6. 甘味
あまーい!
「このアホウ。クリスティーナは
エルフの王族に連なる者だぞ。
騎士の誓いを立てよとは誰も言っていない。
誰にでも安易に誓いを立てるな」
チェザリーノは、頭を抱える素振りすると、
天を仰いだ。
そんなチェザリーノへ陽翔は反論を
しようと試みた。
「しかし、これは英雄たる、痛って」
「もうそれ以上、何も言うな。
フィン、クリスティーンで組みなさい」
それから剣術の教練が始まった。
何度も説明を受けて実践してみるが、
どうもしっくりこない陽翔だった。
どうしてもブラッドに指導された型を
自然と身体がなぞっていた。
「あなたはどうしよもなく頑固ですね。
英雄ブラッドを開祖とする400年の歴史が
作り上げたブラッド流にどうしてそこまで
否定的なのでしょうか?
有象無象の流派では排出されない数多の剣聖、
剣豪を輩出しているのですけど」
「身体が覚えてしまっているから、
中々、その癖が抜けないんだよ。
それよりクリスティーナ、先ほどのお詫びに
甘いものでも奢らせて欲しい。
次の休日なんてどうかな?」
稽古の手が止まって、クリスティーナは
一生懸命嫌そうな表情を作ろうとしているが、
上手くできずにいた。
「まっまあ、恥をかかせてたんだから、当たり前よね。
それにしてもその型で打ち込んでるのに
ムカつく位に動作がスムーズよね」
チェザリーノの叱責が響くと2人は、
慌てて黙り、打ち込み稽古を再開した。
休日、陽翔はクリスティーナと街中の甘味屋にいた。
学院の制服ない私服のクリスティーナは、
清楚なワンピースに身を包んでいた。
無論、店内の視線を集めていたが、
本人は気にした様子もなく、
店内をきょろきょろ見回すクリスティーナだった。
その仕草が可愛らしく、陽翔に笑みが零れた。
「クリスティーナはこういったお店は
初めてなのかな?」
「ええ初めてよ。
この学院に入学するまで見たこともなかったわ。
それとクリスでいいわよ。
クリスティーナだと長すぎるでしょ」
「僕のこともフィンでいいよ」
果物に蜂蜜で彩られたパイと茶が
運ばれてくるとクリスは目を輝かせた。
食べることに夢中なクリスによって
二人の会話は中断された。
「うん、おいしい。
噂には聞いていたけど、随分と贅沢な食べ物ね」
噂というより聞き耳を立てていたのでは
と思う陽翔だが、それを言葉にする程の馬鹿ではなかった。
「喜んで貰って良かった」
「なーんか偶に上から目線というより
歳上ぽいのよね、フィンは!
まあいいわ、この食べ物に免じて許してあげる」
クリスは椅子に座り直した。
そして表情を引き締めた。
「それでここに呼び出した理由は何?
聞きたいことがあるんでしょ」
「ソフィアのことを改めて聞きたいのと
ちょっと試してみて欲しい事があるんだけど、頼める?」
一瞬、形の良い眉を顰めるが、陽翔の表情を見て、
クリスは頷いた。
甘味は、口を軽くさせるかも、、、