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白虎ちゃんのお気に入り  作者: 火蛍
波乱の学園祭
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たまには甘えてみたくなります

 三人でマジカルウィッチ・スノウを鑑賞した翌日。

 イナは朝からフウの家に上がり込んでいた。

 目的はアニメ鑑賞の続き、今回エリカは用事により不在である。


 「姫ちゃんから二十四話まで観てから映画を見てほしいって聞いているのでそれ通りに行きましょう」

 「オッケー。じゃあ前回の続きからねー」


 イナとフウは隣り合ってクッションの上に座り、続きを見始めた。

 昨日見たのは第十三話まで、主人公がマジカルウィッチの力を受け入れて戦う決意を固めるまでの過程にいったんの区切りがついたところである。


 「子供向けだと思ってたけどさ、こうやって見返してみると結構面白いね」


 フウは純粋な目でアニメを視聴している。

 きっと当時もこんな風に視聴していたのだろうと想像するとイナはそれを微笑ましく感じられた。


 「ところでどうして二十四話までなの?」

 「ノワルディーヌが目立ち始めるのがそこら辺かららしいです。昨夜姫ちゃんに教えてもらいました」

 「そう言われてみれば確かにあんまり目立ってないね」


 画面を見ながらフウは首を傾げていた。

 確かにノワルディーヌは毎回登場して台詞こそあるものの、映るシーンそのものは短く印象的な場面も今のところない。

 だがイナはそんなノワルディーヌが映っているシーンを目を凝らして観察していた。


 (確かに魔獣を出すときにちょっとためらってるような動きがありますね)


 エリカが語っていた通り、一瞬の細かい仕草の中にノワルディーヌが魔獣に対して愛情を注いでいるのが感じられた。

 しかし言われて注意してみなければわからないような描写であった。


 「どうしたのさイナっちー」


 鑑賞会の途中、フウはイナに声をかけた。

 イナが特に何を言うでもなくもたれかかってきたのである。


 「二人っきりですし、たまには私からこうしてみようかと」


 イナは普段はフウからスキンシップを仕掛けてくることがほとんどのため、たまには自分から仕掛けてみたくなったのである。

 他に見られることのない今が絶好の機会であった。

 イナは気まぐれでフウの正面にちょこんと座り、足を前に伸ばすとそのまま彼女の胸辺りに頭を置いた。


 「もー、しょうがないなー」

 「嫌でしたか?」

 「そんなことあるわけないじゃん」


 フウはイナの気まぐれを受け入れると彼女の腹の下に手を回して抱き抱えた。

 二人は密着姿勢になるがどちらも満更ではない。


 「イナっちの匂いがするー」

 「言わなくてもいいですよそんなこと」


 フウはイナの頭頂部と髪の匂いを堪能していた。

 姿勢の関係でイナの頭がフウの顎の下付近にあるため、彼女の匂いは否が応でも感じられた。


 「あの、鼻息がくすぐったいのですが」

 「イナっち成分補給中ー」

 「なんですかそれ……」


 フウはテレビの画面を見ながらイナの耳の後ろに鼻を埋めていた。

 深呼吸のようにゆっくり吐き出されるフウの鼻息がイナの耳元をくすぐりこそばゆい感覚を与える。

 どちらからスキンシップを始めても結局やることは同じであった。


 互いに肌身を寄せ合いながら二人は画面に目を向けていた。

 しかしフウはイナの感触のことで頭がいっぱいで肝心のアニメの内容がまるで頭に入ってこない。


 気づけば時刻は昼に差し掛かりかけていた。

 ちょうど本編も十八話ぐらいまで視聴が完了し、小休止にちょうど良い頃合いであった。


 「どう?ノワルディーヌっぽいパフォーマンスできそう?」

 「どうでしょう。それっぽい仕草はわかってきたのですが」


 フウに尋ねられたイナは首を傾げた。

 話しが進むにつれてノワルディーヌの動きなどに一定のらしさを見出せはしているがそのどれもが全体的に地味であり、コスチュームがなければそれがノワルディーヌだとはわからない。


 「ずっと見てて思ったんだけどさ。ノワルディーヌが出てくるシーンだけなんか雰囲気暗くない?」

 「確かにそうかもしれませんね」


 ノワルディーヌが登場するシーンは画面の演出や雰囲気が全体的に暗くなっている。

 彼女が抱える背景を知っているイナはその理由に納得できたがそれを知らないフウは疑問に思っていた。


 そんなこんなで感想会を経て二人は再び本編を鑑賞し、目的の二十四話まで辿り着いた。


 「えっ、嘘でしょ。ノワルディーヌ……」


 フウは画面を見ながら衝撃を受けていた。

 二十四話はノワルディーヌが魔獣に心から愛情を注いでいること、故郷において犯罪者であること、それ故の苦悩などの設定が明かされる回であった。

 イナは予めエリカから教えられていたため衝撃はあまりなかったが画面に映るノワルディーヌの悲痛な姿はなかなか堪えるものがあった。


 「ここから映画観るの?」

 「姫ちゃんはそれがオススメだと言っていましたが」


 二十四話の余韻を引きずったままフウとイナは劇場版のあらすじを確認した。


 『世界を守る魔法少女ウィッチスノウと星を狙う魔女ノワルディーヌ。二人の戦いの最中、突如として謎の敵イビルブランが現れる。イビルブランが操る改造された魔獣に大苦戦するウィッチスノウ。しかしそこにノワルディーヌが力を貸して……』


 映画のあらすじを確認した二人は思わず息を呑んだ。

 どうやら映画の敵キャラはノワルディーヌではないらしく、しかもノワルディーヌは一時的に味方になるようであった。


 「なんかすごそうな話だなー」

 「一度見てみましょう」


 フウとイナは覚悟を決め、リモコンで再生ボタンを押すのであった。

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