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白虎ちゃんのお気に入り  作者: 火蛍
波乱の学園祭
80/83

キャラクターを掴みました

 ついに劇場版まで辿り着いたイナとフウはあらすじを確認すると再生ボタンを押した。

 イナはフウの前にちょこんと座り、フウはイナの腹部をそっと抱きかかえる。


 「うわめっちゃ映像綺麗じゃん。これ本当に十年以上前の映画なの?」


 フウはいきなり作画の綺麗さに驚かされていた。

 十年以上前の映画ではあるがその映像は現在のアニメにも見劣りしない美麗なものであった。


 冒頭からわずか数分で戦闘シーンが始まった。

 ノワルディーヌが送り出した巨大な魔獣とウィッチスノウが映画らしい派手な立ち回りで画面狭しと動き回る。


 「うおー!めっちゃ動くじゃん!さすが映画!」

 (よく反応するなぁ)


 イナは映像に逐一リアクションを起こすフウが気になってならなかった。

 

 「あ、今回の敵キャラ出てきた」

 「イビルブランでしたっけ」


 劇中ではイビルブランが登場し、ウィッチスノウと魔獣との戦闘が中断された。

 イビルブランは現れるなりいきなり魔獣に目をつけると何かを埋め込んで魔獣を奪ってしまった。

 魔獣は姿形がより厳つく凶暴なビジュアルへと変貌し、眼前にいたウィッチスノウへと襲いかかった。

 ウィッチスノウは必殺技のスノウバーストを放つが改造された魔獣にはまったく通用していない。


 「えーっ!?今までちゃんと効いてきたのに!?」

 「映画の敵は只者じゃないってことですね」


 フウは無邪気なリアクションを見せ、イナが冷静なコメントを残す。


 『アハッ!そんな攻撃効くわけないじゃん。アタシが改造した魔獣にさ!』


 イビルブランはウィッチスノウを嘲笑うがその一言にノワルディーヌが目を迸らせた。

 

 「魔獣は家族だから……」


 イナはノワルディーヌの心情を察知した。

 ノワルディーヌにとって魔獣は愛情を向ける存在であり、家族も同然である。

 イビルブランのしたことはその家族を強奪した挙句に改造するというまさに彼女に対する冒涜であった。


 強化改造された魔獣に吹っ飛ばされ、大ピンチに陥ったウィッチスノウ。

 その場から動くことができず、あわや最後の一撃が繰り出されようかというその時であった。

 真っ赤な炎が繰り出され、魔獣の攻撃を阻んだ。

 炎の主はなんとノワルディーヌであった。

 今まで直接戦うことのなかった彼女が映画で初めて戦う姿を見せたのである。


 「うわカッコよ……」


 フウは作中のノワルディーヌに思わず見惚れた。

 ノワルディーヌの右手には自ら繰り出した炎の残滓があったが彼女が拳に力を込めるとそれは空に消えた。

 

 『貴様……よくも私の魔獣を……』


 ノワルディーヌは鬼気迫る表情でイビルブランを睨みつけた。

 彼女の眉間には無数の皺が寄っており、愛する魔獣を奪われた上に道具扱いされたことに対する怒りと憎悪に満ち満ちている。

 髪も下半分が赤いオーラを纏いながら浮き上がって逆立っており、その迫力ある演出にイナとフウも思わず息を呑んだ。


 『なんか冷めちゃったわー。また遊びにくるねー、バイバーイ』


 戦闘シーンはイビルブランが魔獣と共に一時撤収する形で中断となり、そこからドラマパートが始まった。

 学校でいつものように交流するユキとアカネ、イビルブランの行方を追うノワルディーヌ、二人の動向が丹念に描写されている。


 そんな中、ユキは再度イビルブランの改造した魔獣と戦うことに気後れを起こしていた。

 パワーもスピードもすべてがこれまでとは違う。

 ノワルディーヌが手を貸してくれたおかげでなんとか窮地を脱することができたがまた一人で戦うことになったら……

 そう考えると自然に身体がすくんでしまっていたのである。


 「ウィッチスノウが怖がってる……?」

 「序盤以来ですね」


 そんな状態のユキの元へノワルディーヌがやってきた。

 彼女はウィッチスノウの正体を知りつつもこれまで不干渉でいたものの、事態が事態であるが故に初めて接触をかけてきたのである。


 『頼む。私と共にイビルブランと戦ってくれ』


 ノワルディーヌは膝を折り、頭を垂れてユキに懇願した。

 元々悪役であるノワルディーヌが単なる悪人ではないこと、プライドを捨ててさえも主人公に協力を求める姿はインパクト抜群であった。

 戦うことに恐れを感じたとはいえ元はお人好しのユキはそれを承諾した。


 (なるほど。このキャラクターがこの映画で人気になったというのも納得ですね)


 イナは一人でノワルディーヌについて分析していた。

 本編の前半ではあまり目立たなかった彼女が中盤から映画にかけて一気にその存在感を増してくる。

 愛する魔獣のために文字通り全てを捧げ、普段対立しているウィッチスノウにすら助力を求めるその姿は単なる悪役に収まらない魅力に溢れていた。


 そして場面は転換し、ウィッチスノウとノワルディーヌ、イビルブランと改造魔獣との決戦が幕を開けた。

 

 『アイツは私がやる!』


 ノワルディーヌは普段と全く違う口ぶりで啖呵を切ると単身イビルブランへと挑みかかっていった。

 彼女が操る炎の魔法はイビルブランを容赦なく攻め立て、周囲のオブジェクトを豪快に燃やし吹き飛ばしていく。

 ウィッチスノウにはまずできないド派手な演出にイナたちは視覚的に圧倒された。


 「つっよ……」

 「本気になったらこんなことできるんですかこのキャラ……」


 イナとフウの目はすっかり画面に釘付けになっていた。

 目まぐるしく変わる展開に目が離せない。

 

 『貴様の目的はなんだ?なぜこんなことをする』

 『楽しいから壊すんだよ。他に理由なんているの?』

 『ならばここで貴様を倒す!』


 ノワルディーヌとイビルブランは戦いながら問答を交わし、より一層戦闘が激化していく。

 イビルブランは同情の余地がない清々しいまでの悪党であり、裏に色々と抱えているノワルディーヌと見事なまでに対比となっている。


 氷の魔法を操るウィッチスノウと炎の魔法を操るノワルディーヌ、二人の共闘は熾烈を極めた。

 戦いの果て、ノワルディーヌはあろうことかイビルブランを単独で撃破してしまい、挙句にはウィッチスノウの救援に駆け付けるまでやってのけた。

 これを見たフウは大興奮である。


 「うおー!カッコいいー!」

 (確かにこれは人気出ますね)


 『私の魔獣を頼む。ウィッチスノウ』


 ノワルディーヌは魔獣への引導をウィッチスノウに託すと自らの持つ炎の力を与えた。

 その気になれば自分でどうにかすることもできるのであろうが相手は自分が手をかけて育てていた魔獣、家族を自ら手にかけるような真似はできなかったのである。

 

 ノワルディーヌからとどめを託されたウィッチスノウの杖の先に真っ赤な炎が灯った。

 俗にいう映画限定の必殺技である。

 ラストバトルは映画ならではのド派手な必殺技で締めくくられ、エピローグへと移った。

 

 『協力、感謝する』

 『ノワルディーヌ!』

 『勘違いするな。今回は利害が一致しただけに過ぎん』


 ノワルディーヌはウィッチスノウに背を向けたままそう言い捨てるとそのままどこかへと消えてしまった。

 今回限りの協力関係が終わり、本編に戻っていくような描写で映画は締めくくられた。


 「すごかったなー!流石は映画ってカンジー」 

 「ええ。私もノワルディーヌというキャラクターのことがわかってきました」


 スタッフロールまで見終えたイナとフウは満足げに背筋を伸ばした。

 イナはこれまで不透明だったノワルディーヌというキャラクターのことが深堀できたことでより満足感を得ることができた。


 「ではまた明日」

 「うん。じゃあねー!」


 鑑賞会を終え、イナは家へと帰っていった。

 自室に戻り、スマホを置いてパフォーマンスのための台詞回しを考える。

 彼女の中でようやく体育祭への意気込みに火が付いたのであった。

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