてくれるし、困ったことは無かった。

 しかし今、私は若干困っている。


 妙に私の周囲を探るのがいるなあ、と思っていたら、王妃様直属の近衛部隊が私のいる屋敷を取り囲んだ。何事?と若干動揺していると、帝国の暗部が私の動向を探っているらしく、万―があってはいけないからと、王妃様が一個小隊を派遣してくれたらしい。一個小隊って、やり過ぎですよ王妃様。と思っていたが、あながちやりすぎでもないような気もしてきた。というのも、日に日に探る人数が増えているのだ。気配も明らかに素人のそれではない。花街の用心棒よりも、もっとヤバそうなのがいたときには、流石に私も驚いた。


 そんな中、皇妃様から、私宛に直接私信が届いたのだった。


 厳重に封がされていたその私信は、帝国の使者を連れた皇妃様腹心の、あの苦労性侍女様が、これまたあの不憫な女性通訳さんと共に届けてくれた。帝国の使者がまず挨拶をし、皇妃様の私信がある旨を伝える、そして、その私信を持った侍女様が、私に直接手渡しで渡してくる。その場で開封し、皇妃様の御璽が押されていることを確認し、私信の受け渡しは完了する。確認と言ったところで、そもそも私は皇妃様の御璽がどんなものか知らないので、まあ形式的なものだが。

 帝国の使者は馬車で待機すると言い、話があるからと、侍女様と通訳さんだけが屋敷の応接間に残った。侍女様が勧めてくるので、まずは私信を読ませてもらった。時候の挨拶から始まり、先日の訪問時の歓待に感謝する旨、そして次回の訪間を前倒しする旨が、流暢な王国語で書かれていた。皇妃様直筆とかいうのに王国語で書かれていることに驚きは感じたが、これくらいの内容であれば、王妃様経由で伝えるだけで充分だろう。ということは、恐らく伝言があるはずだ。ということで、私は話を聞いた。


 通訳さん経由で侍女様に聞いたところでは、皇帝陛下の指示で、私の身辺調査が入ったこと、そして私の元の職業を把握した元老院とひと悶着あったが、そこはちゃんと収めたこと、一部の過激派が私の排除に動いたため、王妃様の許可を得たうえで帝国暗部が警護でついていたこと、やっと解決の目途がついたので、使者を送ることができたこと、そして、最後に、半年後だと身動きが取れなくなっているかもしれないから、訪間を前倒しして申し訳ない、とあった。


「差し支えなければ聞きたいんですが、半年後に何かあるんですか?」


 そう聞くと、侍女様はニヤッと笑った。あ、これはひょっとして。


「ご想像のとおり、進展がありましたので」


 しかも、先月は月のものがあったらしいが、今月は遅れているらしい。もうね、嬉し泣きしてる皇妃様の顔が浮かぶわ。確定もまだだし、悪阻が始まるとしても、もう少し先だが、確かに半年後では安定期でも動けないだろう。というか、皇帝陛下が許可を出すとは思えない。


 かくして、皇帝皇妃両陛下の公式訪間の日を迎えた。歓迎式典もそこそこに、セッティングされた茶会の席。私は感激の涙を流す皇妃様に抱きしめられていた。


「ありがとう、本当にありがとう、貴女のお陰よ、本当にありがとう」


 そう言えば王妃様の時も、隣国の王太子妃様の時もこうだったなぁ、と思いつつ、こ、皇妃様結構力強いわ。


「皇妃様は元騎士だからね、抱き漬されるわよ」


 いやいやいや!王妃様冗談にしてはプラックすぎますけど!


 というわけで、また半日、今度はひたすら皇妃様と王妃様のノロケ合戦でございました。もうね、そんなことで張り合わないで欲しいです。隣国の王妃様も参戦しないでいただきたい。ほら、貴女のところの嫁みたいに空気読んでくださいな。皆様も煽らないで。


「は一、疲れましたわ」


 家に帰って、エドガーと話をしていた。


「お疲れ様、しかし凄いねえ、とうとう帝国皇妃様の覚えもめでたくなってるじゃないか」

「別にめでたくなくてもいいんですけどねえ」


 こんな夜会にも出ない変わり種の夫人なのに、ねぇ?


 それから約1年後、無事跡継ぎの男児に恵まれた帝国皇室は、歓喜に湧いた。

 そして、私の元に、帝室から手紙が届いた。さっぱり扱いの分からない私は、旦那に相談した。


「これ、どうします?」

「どうするって、君のだからねえ」

「幾らなんでも、身に余るんですけど」

「ははっ、くれるって言ってるんだから、貫っておけば?」


 私の旦那、前から思ってたけど、おおらか過ぎん?

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