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白虎ちゃんのお気に入り  作者: 火蛍
波乱の学園祭
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相談の雲行きが怪しいのですが

 二学期の始業式の放課後、イナとフウはエリカに連絡を取った。

 体育祭の仮装リレーの件で相談を持ちかけるためである。


 『今日はクラスメイトと一緒にお昼食べてくるので合流は遅くなります』


 連絡から数分後、イナ宛にエリカからメッセージが帰ってきた。

 どうやら今日の彼女はクラスメイトたちとの交流を優先するらしく、二人との合流は少し遅れるとのことであった。

 向こうの事情を蔑ろにもできないため、イナとフウはファミレスに立ち寄って昼食を取りつつ時間を潰すことにした。


 「アステリアの体育祭って面白い競技もあるんだねー」

 「本気で競うというよりは生徒が一体になって楽しむことを主体に置いてますからね」


 イナはアステリアの体育祭についてフウに語る。

 もとより学園長の意向によってアステリアの体育祭は競技性を差し置いてエンターテインメント性に重点を置いていることもあり、本気で記録を狙う生徒とそうでない生徒とである程度のすみ分けがなされている。

 そこにはイナのような運動が得意でない生徒にも学校行事を楽しんでもらうためという意図があった。

 

 「さっきも他の子からチラッと聞いたんだけどさ。先生たちがやる競技もあるんでしょ?」

 「ありますよ。去年は学年対抗の借り物競争でした」


 イナは去年の体育祭の催しの様子を思い出した。

 生徒たちが競い合う種目とは別に教職員が参加するエキシビジョン競技も存在し、去年のそれは担任を持つ教師たちが学年別で対抗する借り物競争であった。


 「へー面白そうじゃん」

 「生徒から何かを借りたり、先生同士で何かを貸し借りしたり、お題は先生たちも知らないみたいですよ」


 イナは噂に聞いた情報をそのままフウに垂れこんだ。

 真偽は定かではないが借り物競争のお題の内容は当日の先生たちにも知らされておらずぶっつけ本番とのことであり、そのためあたふたする先生たちの反応を見て生徒たちが面白がったりして盛り上がるのだという。


 「仮装リレーって何の仮装してもいいの?」

 「ええ、ルールはありますけどそれに乗っ取れば何の恰好をしても大丈夫です」


 仮装リレーの仮装にはいくつかのルールがある。

 まず一つはしっかり視界を確保できる衣装であること、そしてもう一つは装飾が他の参加者を阻害しないこと。

 小道具は妨害用でなければ概ね認められているため、それさえ遵守していれば基本的に何の仮装をしても問題はない。


 「そういえば姫ちゃんに今回の要件って伝えた?」

 「あ、忘れてました」


 イナはエリカに今回の要件を伝えていなかったことを思い出すとその旨をエリカにメッセージを飛ばして伝えた。


 『仮装リレーに出ることになったので衣装について相談したいのですが』

 『最速でそっち行きます』

 

 エリカに要件を伝えると彼女からわずか数秒で返信が来た。

 その反応は表向きのエリカではなく、彼女が持つオタクとしての一面が露骨なまでに出ていた。

 彼女は仮装をコスプレと認識しており、イナがそれをするとなってオタクの血が騒ぎだしたのである。


 「うわ怖っ」

 

 エリカからのあまりの返信の早さにフウも思わずドン引きであった。

 それから数分、イナたちが料理に手を付けているところで再びエリカからメッセージが飛んできた。


 『さっき解散してきました。どこに向かえばいいですか?』


 メッセージの内容は食事会を終えて解散した旨を伝えるものであった。

 友人との付き合いを優先していたはずがイナのことを天秤にかけられるとあっさりと優先順位が入れ替わり、それを押し通してしまうエリカの姿にイナは典型的なライオン族の面影を見た。


 「普段私が見てないところで姫ちゃんがどう立ち回ってるのか心配になりますね」

 「まあ大丈夫なんじゃない?」


 イナはエリカの学校での立ち位置を不安視するがフウは能天気に流した。

 少なくともエリカは今もアステリアの中では清楚な姫ちゃんとして通っており、イナが絡んだ時の暴走気味なテンションを揶揄する声は耳にしない。

 もし清楚な人物として通っている彼女そんな姿を見せようものなら即刻噂になっているはずであり、それがないということはきっと問題なくやっているのだろうとイナは解釈した。

 

 「姫ちゃん来てくれるって言ってますけどどこに集合しますか?」

 「姫ちゃんの家がいいと思うな。多分姫ちゃんの声デカくなるだろうし」

 (貴方がそれを言いますか)


 フウは集合場所にエリカの家を提案した。

 自分が何の仮装をするかはイナにとってはできるだけ内密にしたい話であるため、声が漏れにくい場所としては真っ当な選択である。

 だが普段から声が大きいフウがそれを言ったことにはイナも内心突っ込まずにはいられない。


 「じゃあ駅前で集合してそこから姫ちゃんの家に行きましょう」


 イナは集合場所を学校の最寄り駅に決めると、そのことをエリカに伝えて先に待ってもらうことにした。

 エリカもそれを承諾し、彼女の家で仮装のことを相談することになった。

 この後の行き先が決まったイナとフウと二人でファミレス代を支払い、店を出ると急いでエリカが待つ駅へと向かった。


 (なんだかすでに怪しい予感がするのですが……)


 イナは今回の要件とそれに対するメッセージ上でのエリカのテンションから雲行きの怪しさを感じるのであった。

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