私、変わりましたか?
体育祭が近づくにつれ、イナを取り巻く環境に変化が起き始めた。
フウ以外のクラスメイトの女子たちがイナに話しかけてくるようになったのである。
持ち前の頭の回転を活かして体育祭における競技の作戦担当という役を任され、女子の主力であるフウの手綱を握るブレイン役としても見られるようになった。
「ねえねえイナさん。さっきの授業の内容でわからないところがあったんだけど」
「イナさん。昨日やってたテレビ見た?」
クラスメイトたちは体育祭に関すること以外でもイナに声をかけるようになった。
フウを介してイナの人となりが明るみになり、それがきっかけとなってイナ自身に興味を向かせたのである。
フウ以外とのコミュニケーションの機会が増えたイナははじめこそ困惑したものの、次第に満更でもなくなってきていた。
しかし話の内容によって得手不得手はある。
勉強の話ならスムーズにできるがそれ以外の話はフウがいないとからっきしであった。
そんなある日の昼休み、イナは食堂でいつものようにフウと二人で昼食をとっているととある話し声が耳に入ってきた。
声の主は他のクラスメイトであった。
「なんかさ、最近イナさん変わったよね」
「やっぱそう思う?なんていうか前より話しかけやすくなったっていうかさー」
「それなー」
クラスメイトたちはイナのことを話題に出しているようであった。
どうやら以前よりも印象が良くなったようである。
「私ってそんなに話しかけにくかったんですか?」
「どうだろうねー。ウチは転校してすぐに話しかけたからそんなこと一度も思ったことないけど」
「そうでしたね」
イナが目の前のフウに尋ねるとフウはすっとぼけたように答えた。
そもそもフウは転校初日にイナに話しかけたため彼女の人となりもすぐに理解おり、そんな印象は微塵も抱いていなかった。
「でも一学期の頃はちょくちょくそういう話が出てきたことあったよ。話しかけにくいというよりは『何を話せばいいかわからない』って感じだったけど」
フウは他のクラスメイトたちのイナに対する過去のイメージを伝えた。
以前のイナは『静かに平穏に』をモットーとしていたため口数が少なく、プライベートな話題がまず出てこなかったせいでクラスメイトたちは話の糸口を掴めなかった。
それが今回体育祭というイベントとフウという仲介役を得たことで声をかけやすくなったのである。
「イナっちの良さをみんなに知ってもらえてウチは嬉しい」
フウは鼻高々であった。
イナもかつてなら自分が目立つようなことは忌避していたところだったが今はその限りではない。
「私、変わりましたか?」
「めっちゃ変わったよー。一人でもバッチリメイク決めてくるようになったし、ウチと姫ちゃん以外の子と話すようになったし、あと自分から何かに関わろうとするようになったし」
フウは自分が感じたイナの変化を彼女に直々に伝えた。
彼女の変化は端的にいえば積極的になったというものである。
「これでウチがいない時でも安心だよー」
「いなくなることあるんですか?」
「そんなことあるわけないじゃん。冗談だってー」
二人は冗談めかしたやり取りを交わす。
こうして他愛もない話をしながら昼休みは過ぎていくのであった。




