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白虎ちゃんのお気に入り  作者: 火蛍
私とあの子の夏休み
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じっくりスキンシップをしましょう

 温泉の浴場に入ってから数十分、イナはフウの毛繕いを終えるとブラシを手元に置いて満足げに一息ついた。

 イナは自分と性質の違うトラ族の毛に触れて筆舌に尽くしがたいやり甲斐を感じている一方、フウはこれまで我慢していたこそばゆさを発散させるように全身を振るわせた。


 「終わりましたよ」

 「ありがとー!じゃあ今度は姫ちゃん呼んでくるね!」


 フウはイナにお礼を告げると順番を待っているエリカに声をかけに行った。

 元々大きい彼女の声が浴場内によく反響し、嫌でも聞こえるであろうそれを耳にすれば赴くまでもなくわかるというものであった。

 そんなフウの後ろ姿をイナはクスクスと笑いながら見守った。

 それからほどなくして、フウと入れ替わるようにエリカがやって来た。

 

 「ここに座ってください」

 「お手柔らかにお願いします」


 イナに着席を促されたエリカはペコリとお辞儀をするとまとめていた髪を解いて鏡と向かい合うようにバスチェアに腰を下ろした。


 (これ、専門店じゃないと買えない高いやつだ……)


 イナはエリカの使用しているトリートメントのラベルを見て戦慄した。

 それはイナたちが足を運ぶようなスーパーの中にある化粧品店ではなく、専門店でなければ購入できないような代物であった。

 そんなトリートメントは特別感を出すようにイナの手のひらにしっとり馴染みつつもスースーと冷えるような感覚を与える。

 

 「姫ちゃんの髪は柔らかいですね」

 「そうなんですよ。ボクはライオン族じゃ変わり者らしいです」


 イナがエリカの髪にそっと触れるとエリカは鏡越しにイナの目を見て答えた。

 通常ライオン族といえば硬い癖毛が多い。

 しかしエリカは例外であり、毛量が多い上に柔らかく形が付きやすいタイプの癖毛であった。

 エリカの指で触れるとその力を吸収するように絡みついてくる。

 

 エリカの毛量は多く、指先に絡みついてくるような髪の癖も相まってイナに手ごたえを感じさせた。

 エリカも日頃と大して変わらないやり方をしているからか、特にくすぐったがったりすることもなくじっと待っている。

 

 「緊張してますか?」

 「先輩に触ってもらうの初めてなので……」

 「そんな大袈裟ですよ。もっと肩の力抜いてください」


 イナはエリカが緊張で肩をすくめていることに気づくとリラックスを促した。

 エリカは緊張を解すように大きく息を吸い込むとそれをゆっくりと吐き出しながら肩を落とした。


 「どうですか?満足してもらえてますか?」

 「ひゃ、ひゃいっ!?」


 イナは背後からエリカの両肩に手を置くと横から顔を覗かせて尋ねた。

 唐突なイナの密着仕草にエリカは動揺して声を裏返らせる。


 (先輩の胸がボクの肌に……!)


 エリカは自分の背中にイナの胸が押しつけられていることに気づいてさらに動揺した。

 

 「湯当たりでもしましたか?顔が赤いですよ」

 「へ!?なんでもありませんよ!」

 「そうですか」


 イナはエリカの顔が赤い理由がわからず首を傾げながら毛繕いを続けた。

 彼女はイタズラなどは考えておらず、至って真面目に毛繕いをしているだけであるため、エリカがそこまで緊張する理由に心当たりが全くなかった。


 十数分程度の毛繕いを終え、エリカの髪に馴染ませたトリートメントを流したところでイナはようやく温泉へとありついた。

 自分とフウ、そしてエリカの三人の毛繕いを立て続けに行なっており、気づけば浴場に来てから数十分以上湯に入れていない。


 イナは肩から掛け湯をするとそのままゆっくりと足から湯に浸かり、そのまま肩まで沈み込んだ。


 「はぁ~……」


 イナは湯に浸かりながらゆっくりとため息をついた。

 息を吐くと肉体的な疲労が湯の中に溶けて消えていくように感じられた。

 イナが温泉を堪能しながらぼんやりしていると、誰かが背後から胸を触ってきた。

 そんなことをする人物は一人しかいない。


 「何してるんですかフウさん」

 「さっきくすぐられたからそのお返しー」


 イナは呆れたように尋ねるとフウはニヤニヤしながら指をワキワキと動かしてイナの胸を揉む。

 フウの手の中に収まりきらないほどに大きな双丘がフウの指を押し返すように反発する。


 そんな二人のじゃれあう姿をエリカは鼻息を荒くしながら眺めていた。

 そして何を思ったのかイナの正面まで寄ってきた。


 「ボクも、先輩の胸触ってみたい……です」

 「……はい?」


 エリカの発言にイナは耳を疑った。

 というのも、エリカがそんな肉欲溢れる発言をするとは想像だにしていなかったからである。


 「姫ちゃんも揉んでみなよー。すごいんだから」


 イナが返事をするよりも先になぜかフウが返事をしてタッチを促してきた。

 エリカは恐る恐る手を飛ばし、下から持ち上げるようにイナの胸に触れた。


 「すごい。ちゃんと本物だ……」

 

 エリカはイナの胸の感触を堪能して言葉を失っていた。

 イナの胸にはしっかりと重さと肉の感触があり、作り物などではない本物であることを言葉もなく主張している。

 ほぼ真っ平で起伏に乏しいエリカに確たる差を見せつけていた。


 「いつからこんなに大きくなったんですか?」

 「膨らみ始めたのは中学二年の頃からで…‥高校入学前にはもう」

 「こんなになってたんですか」

 「そうですよ。重くて肩が凝ります」


 イナの胸が成長を始めたのは彼女が中学二年の頃からであった。

 その頃から背丈がほとんど伸びなくなり、代わりと言わんばかりに胸が大きくなり始めた。

 数年でぐんぐんと成長し、高校に入る頃にはすでに今と遜色ないほどになっていた。


 「大したもんだよ背はちっちゃいのにおっぱいはウチより大きいんだから」

 「私としては背も伸びて欲しかったのですが」


 イナは自分の身体的特徴に関するコンプレックスをぶちまけた。

 今ではある程度の諦めはついているものの、身長に反比例するように大きな胸に関してはいまだに彼女の悩みの種であった。


 それからしばらく経ってもフウが背後から、エリカが正面からしばらくイナの胸を揉み続けた。

 初めはじゃれ合いぐらいの感覚だったであろう二人は無言になっており、なにやら異様な雰囲気が漂っている。

 初めは渋々付き合っていたイナだったがそろそろ終わって欲しかった。


 「あの、いつまでそうしてるんですか」

 「なんかムラムラしてきた」

 「僕も同感です」


 イナが終わり時を確認するとフウとエリカは仲良くに駆られていた。

 二人の目は獲物を狙う猛獣の空になっている。


 結局、この戯れは三人が湯当たりを起こすまで続いたのであった。

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