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4話

 結局私は、某茶会に特別講師として、ロゼッタにエスコートされて参加した。ロゼッタがエスコートすることなど、王妃以外に無かったらしく、事前に身上の説明は受けていたとはいえ、茶会の参加者は色んな意味で驚きを隠せていなかった。


 多少のイロモノ扱いはね、まあ誰だって全然系統が違う人がやってきたらそう思うだろうから、そこまで不快に思うようなことはなかったんだけど、やっぱり場違い感が半端ないわ、ここ。


 その茶会の参加者は、どう見てもイロモノでしかない私のことを煙たがるどころか、むしろ、冒頭の挨拶でロゼッタが一発かましてくれたことで、割に友好的に受け入れてくれた。


「彼女、ブルワイヤー伯爵夫人の境遇を過度に憐れんだり蔑んだりすることは失礼なので、おやめくださいね。確かに彼女が元居たところは、私たち貴族の世界とは異なりますが、どんな境遇であれ、自負心をもって与えられた責務に取り組むことは尊いことだと思いますの」


 綺麗事だし、彼女が私と同じことを出来るとも思わないし、またする必要も無い。


 だって。


「彼女は、私を救ってくれた恩人であり、何でも話して相談できる親友ですの。出来れば、皆様にも仲良くしていただけると嬉しいわ」


 彼女は、私を友人だと言ってくれたから。


 その茶会は、口コミで評判が広まった。招待状が出ることも無く、参加者に次回の開催日が告げられるだけの、秘密の茶会。話題が話題なだけに、噂好きの社交においては稀に見るほどガードが堅いのも特徴である。

 その話題はずばり、「夫婦の営み」


 そう、私が経験豊富な、ある意味得意分野である。


 火遊びに興じる令嬢や夫人はいれども、冷静に職業意識をもって取り組んだ経験の豊富な夫人など、当たり前ながら貞淑さが美徳の貴族に私以外いるわけもなく。王妃まで参加するようになったときには、大丈夫かこの国、と思ったものだ。

 結局、筆頭貴族と呼ばれる一握りの家の夫人は、王妃含めて全員参加するようになってしまった。それどころか、隣国の貴族夫人までやってきたときには肝を冷やした。流石に、私の知識が原因で国同士の評いとか、勘弁してほしいのである。


「ここで生々しい話ばっかりしてるから、最近は他のお茶会が物足りなくって」


 その少し憂いを含んだ美しい顔で、言うことじゃないです王妃様。


「ああ、分かる気はいたしますわ」


 侯爵夫人も同調しなくていいから。


「ここに来る日は、朝から旦那様がそわそわしてるのが可愛くって」

「まあ、あの堅物の侯爵が」

「そうなんですのよ王妃様」

「まあ、陛下も似たようなものですけど」

「そうなんですねえ」


 いやそこ納得しないで。


「で、今日は何を教えてくださるのかしら、先生」


 ひいいい、何でこんなに熱心なんですかこの人たち。


「貴族は政略結婚が多いでしょう?夫婦の営みも苦痛に感じる夫人が割と多いのよ」

「どうせ義務なら、苦痛でない方が良いですものね」

「ええ、ええ、そのとおりですわ」


 大半の夫人や令嬢が頷く。

 仕事とはいえ、好きでもない男に抱かれるなんて、と心のどこかでずっと思ってきたが、貴族でも、いや、貴族だからこそ、そうなのかもしれない。しかも命懸けで跡取りを産むまでが責務なのだから、ある意味娼婦よりも自由が無い。だからこそ、高級娼婦にも似た職人意識に違和感を感じないのだろうか。

 まあ、何事にも例外はあるが。あ、でもロゼッタも政略は政略だったか。雰囲気ゲロ甘なのでついつい忘れそうになるが。


 自己中男や淡白男を誘導する方法や、女の苦痛を和らげる方法など、旦那から仕入れたネタも交えながら、時には身振り手振りを入れつつ話をしていく。マンネリ夫婦には刺激的なネタも提供する。婚約中の令嬢や新婚の夫人などは羞恥からか顔を真っ赤にしてしまう人もいたが、大半の大人は目を輝かせて話を聞いていた。

 その中でも、いたくお気に召したというのが王妃様だというから恐れ入る。そんな王妃様は、茶会に参加しはじめて半年後めでたく懐妊、陛下待望の王女様を産んだ。前後して、我も続けとばかりに、高位貴族の夫人たちも軒並み妊娠、出産となり、貴族界隈はちよっとしたベビーブームになっていた。

 そして、それはとある伯爵家にも。


「まさかワシが娘の父親になる日が来るとは」

「私もですよ、エドガー」


 まさか子が、しかも売らなくてもいい子ができるなんて。


「流石に、自分の娘は花街に行ってほしくないかな」

「まあ、普通はそうでしょうね」


 あんな苦界に、好んで自分の子供を送り込むような下種はちょっと。


「間違えて当たったら困るしな」

「そういう問題じゃないでしょう。それに、もうエドガーは花街に行ってないんですから、その心配は無いですね」

「いやいや、それこそそういう問題じゃないな」

「ふふっ」

「…ありがとうな、産んでくれて」

「いえいえ、貴族の妻の義務ですからね、それに身請けの金額分くらいは働きますよ」

「またそんなことを言う」


 エドガーは、私の頬を撫でた。

流石に具体的な描写は色んな意味でアウトなのは分かっております(キリッ

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